漫㉟「頑固医者ほど名医というが…」 | 獏井獏山のブログ

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・シクシクと神経に食い込むような虫歯の痛みを堪えに堪えた挙句、痛みが頂点に達しグラグラと動き出して仕方なく歯医者に行く。多く人が辿るパターンだ。…歯茎に麻酔を打たれ、グラついた歯を抜き、レントゲン撮影を済ませてから神経を抜き、セメントのような仮歯をはめ込んで「1時間は飲食をしないで。…新しい歯は1週間後に出来ます。それまで硬いものを噛まないようにして下さい。」というと、医者は隣の診察台に座った患者の方に足を運ぶ。

・1週間後に行くと、仮歯を外した所へ新しい入歯が嵌め込まれる。「どうですか、痛みはありませんか?」と聞かれ「何処と云って痛みはありませんが左右の歯が圧迫されて凄く違和感を感じます。」というと「それは直に慣れますから心配いりません。少し様子を見て、痛みが出たら来てください。」との答が返ってくる。

・4~5日経っても違和感がなくならないばかりか、入歯の下部分が歯茎を強く圧迫して痛みが出てきたので、歯医者に行ってその旨を伝えた。「ああ、此処は痛みの生じ易い所でね、慣れるまで少しは辛抱しないと仕方ないですよ。…ま、折角来られたので少し削りましょうか。」そう云って入れ歯を一旦外して“シャ~シャ~”と回転ヤスリのような物で削ってから嵌め込む。「どうですか?」「いや、まだ…もう少し削って下さい。」…“シャ~、シャ~”…「これでいいでしょう。」「あ、もう少しお願いできますか。」「ここを余り削ると噛み合わせに影響するので慣れるまである程度は我慢しないと仕方ないよ。」そう云って嵌め込んでも痛みはそれ程変らないので「いやぁ、もう少しだけ削って貰えませんか。」と云っているのに返事がない。上半身を少し起こして振り向くと其処に医者の姿は無かった。

今日は隣の診察台にも患者が居ないのでゆっくり診ても貰えると思ったのに、と仕方なく歯茎に手を当てたところで看護師が「今日はここまでです。また何かあったら来てくださいね。」と云って涎掛けのような布を首から外して本日の診察は終了となる。診察台を下りて見回しても医者の姿は見えない。早々に奥の間へ入ったらしい。

・「ここの歯科医は頑固者だが腕は良い」との噂は聞いていたが、名医とは痛みを訴える患者でも煩わしいと思うと「私の言う通り慣れるまで辛抱しなさい」とばかりに突き放すものなのか、それとも此方に堪え性が無さ過ぎたのか、何れにしても黙って姿を消されたのには参った。