・⑨「ベッタ(面子)」
(遊び方についてインターネットでも何種類か紹介しているが地方に依って少しずつ違いがあるようだ。)
大阪府南部の田舎でも物凄く流行った遊びである。遊び方は幾種類もあった。
A:「返し」これは最もオーソドックスな遊び方で、1対1、又は3人三つ巴になって、ジャンケンに勝った順に地面に置いた相手のベッタの近くに自分のベッタを打ち付け風圧で返すと相手のベッタを貰える。学校から帰って家にカバンを放り出して遊びに出て2~3人顔を合わせて始めるのは決って「返し」である。そのうちに後で来た2~3人もそっちで「返し」を始める事もあるが、それは短時間で止めて5~6人集まって別の遊びを始めるのが普通だ。
B:「飛ばし」これは地面に横線を引き、その線の手前からどれだけ遠くへ飛ばすかを競う遊びである。遠くに飛ばすには一種の技術があって、ベッタの角を人差し指と中指の間に挟み、腕を丸く脇の下まで曲げてからシュッと前に伸ばすとベッタが回転しながら遠くへ飛んで行くのだ。最長距離を飛ばした者が2位以下のベッタを全て貰う。これの繰り返しである。これも5~6回すると誰かが「『抜き』しょうか。」と云えば終りになる。
C:「抜き」何と云っても「ベッタ遊び」の中でこれが一番面白い。ベッタの総数が50枚ぐらいになるように各人が同じ数を出し合う。5人なら書く10枚ずつ、7人なら7枚ずつ、という具合だ。
初めに約50枚をコンクリートの地面に積み重ねるのだが、底に一番小さくて薄いベッタを置く。ジャンケンで順を決めて手持ちのベッタを使って「ベッタの山」を崩して行く。山から離れたベッタは横に除ける。積まれたベッタの枚数が減って最後に、下に敷いた1枚を離せば(抜けば)50枚全部貰える。故に自分が最後の「抜き」のチャンスを得るために今,何枚除ければいいのか、と終盤に入ると皆慎重になる。
…ところが遊びも数日経つと残りの枚数が5枚以上あっても抜く子が出てくるようになり、数日後には10枚以上でも下に敷かれた1枚を抜き去る者がゾクゾク出てくる。そして1カ月後には詰まれた50枚の山の形を微動だにも動かさずに下の1枚だけを抜く者が次々と出てきた。要領は手持ちのやや厚めのベッタを「エイッ!」と力を込めて「ベッタの山」の底に滑り込ませるのだ。すると底に敷いてあった薄いベッタ1枚だけがヒラヒラと宙に舞って落ちるのである。その頃になると誰もが皆、1発で抜くことが出来るようになっているが極偶に底のベッタが山の端に引っ掛かかって離れない事が起きる。勿論やり損なう事もある。1時間も2時間も遣り続けると上手下手の差が出てくる。そこら辺りが勝ち負けとして表れるのだが、負けた子自身は運が悪かっただけだと思うから「抜き」は次の「流行り遊び」が出てくるまで続けられることになる。
……ベッタに劣らず長期間流行るのが「ラムネ(ビー玉)」である。