最近、アベ首相が再び9条改憲について発言していますが、私には、「9条の改憲」は当て馬ではないかと思いはじめて来ました。
◎ アベ政権が成立を目指している“本命”は「緊急事態条項」
◎ 第9条の自衛隊明記は、野党や国民の耳目を集め、緊急事態条項に目を向けさせないための“当て馬”。
というのが私なりの結論です。
もちろん確たる証拠もありません。「アベ首相が正面から議論する訳がない、本当に重要なものは隠して、目立たないように“こそこそ”と処理する。」、「アベ首相は、自分の名声欲も含め、身内に具体的な利益を得られるものを優先する。」、という、今までの法案の出し方を見た印象から出た“ヤマ勘”に過ぎません。
でもこれだけは言えると思います。
アベ首相がふっかける議論をまともに受けてはいけない。
その背後に隠された本命を叩け!
(1)そのために、どのように国会を運ぶのか?
緊急事態条項を実現するための国会運営を考えて見ました。
a.国会やマスコミに対しては、今までどおり「自衛隊条項の追加」案を振りかざし、第9条の改憲をアピールして、世論、野党の関心を引きつけます。同時に、教育の充実など国民の耳に魅力的に響くものを、前面に出します。
b.その間、緊急事態条項などの他の条項には出来るだけ触れさせないようにします。
c.一定の時間が経過したところで「議論は十分尽くした」として強硬採決します。
d.この際、駆け引きの材料として、教育の充実、参議院の合区問題、最悪の場合は第9条の改憲を取り下げます。その代わり、天災列島日本の宿命的な問題として、「災害対応としての緊急事態条項」を通すための工作をします。
これで、災害に強く、平和主義のアベ政権が誕生します。
(2)なぜ、「第9条に自衛隊明記」よりも「緊急事態条項」なのか
緊急事態条項を優先させるのは、次のような理由からです。
a.既に解釈改憲により武力攻撃事態対処法が成立しているなど、「自衛隊を米軍の指揮下に置く(米軍の下請けを行う)」形での集団的自衛権の体制整備は完了している。
→ 憲法に自衛隊を明記しても、アベ政権にとって当面の利益はない。
b.憲法に緊急事態条項がないことは、次の2点において政権にとって不都合がある。
(a)災害対策基本法、国民保護法(正式名称:「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)により、災害時や武力攻撃事態等において、国民の保護のための関係機関への協力要請や臨時の政令が出せるなど当面の対応はできるようになっているが、政令の出せる条件や政令で統制できる範囲が限られている。このため、武力攻撃事態等において、例えば軍事物資や兵員の輸送のための徴用、物資の徴発などができる状態にないなど、十分に米軍を支援できる体勢にない。
(b)現憲法では、いわゆる“緊急事態”下であっても、衆議院議員の任期が満了になれば、議員は“失職”する可能性がある(現憲法では参議院の緊急集会が代替することになっているので立法機能は維持されるが、衆議院議員の立場は保護されない。)。
→ 取り分け武力攻撃事態時における全権の掌握と、議員の権益を確保する必要がある。
c.「参院選『合区』解消」と称して、第47条と第92条を改正しようとしているが、ここで意図した改憲により具体的な利益を受けるのは、現時点では自民党議員の一部であろう。
→ 自民党全体としては、優先度が低いのではないか。
d.「教育の充実」として、第26条と第89条を改正しようとしているが、技術論として(=右派、左派に関係なく)、憲法の改正によらずとも法律の範囲でできるものであり、憲法で規定することの実質的な利益がある内容になっていない。
→ 維新の賛同を得るための見返り、あるいは、国民からみて“良いんじゃないか”感を醸し出すための撒き餌に過ぎない、いわゆる“毒(=緊急事態条項)まんじゅうの皮”。
下に、今までにブロクにアップした記事から、関連するものの一部をリストアップし、リンクを貼っておきました。
憲法改正推進本部案に関連するブログの記事
【第9条関係】
第64条の2 第73条の2 第9条の2 本当にヤバイ! 憲法に自衛隊 + 緊急事態条項 米軍に自衛隊を差し出す安倍首相
【緊急事態条項】
第73条の2 緊急事態下の政令で政府の暴走に歯止めが掛けられなくなる
【参院選『合区』解消】(このブログ記事は平成24年の改憲草案の条項について書いたものです。)
第47条 行政区画、地勢等を勘案した選挙区割りは“地盤・看板・鞄”の世襲に繋がる
【教育の充実】
第26条 高等教育の無償化は何処に? 政・財・官の一体化した国のための教育を目指す自民党