「音盤風刺花伝」に続くドナルド・キーンさんの二冊めの音楽関連のエッセイです。一冊目は今探していますが、なかなか見つからないんですね。この「音楽の出会いとよろこび」が岩見沢の田舎の古本屋で見つかるとは夢にも思いませんでした。210円コーナーに密やかに眠っておりました。レコード芸術に英語でドナルド・キーンさんが書いたものを中矢一義さんが訳していましたが、キーンさんはその訳も楽しみにしていたとか。
キーンさんにしても、天の邪鬼だからと謙遜しながらも、やはり大好きな本業以外の音楽については自分のこころの奥の奥まで書き込める英語ですらすらと書きたかったのかもしれませんね。
小松左京の「宇宙人の宿題」講談社文庫。
24のSF童話が入っていて、解説を谷川俊太郎がしている。
彼はデビュー作の24億年の孤独の詩をさりげなく語りながらこの作品の解説をしている。
「人々が地球のさびしさをもっとひしひし感じるように眠りの前にぼくは祈ろう」
と谷川さんは、この作品にエールを送る。
立原正秋さんの「春のいそぎ」も「夢のあと」と「雪のなか」の作品前後に書かれたものですが、これも絶版になっていると思いますが。講談社文庫。
最後に「エロス的人間」。澁澤龍彦。中公文庫。これは古本屋でよく見かける古本ですが、30円というのが岩見沢らしいですね。中身はもちろん30円どころか、私にとっては学生時代に朝から晩までこの本にひたっていた私にとっての思い出の書でありますし、これだけの教養を美的スタイルのある文体で書ける作家などは現代にはもうほとんどいません。
確かに、坂口安吾が言っているように作品は商品です。
お客様のご満足のための商品ではありますが、それは安吾が当時のすべて「かちかちの芸術主義の鼻持ちならない作品」がたくさんある時代に少し偽悪的に書いた彼なりの名言なのであり、今みたいに本の作家達が「金のために書いています」とはっきり言うような、ロマンもへちまもない時代には、<まさにそれは、羞恥心もまったくなく裸になる女達やそれらアホな女達につるむ男ホスト達がうじゃうじゃいる現代の象徴の言葉なのですが>、つい、ひねくれものの私は「金のために書いているのではない」と気取ってやせ我慢している作家の味方をしたくもなりますね。
というわけで、今日の収穫は、本物の作家達の文庫三冊で90円でした。たまにはこういう日もありますね。
夏目漱石が言ったように、人間関係から逃れられないとすると、たまには絵とかビデオとか詩とか文学の世界に遊び、癒されて、そしてまた、人間界にもどっていくことが大切なんですよね。明日もまた仕事にもどります。