詩⑥「打撃」
僕の心が 地面の瓦を目で見る
腕の先に力を注ぐ
心臓に集中する血は 同時に 心臓から放出される
それは体外への捌け口を求めている
瞬(まばた)きの一瞬 腕が動く…瓦の上に それは確信の一撃!!
瓦は割れない…骨が砕ける音を立てる
皮膚が裂け 血が勇躍して噴き出す
患部に触ると痛みが心臓に押し寄せる
目が 位置を変えない瓦を見ている 心はそれに調和しない
手は微塵も動かず 痛みのために震えている
詩⑦「初恋」
ふと胸に畏れ抱きて 故知らず泣く夜はさみし
風強き巷に立ちて われ独り雪に打たれつ
君ゆえに芽生えし恋の 君ゆえに敗れし身をば
詩⑧「影」
農夫よ
僕が握る鍬の柄は 敗北者の血で塗りたくられている
影はへたばったままで 地上を這い回る
影は願望だ
世の中の人間から血と汗をかき集めながら
胸を広げ 小肥りし 髪を蓄えた人間の影も
農夫の影も 橋の上の乞食の影も どの影もみんな同じだ
それは地面に陰りを作り出した黒い影だ
黒い影は欲望である
人間が落とす自己の陰りは
いつの時代どこにあっても掻き消すことが出来ない
一事叶えども 太陽の光と共に出来上がる影のように
願望の心は後を絶たない
死人よ 影を持たぬ天の偉人よ
僕達が あなた達から身を避けることから あなた達に身を捧げるまで
どうして 影に付きまとわれる事から逃れる術を教えて呉れないのだ