小林秀雄と川端康成と白州正子は、そして、青山次郎の関係は非常に面白い関係である。
その白州さんが、小林さんをこの長野県の諏訪大社の近くの「みなとや旅館」を紹介しておとづれた。
旅館には70歳の小口さん夫婦がいらっしゃる。
秋の夜長、ちびちび酒をやりながら、風呂に入っては読み、読んでは温泉につかる、至高体験。
小林が「綿のような湯ですな」と言い、「綿の湯」と名前がついた。
白州さんが、小口夫婦から、蔵で眠っていた皿を見せられて「どれが価値があるのかおしえていただきたい」と質問され、「器は使ってこそ価値があるの。もしもそれを知ったら、皿をしまうかもしれませから、教えません」と言ったらしい。
白州さんらしいですよね。
彼女の本を読んでいるとそのエピソードがいろいろでてくる。
骨董価値のすごいものを、なんの未練もなくどんどん使って楽しんでいる。
割れたら割れたでいいという態度が好きです。
テレビでやっている「なんとか鑑定団」もおもしろいが、価値をすべて金だけに換算する「えげつなさ」が
ときおり気になることがあるのは私だけではないでしょう。
秋の夜。
私はこれから風呂につかり、何を読もうかなと、悩んでおります。
「漬け物の本」かな。
「オーパオーパ」かな。
「誰にでもいける秘境の本」かな。
「一人で歩ける北海道」かな。
「ダンスダンスダンス」かな。
そして、ブラックニッカを飲みながら、今夜も夜は更けて行きます。