詩⑳「通天閣から」
ここから見下ろしていると
流れる自動車の群れはまるで駆けっこをしている動物のようです
小鹿の駆けっこ 時々 ピューマやキリン達も交じっています
…そうすると あのマッチ箱のようなビルディングは何だろう…
そう あれは大きな岩の塊です
そして 目の下に広がる世界は サハラ砂漠の一部分の高原です
…おや 動物たちの群れは西へ行くのと 東へ行くのとすれ違って行くよ…
小鹿たちは家に帰るのです 中に大きなのは親たちです
高原に風が吹いています 夕暮時になると風が強くなるのです
時々山火事が起こります だから動物達は安全な住処へ帰って行くのです
背中に積みこんでいるのは鉄や木箱や瓶や人間の屍など 今夜の食事です
彼等の足どりが段々早くなってきたよ…急げ 急げ 急げ
日が暮れると大変です 山火事の火の手が所々であがります
…チカチカしていて綺麗です
詩㉑「火事」
路面電車は足の方で響き立てて走る
心が背伸びして 私は窓の外を見詰めた…
数台の消防車のサイレンで そこらを掻き乱しながら
火事は何かを演じている
赤く焼け出された現場の天は
火事の火だけが作り出したかのように見える…が
遠い空の一角で星がチカッと瞬いた
後日 晴れた静かな夜 私は一人で野中に立って
星の瞬きで浮き彫りにされた遠い大阪の空を見ていた
あの夜も彼方の星を眺めていた私の目に
何の変化もなかったことを覚えている