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クラシック音楽とお散歩写真のブログ

座右の銘は漁夫の利、他力本願、棚から牡丹餅!!
趣味のクラシック音楽をプログラミングする事に没頭、あとは散歩中に写真を撮りまくること。

中学受験応援しています。

ヨハン・ネポムク・フンメルの弦楽四重奏曲集 Op. 30は、古典派の様式美と来るべきロマン派の萌芽を感じさせる魅力的な作品群です。モーツァルトの弟子であり、ベートーヴェンのライバルとも目されたフンメルの室内楽における実力が存分に発揮されています。


作曲家としての評価を受けるべく、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第1番~第6番 Op.18 (全6曲)に対抗する意図もあったかと思われますが、この後1804年以降のベートーヴェンは「傑作の森」と呼ばれる中期(英雄時代)に突入し、より革新的でかつ創造性に富んだ作品をおおく世に送り出していきます、フンメルがベートーヴェンに対しての劣等感に苛まれる時期もこの時期だと思われます。


ベートーヴェンの作品は古典派の様式を打ち破る革新的なものばかりで1806年以降の弦楽四重奏も充実した革新的作品が生み出されていきました。一方フンメルの作品は革新的ではなく、ハイドンやモーツァルトの影響を受けつつも、フンメル独自の華やかで流麗な旋律線や、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストであった彼らしい技巧的なパッセージが弦楽四重奏にも現れているのが特徴です。とはいえ、古典派の弦楽四重奏曲としてはかなり完成度が高くセンスにあふれた作品であり、フンメルがこの曲集以降このジャンルを手掛けなかったことは残念でなりません。より初期の2曲の弦楽三重奏と共に弦楽器だけの室内楽作品はこれら5曲のみです。

 

その3曲の弦楽四重奏を打ち込んでいるのですが、11月のフンメルの命日か(11/14)が早ければ生誕日(10/17)に公開できればとは思っています。取り急ぎnoteにアップしたmp3音源を聴いてみてください。

 

弦楽四重奏曲 第2番 ト長調 Op. 30 No. 2よりメヌエット


今回はとても気に入った曲の一部分を聴いてみてください。もともと3曲の中でも特に人気が高く、旋律の美しさが際立つ作品ですが、この第3楽章 (Menuetto: Allegro):はリズミカルで快活なメヌエット。溌剌とした雰囲気の中に、洗練されたウィーン風のエレガンスが感じられます。モーツァルトの交響曲第40番のメヌエットにとても雰囲気が似ているのですが、中間部のトリオに関してはウイーンのカフェで聞きたくなるような優雅な作品です。

まだこの曲だけミックスまで済ませましたが、他の打ち込み自体が全く終わっていません。


Programming Music
Gabriel Faure / Sicilienne in g-minor,Op.78(Cello & Piano)

心惹かれる哀愁のメロディ。フォーレの「シシリエンヌ」の魅力に迫る 🎻✨

どこか懐かしく、切ない気持ちになる…そんな美しいメロディを聴いたことはありませんか?カフェやCM、フィギュアスケートの演技などで、きっと一度は耳にしたことがあるはず。その曲の名は、ガブリエル・フォーレ作曲の「シシリエンヌ」。
今回は、時代を超えて世界中の人々を魅了し続けるこの名曲の魅力について、少し深く掘り下げてみたいと思います。


そもそも「シシリエンヌ」ってどういう意味?

「シシリエンヌ(Sicilienne)」とは、フランス語で「シチリア島の」という意味。その名の通り、イタリアのシチリア島が起源とされる舞曲のリズム形式(シチリアーノ)からインスピレーションを得ています。
ゆったりとした8分の6拍子で、舟歌のように揺れるリズムが特徴。このリズムが、優雅でありながらもどこか物悲しい、独特の雰囲気を作り出しているのです。


悲劇から生まれた美しい旋律

この「シシリエンヌ」が世に知られるきっかけとなったのは、1898年に上演されたメーテルリンクの戯曲『ペレアスとメリザンド』でした。フォーレはこの劇の付随音楽を依頼され、その中の一曲としてこの「シシリエンヌ」を編曲したのです。
物語は、禁断の愛の末に悲劇的な結末を迎えるという、ミステリアスで儚い雰囲気。メリザンドが泉のほとりで髪をとかす幻想的なシーンで流れるこの曲は、物語の持つ切ない美しさを見事に表現し、聴衆に強い印象を与えました。
面白いことに、この曲の原型は劇音楽よりも前、1893年にチェロとピアノのために書かれていたそうです。様々な形で温められていた旋律が、『ペレアスとメリザンド』という作品と出会い、その才能を一気に開花させたのですね。


なぜこんなにも心惹かれるのか?3つの魅力

「シシリエンヌ」が持つ不思議な魅力の秘密を、3つのポイントで解説します。
魅力①:忘れられない優雅なメロディ 🎶
なんといっても、この曲の一番の魅力はその旋律の美しさ。息が長く、滑らかに流れるようなメロディーは、一度聴いたら忘れられません。哀愁を帯びていながらも気品があり、私たちの心の琴線にそっと触れてくれます。
魅力②:心地よい「揺らぎ」のリズム 🌊
前述したシチリアーノのリズムが、曲全体に心地よい「揺らぎ」を与えています。穏やかな波に身を任せているような、あるいは遠い昔を懐かしむような、ノスタルジックな気分にさせてくれるのです。
魅力③:色彩豊かなフォーレのハーモニー 🎨
フォーレは「フランス近代音楽の巨匠」と称され、その洗練されたハーモニー(和音)は高く評価されています。「シシリエンヌ」でも、繊細に移り変わる和音がメロディを彩り、まるで印象派の絵画のような、光と影が織りなす色彩豊かな世界観を生み出しています。


どの楽器で聴く?それぞれの魅力

この曲はもともと管弦楽曲として有名になりましたが、現在では様々な楽器のために編曲され、演奏されています。

  • フルート版:最もポピュラーな編曲の一つ。フルートの透明感のある柔らかな音色が、曲の持つ儚い美しさを引き立てます。

  • チェロ版:原型となった編成。深く、温かみのあるチェロの音色が、旋律に込められた哀愁や情熱を豊かに歌い上げます。

  • 管弦楽(オーケストラ)版:ハープのアルペジオに導かれてフルートがメロディを奏でる、最も色彩豊かで豪華な響きを楽しめます。

今回は原曲のチェロとピアノのバージョンで作成しました。


まだまだ「秋の夜長」とはならないですが、少し物思いにふけりたい時、フォーレの「シシリエンヌ」が、あなたの心に優しく寄り添ってきませんか?

Computer Programming : Hummel Note
Programed by Dorico 5
Sound:GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA 5/ARIA
Mix & Mastering:SSW10 Lite
Image generated by Google Gemini. Video from iStock.

 

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今回はモーツァルトの有名なピアノ協奏曲《戴冠式》を、フンメル編曲版のピアノパートでプログラミングしてみました。

オーケストラはモーツァルトのオリジナルを使用していますが、独奏ピアノはフンメルによる改変版です。これがとても面白い!
 

Mozart(arr. Hummel)Piano Concerto No.26 in D, K.537 "Coronation"

 

 

Programed by Hummel Note

Daw&SequencerDorico 5

SoundsNote Performer 5, GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA(Piano),

Thumbnail images are generated by CyberLink PowerDirector



使用パート(楽譜)と構成
 

原曲と管弦楽パートはモーツァルトのオリジナルスコアを使用した。
ピアノパートはJ.N.フンメル編曲版「モーツァルトのピアノ協奏曲第26番の四重奏曲編曲版,S.142」(1835年)のピアノパートを使用。

 

第1楽章 カデンツァ:フンメル「モーツァルトのピアノ協奏曲7曲へのカデンツァ集,Op.4(Op.46a)」より

第2楽章 アインガング:フンメル「モーツァルトのピアノ協奏曲第26番の四重奏曲編曲,S.142」より

第3楽章 第1アインガング: フンメル「モーツァルトのピアノ協奏曲第26番の四重奏曲編曲,S.142」より

第3楽章 第2アインガング:フンメル「モーツァルトのピアノ協奏曲7曲へのカデンツァ集,Op.4(Op.46a)」より

 


フンメル版ピアノパートの特徴


まず大きな違いは、モーツァルトが想定した 5オクターブのフォルテピアノから、フンメルの時代の 7オクターブに拡張されたピアノに合わせて音域が広げられていることです。よりモダンな響きで、迫力と華やかさが増しています。

また、フンメルはモーツァルトの弟子でもあったため、同時代の後輩演奏家たちがどのように弾いていたかを私たちに伝えてくれるような編曲になっています。

特にこの《戴冠式》の場合、モーツァルトの自筆譜は省略だらけで、即興的に弾くことを前提にしていたと考えられます。フンメルはそれらの空白を埋めるように補筆し、演奏可能な形に整えているのです。


左手がない!? モーツァルト自筆譜の不思議

《戴冠式》の自筆譜は、左手が和音記号しか書かれていない箇所が多数あります。そのまま弾くと右手だけの演奏になってしまう部分があり、特に第3楽章は右手の名人芸的パッセージばかり。

フンメルはここを、両手を駆使したヴィルトゥオーゾ的なパッセージに置き換えています。さらに第2楽章に至っては、ほぼ空欄だった伴奏をしっかり補筆。結果、全体としてより完成度の高い「協奏曲」として聴けるようになっています。
 

第二楽章比較
※第2楽章の中間部冒頭のピアノソロの左手は省略されれていましたがフンメルは補筆しています


 

当時は、譜面に書かれていない装飾や即興的なパッセージを演奏家が自然に加えていましたが、フンメルはそれを譜面化した形。スケールやアルペッジョを駆使し、より華やかで技巧的なピアノパートに仕上げています。

 


もう一人の補筆者:アンドレ版

ちなみに今日よく演奏される「戴冠式」の楽譜は、1794年にヨハン・アンドレ社が出版した初版を基にしています。ここでは自筆譜の空欄を簡易的に埋めており、音楽学者アインシュタインは「単純で無難だが、ときに不器用」と評しました。それでも基準版のひとつとして定着しています。

フンメル版はこれとは異なり、ピアニスティックで生き生きとした補筆が魅力です。


フンメルとモーツァルト協奏曲の編曲

フンメルはモーツァルトの協奏曲を7曲も室内楽版に編曲しています。編成は フルート+ヴァイオリン+チェロ+ピアノ1820年代後半から30年代初頭にかけて出版されました。

  • K.466(第20番/1827)カデンツァ付き
  • K.503(第25番/1828)カデンツァ付き
  • K.316a(第10番/18292台ピアノ版をソロ用に改変
  • K.491(第24番/1830)カデンツァ付き
  • K.537(第26番「戴冠式」/1835)第23楽章に Eingange
  • K.482(第22番/1836)カデンツァ付き
  • K.456(第18番/1830

このほかにもハイドン、ベートーヴェンらの序曲などを同じ編成に編曲しましたが、やはり一番価値あるのはモーツァルト協奏曲の編曲と充実したピアノパートでしょう。


カデンツァの問題

今回の《戴冠式》について、フンメルは第1楽章のカデンツァを書いていません。その代わり、第23楽章に Eingange(短いつなぎ句) を残しました。

私はDTM制作にあたり、「第1楽章のカデンツァをどうするか?」という問題に直面しました。モーツァルト自身はこの協奏曲にカデンツァを残していません。

そこで思い出したのが、フンメルが10代の頃に出版した 《モーツァルトのピアノ協奏曲7曲へのカデンツァ集 Op.4。ここには第26番の第1楽章用カデンツァも含まれていたのです!

つまり今回の演奏は、

  • ピアノパートは晩年のフンメルによる完成度の高い改変版
  • カデンツァは10代後半の若きフンメルの作品
    という、時代をまたいだ「フンメルづくし」の構成になっています。

おわりに

《戴冠式》はあまりにも有名な協奏曲なので、聴き慣れた方にはフンメル編曲版に違和感があるかもしれません。

しかし私は今回DTMで作りながら、頭の中で「フンメルがウィーンの劇場で、師匠モーツァルトの協奏曲を弾いているシーン」を妄想していました。そう思うと、モーツァルト直系の弟子がどんな風に補筆し、どんな響きを思い描いたのか——歴史の向こう側に触れるようで、とても楽しい体験になりました。 

 

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