染井為人さんの作品は初読みになります。

 

染井さんは1983年千葉県生まれで、芸能マネージャー、舞台演劇プロデューサーを経て、2017年に本作で作家デビューしました。

 

染井さんの作風は社会派と聞いていたのですが、社会派ミステリと言うより社会派イヤミスと言ったほうが良さそうな、後味の悪ーい作品でした。

 

26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。 同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。 しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。

 

生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。 加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす! 第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。 (文庫裏紹介文)

 

とにかく登場人物にろくな人間がいません。

 

働かず生活保護の不正受給で金を稼いでいる人間、人の弱みに付け込む人間、人生を立て直すことなく流されるままの人間、ヤクザとその協力者などなど。

 

そんな中、主人公のケースワーカー・佐々木守だけは、正義感が強いわけでもなく小市民的性格ながら、真面目に働いているので、どうしても彼に感情移入してしまいます。

 

回りのろくでもない人間とのかかわりによって、佐々木がとんでもない悲劇に見舞われる。 物語の中盤から歯車は悪い方向にどんどん回っていき、救われないことがわかっているのに目が離せないという、やはりこれはイヤミスでした。

 

ヤバイヤバイと思いつつページをめくる手が止まらない。 染井さんの文章も上手いですね。 エピローグで、佐々木のもとに届く絵が唯一の救いでしょうか。

 

社会派ミステリがお好きな方、イヤミスがお好きな方、どちらにもお勧めです。