小嶋純一 (2003).第6編 沿岸域の魚類調査,第1節 魚類の分類・同定と標本処理,1.3 仔稚魚.pp.640-649. in 竹内 均(監修)地球環境調査辞典 第3巻 沿岸域,フジテクノシステム
1.3 仔稚魚
1.仔稚魚同定の意義
沿岸域の開発に係わる環境影響評価やモニタリングの一環として,魚卵・仔稚魚調査が実施されることが多い。その目的は,魚卵・仔稚魚の時・空間的な分布特性から再生産の場や生育場を明らかにし,埋立てや港湾建設,発電所の取放水などの開発行為が地域個体群,生態系へ及ぼす影響を予測・評価することにある。また,魚卵・仔稚魚の分布(豊度)データは,水産資源学的な見地から資源量の推定や,発生量推定に基づく漁況予測などに用いられる。さらに,個体発生学的視点に立って,魚類の系統類縁関係の解明1)2)に用いられることも多い。
そのためには基本的に種レベルでの正確な同定が必要である。
沿岸域で採集される仔稚魚は多様性に富み,また,仔魚から稚魚にいたる発育過程は広義の変態に該当して,形態的変化の最も激しい時期であるため,正確で迅速な分類・同定にあたっては一定の専門的知識と経験が必要とされる。
2.標本の固定・保存3)4)
採集した全プランクトン混合物は,船上において5~10%の中性ホルマリンで速やかに固定し,実験室へ持ち帰ったらできるだけ早く選別を行う。長い期間を経ると仔稚魚の同定に重要な黒色素胞(melanophores)などが退色あるいは消失して,同定が困難になる。耳石観察に供する魚種が入っていて選別に手間取る場合には,混合物すべてを水洗いした後,80%エタノールで保存しておく。この場合でも試料からにじみ出るホルマリンの影響がでるので,すみやかな選別が望ましい。
保存液は,通常5%中性ホルマリンまたは70~80%エタノールを使用する。エタノールは脂肪分を分解し易く,仔稚魚の特に頭頂部・膜鰭を変形させるので,標本をスケッチに供する場合にはホルマリンの方がよい。一方,ホルマリンは耳石や骨の硬組織を分解してしまうので,耳石観察・骨格観察にはエタノールの方がよい。
また,赤色素胞(erythrophores)や黄色素胞(xanthophores)が種の同定の指標となる場合(マグロ類の仔稚魚)があり,ベラ類やハゼ類,カジカ類などの仔魚でも有効と思われる。ただし,赤・黄色素胞は消失しやすく,エタノール中では1~2日,ホルマリン中では通常4~5日しか残存しないため,同定は採集後できるだけ早く行う必要がある。
色素胞の保持に最も重要なことは,標本を明るい場所に置かないこと(紫外線を避けること)である。その他,中性ホルマリンの調整方法や標本の保存・保管法の詳細は Lavenberg,McGowan and Woodsum 5)に記載されている。
3.仔稚魚の選別
稚魚ネット等によって採集された仔稚魚標本の分類・同定作業は,①全プランクトンサンプルからの仔稚魚の選別,②選別された仔稚魚の分類・同定,という二つのステップに分けられる。
仔稚魚の選別は通常,プランクトン混合物をシャーレに適量ずつ入れ,魚卵の選別と同時に,倍率7~10倍程度の実体顕微鏡を用いて,上方からの落射光と下方からの透過光とを用いて行われるが,肉眼のみで行われることもある。この一次選別の際に仔稚魚を大まかにタイプ別に区別しておくと,後で便利である。なお,仔稚魚の選別方法についてはKramer et al.6)に詳しい記述がある。
4.仔稚魚の発育段階区分
個々の生物種の個体発生を理解する枠組みを設定し,分類群を横断した比較基準を設けるため,適切な発育段階を区分することは重要である7)。その際に求められる条件は,有用性,識別の簡便さ,客観性,普遍性である。
1990年代前半頃まで,わが国では海産魚の初期発育段階は,次のような区分に従って記載されることが多く,沖山8)でも基本的にこの区分法が適用されている。
前期仔魚(prelarva):孵化後,卵黄を吸収しつくすまでの時期
後期仔魚(postlarva):卵黄を吸収しつくしてから各鰭の鰭条数が定数になるまでの時期
稚魚(juvenile):鰭条数は成魚に等しいが,体の各部比,色彩,生態などが成魚とはかなり異なって いる時期
しかし,近年では尾鰭の形成過程(脊索尾端の状態)に注目した仔魚期の区分法9)(下記説明および図1参照)の適用が一般的となっている。この区分法を採用することの利点は,通常,尾鰭条がもっとも早く発現し,分類学的にも安定した形質であるととともに,仔魚の発達段階のよい指標にもなることにある。ただし,仔魚と稚魚との間の識別規準の取り扱いかた(移行期仔魚・浮遊期稚魚・前稚魚)には混乱がみられ,これらのカテゴリーは一般的には使用されない(詳細は沖山7)を参照)。
図1 脊索尾端の状態に基づく仔魚期の区分法(カサゴで例示)
A: 前屈曲期仔魚, B: 屈曲期(前期)仔魚, C: 屈曲期(後期)仔魚, D: 後屈曲期仔魚
仔魚(larva)
・卵黄嚢仔魚 (yolk-sac larva):孵化から,卵黄を吸収しつくすまで
・前屈曲期仔魚 (preflexion larva):卵黄を吸収しつくしてから,脊索尾端が上屈し始めるまで
・屈曲期仔魚 (flexion larva):脊索尾端の上屈の開始から完了まで(屈曲前期,屈曲後期などに細区分する場合もある)
・後屈曲期仔魚 (postflexion larva):脊索尾端の上屈完了から,各鰭の棘・軟条が形成中のもの
・移行期仔魚 (transformation larva, transition larva):仔魚期の特徴を失いつつ,各鰭の棘・軟条が定数となって鱗が形成開始するまで
稚魚 (juvenile)
・浮遊期稚魚 (pelagic juvenile):各鰭の棘・軟条が定数となり,鱗は形成され始めたが,色素が不十分なもの
・稚魚 (juvenile):鱗・色素が十分発達したもの
5.仔稚魚の分類・同定10)11)12)
5.1 分類・同定の現状
日本産魚類の仔稚魚の分類・同定の手引き書として沖山8)がある。この図鑑では,淡水魚を含む約1100種の後期仔魚~稚魚の形態について,概ね1986年までの情報が整理されており,通常の同定作業に対応できる。ただし分類群によっては,近縁種あるいは近似種との識別点に関する情報の乏しい分類群もあり,詳細については原著論文を参照する必要がある。なお,本書の発刊後に発表された魚卵・仔稚魚の形態記載の文献情報は,小島13),永澤ほか14)によって発育段階別に整理されている。
仔稚魚の検索表については,沖山8)において一部の分類群(ウナギ目,ダツ科,サヨリ科,サバ科,ダルマガレイ科,カレイ亜科など)について作成されているが,多くの分類群については情報不足等の理由から未だ作成されていない。
5.2 分類・同定に用いる形質
代表的な仔稚魚の体制模式図と各部位の名称を図2に示した。発育段階別の体長(body length:BL)の定義は以下のとおり(図2)。
前屈曲期仔魚と屈曲期仔魚:吻端から脊索末端までの距離(=脊索体長)
後屈曲期仔魚以降:吻端から下尾骨後縁までの距離(=標準体長)
図2 仔稚魚における測定部位と各部位の名称(沖山8)を一部改変)
1:鼻孔,2:眼球,3:眼裂,4:コロイド組織,5:耳胞(嚢),6:前上顎骨,7:主上顎骨先端突起,8:主上顎骨,9:下顎,10:鬚,11:下顎隅角部,12:前脳部,13:中脳部,14:後脳部,15:眼上棘,16:上後頭棘,17:頭頂棘,18:翼耳棘,19:擬鎖棘,20:前部(内側)前鰓蓋棘,21:後部(外側)前鰓蓋棘,22:主鰓蓋棘,23:肩帯縫合部,24:背膜鰭,25:肛門前膜鰭,26:背鰭原基,27:臀鰭原基,28:胸鰭,29:腹鰭,30:背鰭棘部基底,31:鋸歯状背鰭棘,32:円滑背鰭棘,33:背鰭軟条部基底,34:背鰭軟条,35:脂鰭,36:尾鰭前部鰭条,37:尾鰭,38:臀鰭棘部基底,39:臀鰭棘,40:臀鰭軟条部基底,41:臀鰭軟条,42:離鰭,43:筋(肉)節,44:筋隔,45:食道,46:鰾,47:腸管環状皮褶,48:直腸,49:肛門,50:脊索末端,51:尾柄,52:下尾(軸)骨,53:体幹部(肛門前)筋節,54:尾部筋節
全長(a-e):吻端から尾部末端までの水平距離
体長(a-d):吻端から下尾骨後縁までの水平距離
脊索長(a-f):吻端から脊索末端までの水平距離。一般に脊索末端部の屈曲が完了するまでに用いる。
肛門前部長(a-c):吻端から肛門後端までの水平距離
頭長(a-b):吻端から鰓蓋骨後縁までの水平距離。鰓蓋骨が未発達のときは,耳嚢後縁あるいは肩帯(擬鎖骨)までを測定する。
体高:胸鰭基部における鰭部を除いた体部の垂直距離
眼径(g-h):眼球着色部の中心を通る水平距離
吻長(a-g):吻端から眼球着色部前縁までの水平距離
鰭条長:各鰭のうち最長鰭条の長さで基部から先端までの直線距離
棘長:鰭または体部棘の基部から先端までの直線距離
仔稚魚の分類・同定は,顕著な特徴を有する場合を除いて,通常,以下に示す標徴形質の組み合わせに基づいて行う。観察・同定にあたっては,各分類形質について,「個体変異の幅」と「発育に伴う動的変化」を認識しておくことが大切である。また,計量形質と体形は最も豊富な情報を与える識別形質として重視されるが,特に発育初期では「ホルマリン固定に伴う標本の変形や収縮の影響」を考慮する必要がある。
主要な目,亜目レベルでの仔稚魚の同定に有効な形質の状態について表1(省略)に示した。この表および形態図(図2)を参考にしながら,幼期形質の特徴と状態の読み方について以下に注釈を加える。
(1)計量形質と一般的な体形
最近,分類・同定を目的とした科レベルでの形態的グルーピングがいくつかの手引書で提示されている。例えば,科レベルで日本産魚類相との共通性が高いオーストラリア産の仔稚魚について,Neira, Miskiewicz and Trnski 15)は皮甲板(dermal plates)の有無,筋肉節数,腹鰭・胸鰭の発達状況,消化管の横紋の有無,黒色素胞の分布状況等の組み合わせによって9群にグルーピングし,Leis and Carson-Ewart16)は体形と消化管の形状の組み合せによって19群にグルーピングした形態図をそれぞれ示している。また,東部北太平洋産(カリフォルニア海流域)の仔稚魚について,Moser17)が科レベルでの代表的な形態一覧図を示している。これらの形態一覧図は,日本産仔稚魚について科レベルでの大まかな形態的特徴を捉える際に大変参考になる。ただし,その際,同一科内の形態的多様性が十分には表現されていないことに留意する必要がある。
仔稚魚の記載における体型,頭部サイズ,消化管のサイズ・形状の表現方法について,一例としてLeis and Trnski19)による定義を以下に示す。
①体型:体長に対する体高(胸鰭基底部での測定値)の比率で定義され,非常に細長い(10%未満),細長い(10-20%),中程度(20-40%),体高が高い(40-70%),体高が非常に高い(70%より大) ,に区分される。
②頭部サイズ:体長に対する頭長の比率で定義され,小さい(20%未満),中程度 (20-33%),大きい(33%より大),に区分される。
③消化管サイズ:体長に対する肛門前部長の比率で定義され,短い(30%未満),中程度(30-50%),長い(50-70%),非常に長い(70%より大),に区分される。
④消化管の形状:直走型, 発育初期は巻かずに次第に捩れる型, 発育過程を通して十分に巻く型,に区分される。
(2)筋肉節数と脊椎骨数
魚類の分類に有用な計数形質として重要なものの一つに脊椎骨数がある。これと正確な対応関係にある筋肉節数(通常,脊椎骨数より1~2個多い)は,発育のごく初期にその種の定数となるため,仔稚魚の同定形質として最も重視される。筋肉節の計数にあたっては,肛門の開口位置(ウナギ目魚類の葉形幼生では最終垂直血管の位置)を規準にして分割計数することが,脊椎骨数を腹椎骨と尾椎骨とに区分して計数する場合と同様に,有効な情報となる。
なお,計数にあたっては最前部と後端部の筋肉節が確認しづらい場合には,照明方法(落射・透過,偏光フィルターの使用など)やグリセリン浸漬などの工夫が必要である。また,化骨の進んだ稚魚の脊椎骨数の計数には,染色・透化処理20)が有効である。
(3)鰭条数
孵化仔魚の鰭は,多くの場合,頭部から体の背・腹部と尾部端を覆う連続した膜状のもの(膜鰭と称する)である。発育が進むと膜鰭は退行するとともに,鰭の分化が始まる。鰭の形成は分類群によって異なるが,一般的には尾鰭,背・臀鰭,胸鰭,腹鰭の順に進行する。
仔魚期の膜鰭は形状,大きさに種的特徴がみられる場合があるが,肛門前膜鰭の有無を除いて,分類形質としての有用性に欠ける。これに対して鰭条はその構成(棘条および軟条),大きさ,発現の位置と順序,時にはその移動,軟条から棘条へ変化などの性状において,一時的および永久的形質を含めて多彩な情報を提供するもので,上述の脊椎骨数とともに,分類・同定において最も重要な計数形質としてあげられる。なかでも尾鰭条は高位分類群において安定しており,鰭の中では一般に最も早く分化することから,尾部末端部の骨学的な情報が稚魚分類に有効な場合がある。
仔稚魚の分類・同定に有用な各鰭の要素・状態は以下のとおり。
背鰭:構成要素,棘条・軟条の形成順序,遊離原基形質の形成21)
臀鰭:構成要素,遊離原基形質の形成21)
胸鰭:形成時期,大きさと鰭条数
腹鰭:形成時期,発現位置,構成要素,吸盤への変化
尾鰭:主鰭条
脂鰭:有無
(4)色素胞の分布パターン(図3)
黒色素胞は高位分類群よりも,むしろ種レベルでの分類・同定において最も有用な形質である。仔稚魚の分類・同定は,それらの分布パターンに基づいて行われるが,時には単一の黒色素胞の大きさが重視されることもある。黒色素胞の観察にあたっては,体表上の色素胞に限定することなく,脳室部,筋肉節下,腹腔内などの部位のものも観察対象とすることが必要である。また,仔稚魚の生理状態や昼夜による色素胞の拡張・収縮状態の違いに留意する必要がある。さらに,飼育すると黒色素胞が天然個体より若い発育段階で濃く出現するので,飼育個体に基づいた記載を参照する際は注意する必要がある。
図3 仔稚魚にみられる黒色素胞25)
(5)頭部棘要素
頭部の棘要素は,それが生じる骨に基づいて命名され,それらのタイプ・サイズ・形状・数・装飾物(鋸歯縁など)・発育の様相などが,科やそれ以上の分類レベルでの仔稚魚の同定に重要である。頭部棘要素(図2)は特にカサゴ亜目やスズキ亜目22)で顕著であり,普通にみられるのは,前鰓蓋棘,主鰓蓋棘,上後頭棘,眼上棘,頭頂棘,翼耳棘などである。なお,厳密には頭部ではないが,肩帯の上擬鎖棘や擬鎖棘なども頭部棘要素の一部として記載されることが多い。これらの棘要素は多くの場合,発育にともなって次第に退行ないし消失する。
(6)その他の形質
鰓条骨数は比較的分化が早い永久形質として,属あるいは科レベル以上の分類に有効なことが多い。鰓耙数,鱗数は一般に発達が遅いため,仔魚の同定には有用ではないが,稚魚の分類には有効である。その他,仔稚魚の同定に有用な形質は以下のとおり。
吻 :形状,骨質突起(棘,隆起)
下顎先端部:鬚状構造物の有無,構造
腸管 :形状(直走,湾曲,旋回,後部の垂下など),長さ
眼 :形状,有柄眼(潜望鏡構造),コロイド組織の発達,移動
発光器 :配置
鰾 :有無・形状
5.3 分類・同定の際の留意事項
仔稚魚の同定は,時間と労力の許す限り,できるだけ下位の分類群まで行うことが望ましいが,種レベルへの安易な同定は慎むべきである。例えば,小型で穴居性など特異な生態を有していて通常の方法では捕獲されにくいため,未記載・未記録の種や十分に整理されていない沿岸性魚類もいくつか残されている(例えばアゴアマダイ科)。それらの浮遊生活期にある仔稚魚は成魚に比べて採集される可能性が高いが,そのような分類群の仔稚魚の同定については,慎重に対処する必要がある。
また,成魚の生息状況から対象海域における仔稚魚の出現種の絞り込みはある程度可能であるが,当該海域に親魚が分布していなくても,海流に乗って遠方(多くの場合は南方)から運ばれてくる仔稚魚の出現の可能性にも留意すべきである。
5.4 同定に有益な背景情報と観察眼の養成方法
仔稚魚の種の同定にあたっては,対象海域に生息する成魚の分類・同定形質に関する広い知識が有効である。その際,魚類の分類体系,成魚の分類形質は中坊23)が参考になる。さらに,成魚の生態(繁殖方法,産卵場,産卵・産仔期,産卵・産仔時刻)についての知見が背景情報として参考になる場合が多い。対象海域における過去の調査で,同定技術の信頼できる研究者によって作成された,量的情報を含んだ仔稚魚の出現種リストも参考になる。
同定対象とする標本から,分類・同定に重要な形質の状態を読み取る眼を養うことが大切である。それには数多くの種の標本についての詳細な観察経験(スケッチを含む)を必要とする24)。そして,ある程度の経験を積めば,同定対象とする仔稚魚について,体形や色素胞の分布状態,頭部棘化の状態など,各要素の組合せが持つ“総体的な雰囲気”から,少なくとも目,亜目あるいは科レベルへの帰属がわかるようになる。ただし,系統的に遠い関係にある種であっても,仔稚魚期の形態が酷似することがあり(収斂現象),それらを識別し,種名を明らかにするには一定の専門的知識と経験を必要とする。
5.5 帰属不明の仔稚魚の扱い
沿岸域で採集される仔稚魚の大部分は,少なくとも科レベルの同定は可能である。しかし,体長3㎜前後の形態的特徴に乏しい仔魚については,科レベルでの同定も困難なものがあり,それらの同定方法の確立が今後の課題として残されている。
帰属不明の仔稚魚については可能な限りタイプ分けすることが望ましい。その際,形態的特徴を記述した備忘録としてのスケッチ(側面だけでなく,必要に応じて背・腹面図も)を付し,将来,種名が明らかになった場合のデータ活用に備えておくことが望ましい25)。スケッチは,言語では表現しきれない多くの有用な情報を含んでいるからである。
5.6 分子生物学的手法による同定
以上に述べた外部形態による種判別方法の限界を克服する方法の一つとして,近年,免疫学的手法や分子生物学的手法が注目されている。仔稚魚の同定への適用例として,同属種や近縁な複数種間の相互識別の有効性が報告されている(例えば,ハゼ科26)やサバ類・アジ類・タラ類27))。今後,近縁種について科・属から種レベルへと判別・同定レベルを向上させる手段の一つとして,これらの技術の開発・導入が期待され,同時にルーチンワークにおける簡便性・迅速性・コスト面での実用性の検討も望まれる。
参考・引用文献
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●参照
「地球環境調査計測事典. 第3巻(沿岸域編)」の詳細目次
2016-10-11
https://ameblo.jp/husakasago/entry-12208569930.html
水戸 敏(1960)
浮游性魚卵および孵化仔魚の種の同定について.
九州大學農學部學藝雜誌. 18 (1), pp. 61 - 71.
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/21521/p061.pdf
Ichthyoplankton
https://en.wikipedia.org/wiki/Ichthyoplankton