先日読んだ染井為人さんの「悪い夏」がなんとも後味の悪い小説だった(面白かったですけどね)んですが、こういう時に読みたくなるのは瀬尾まいこさんの作品です。

 

「永原智です。はじめまして」そこそこ売れている50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた。

 

孤独に慣れ切った世間知らずな加賀野と、人付き合いも要領もよい智。 血の繋がりしか接点のない二人の同居生活が始まる――。 明日への希望に満ちたハートフルストーリー。 (BOOKデータベースより)

 

本屋大賞を受賞した「そして、バトンは渡された」は、かなり特殊な家族を描いた作品でした。 本作はその次に執筆された小説ですが、こちらもまた奇妙な親子関係が描かれていました。

 

引きこもり作家・加賀野は、若い頃の過ちによって生まれた息子に、20年間に渡って毎月養育費を送り、毎月写真が送られて来ていました。

 

そんな息子・智との初めての対面、そして共同生活。 どう向き合ったらいいか困惑する加賀野でしたが、マイペースな智に引っ張られるようにして、美味しい食べ物を知り、近所の人たちと交流が出来ていくのです。

 

そうするうちに、自分の殻に閉じこもっていた加賀野の何かが変わり、これまで無関心だった智やその母親の美月、そして自分の両親のことが気になりだしてきて・・・というストーリーです。

 

読み終えると何とも言えない温かさに包まれました。 とくに、隠されていた真実が次々と明らかになるラスト、決して感動を煽るような書き方はしていないのですが、じんわりと心を癒してくれます。

 

これが瀬尾まいこ作品の良さなのでしょう。 お勧めです!

 

蛇足:すでに「お気に入り作家のベスト3」で、瀬尾さんの私的ベスト3は選んでいるのですが、ベスト3に割り込んで来るような作品でした。