2022年の「このミス大賞」文庫グランプリ作品です。 このミス大賞は、古くは「さよならドビュッシー」「スマホを落としただけなのに」など、ときおり面白い作品を読ませてくれます。 また文庫オリジナルで刊行されるのもうれしいですね。

 

十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。 しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。

被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行なっていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。 (文庫裏紹介文)

 

冒頭の文がいきなり太字で、「死の激痛にのたうつ体を押さえつけ切り裂く。」という文章から始まっていました。

 

いかにも殺人鬼の犯行を思わせるのですが、これがまるで異なる情景を示していることが後になってわかります。

 

同様に、登場人物はそれぞれに闇をかかえていて、いかにも真犯人かと思わせておいて実は・・・というどんでん返しが終盤になって連続するので、ラストまで目が離せないサスペンスフルな作品でした。

 

ただ主人公も含め、あまりに異常な人物が多すぎて辟易するのと、特に終盤は感情移入する暇もなく展開が変わるので、どんでん返しの驚きも小さかったかな。

 

文章は簡潔で読みやすいので、ミステリ初心者には面白いかもしれません。