先週金曜日 ( 3月 2日 )、は現在対ユーロで 30 パーセントの取引バンドが設定されて
いるハンガリーフォリントに対し、レンジ制限をかけないフリー・フロートになるのではとの
噂が流れ、フォリントは + 0.7 % 上昇した。 今週に入ってもこの観測が持続され、
フォリントは底堅い動きを継続。 しかしながら昨日は政府から これを否定するコメントが
発表された。
21世紀に入ってから、ハンガリー・フォリントは下記の通り数々の波乱含みの推移を経験
している。
* 2001年 10月01日
1995年 3月から 6年間維持されていたクローリング・ペッグ制度 (米ドル 30 %、
ECU 70 % のバスケットに対し、月間 1.9 % ずつフォリント切り下げを実施 ) を
廃止し、対ユーロでパリティーからの有効バンドを + / - 2.25とした後、新たに
パリティーを 276.1 で設定。 また新有効バンドを + / - 15 %へと広げた。
(事実上 変動相場制の導入)
* 2003年 1月
10 %以上のフォリント高が続き、フォリントはバンド上限を推移。政府・中銀は 総額
52億ユーロの買い / フォリント売り介入で為替市場を操作し、同時に政策金利を
8.5 % から 6.5 % へと引き下げ実施。
* 2003年 5~6月
ハンガリー当局は今度は逆に総額 38億ユーロの売り / フォリント買戻しを実施し、
投機資金を沈静化。 6月 4日に為替介入を終了した。 当時フォリントは 対ユーロで
256と、4.0 % 下落。 1月の介入レベルを割り込んだ。
* 2003年 6月 4日
ハンガリー当局は 2.2パーセントのフォリント切り下げを実施。 そのパリティーを
対ユーロで276.10 から 282.36 とし、+ / - 30 % の有効バンドを設定。
追加措置として基準金利を 2回、合計 300 bp 引き上げ、9.50 % とした。
結果フォリントは 対ユーロで270 を割り込んで強まった。
* 2003年 11~ 12月
財政赤字拡大とヘッジ・ファンドのフォリント売りが重なり、政府・中銀はフォリント防衛に
錯綜。 国内金利が急上昇する中、公定金利はさらに 300 bp 引き上げられ、 12.50 %
にまで達した。 当時 対ユーロで 270以下で推移していたフォリントは、 265へと上昇。
* 2006年 6月
財政赤字拡大。 ジュルチャーニ首相の機密録音テープが暴露され、大規模市民デモが
拡大。 フォリントは初めて中心バンド 282.36 を割り込み 285.15 (2006年 6月 29日)
まで急落。 その後緊急財政改革法案が制定され、大幅増税などが実施されたことにより、
昨日は 252と安定推移している。
ハンガリー政府・国立銀行は以前からフォリント高を好んでいるようだ。 自国輸出による
景気維持よりも、原油や国内消費製品の輸入価格上昇を懸念し、インフレを払拭したいと
する意向が強い。 ただ 3月 2日に退任したヤライ・ハンガリー前中銀総裁は、「国内外の
経済動向に合致するようこの通貨有効バンドの維持に対して議論しても良いのではないか」
とのコメントをしばしば発していた。
ところが昨日ジュルチャーニ首相およびバレス財相は、「 30 % の有効バンドの廃止は
現在のところ廃止する必要はない。 同国中銀が上程するのであれば考慮しても良い」 と
コメント。 新しく就任したシモール中銀総裁も中立やや政府寄りの意見を持っているため、
当面完全フロートまでの道のりは遠のいたようだ。
ただ昨日のフォリントは新興諸国の通貨の買い戻しが大きく見えたこともあり、フォリントは
対ドルおよびユーロに対して強含んで引けている。 ハンガリー国債はほとんど変わらず。