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クラシック音楽とお散歩写真のブログ

座右の銘は漁夫の利、他力本願、棚から牡丹餅!!
趣味のクラシック音楽をプログラミングする事に没頭、あとは散歩中に写真を撮りまくること。

中学受験応援しています。

序. DTMの制作データ

 

今回は、フンメルが晩年に残した重要な作品《ピアノ協奏曲 変イ長調 Op.113》を打ち込んでみましたので楽曲も含めて紹介します。
昨年末(2025年12月最後の投稿)に一番人気があるであろうピアノ協奏曲 イ短調,Op.85を制作しましたが、その曲に比べると地味ですよ、正直。

でもそれ以上に抑制された感情と情熱により大人の気品あふれる魅力的な作品であり、ある意味単調作品のOp.85やOp.89よりもロマン派的です。ピアノパートの複雑さやテンポ設定が難しく、かなりの時間を要しました。後ほど参考にした演奏2種を取り上げていますが、シェリー盤は速いテンポ、ラウセン盤は非常にゆったり目のテンポでした。私のテンポ設定は両演奏の中間です。ちなみにDTMにおけるテンポ設定は何百か所にも打ち込んでます。
 
【DTM】J.N.フンメル/ピアノ協奏曲第5番 変イ長調,Op.113
 
Programed by Hummel Note
Daw&Sequencer:Dorico 5
Sounds:Note Performer 5, GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA(Piano)

 

 

1. どんな曲?:時代の変わり目に生まれた「架け橋」

 

 

この協奏曲が作曲されたのは1827年。ちょうどベートーヴェンが亡くなった年であり、音楽界が「古典派」から「ロマン派」へと移り変わる大きな分水嶺の時期でした。
出版されたのは1830年。当時のフンメルは50代に入っていましたが、ロンドンやパリへの大規模な演奏旅行を行い、この曲を引っ提げて熱狂的な喝采を浴びていました。
この曲の面白いところは、「モーツァルトの晩年作品のような気品」と「ショパンのようなロマンティックなピアニズム」が同居している点です。まさに時代の架け橋となる作品なのです。

 


 
2. ここがユニーク!:あえて「オーボエ」を入れないこだわり

 

オーケストラ作品を聴くとき、楽器の編成に注目することは少ないかもしれません。しかし、この曲にはフンメルの明確なこだわりが隠されています。それは、前作第4番ホ長調,Op.110のシンフォニックな協奏曲で使用されていたオーボエ、トロンボーンを使用していない点です。特にオーボエをあえて使わないことで、オーケストラ全体の響きを柔らかく(メロウに)し、主役であるピアノの「真珠のような音色」や繊細な装飾音を際立たせようとしたのです。
Op.85や89より地味ですがとても美しい一方でピアノパートはより技巧的に書かれています。

 


 
3. 聴きどころ:ショパンへの影響が決定的となった「第2楽章」

 

 第1楽章:Allegro moderato(変イ長調)

 

 

第1楽章は作品全体の約半分(約17分)を占める長大な楽章であり、古典的なソナタ形式です。

 

 

主題構成と展開:
冒頭の主題は、変イ長調の上昇する三和音で力強く開始されるが、直後に「変ト音(Gb)」を含む減七の和音が続き、緊張感をもたらします。
この「安定した三和音」と「不安定な減七和音」の対比が、楽章全体を貫く主要な動機的要素となっていますね。第2主題は、流麗なカンティレーナ(歌うような旋律)であり、劇的な対立よりも優美さが優先されていて、ピアノが登場すると、これらの主題は華麗なパッセージワークによって装飾され、転調や経過部では力強さを見せるものの、常に「エレガンス」と「グレイス(優雅さ)」が支配的です。

 

 

カデンツァの不在:
特筆すべき点として、この楽章にはソリストが即興演奏を行うための伝統的な「カデンツァ」の場所(フェルマータ)が設けられていません。かつて即興演奏の名手として知られたフンメルが、ここでは記譜された音符によって作品を完全に統御しようとする姿勢でしょうか。これは、協奏曲が「演奏家のためのショー」から「固定された芸術作品」へと移行する歴史的変遷を象徴しているともいえます。

 

 

またトランペットとティンパニの活躍の場は第1楽章では提示部以外ではほとんど使用されることなく、展開部後はラストの小節のみです。ただ伝わっている筆写譜は欠落も多いため、再現部の直前にいくつか補足して追加しています。

 


 
第2楽章:Romanze. Larghetto con moto(ホ長調)

 

全3楽章の中で、最も注目すべきは第2楽章の「ロマンツェ(Romanze)」です。

 

 

意外な調性:
全体が「変イ長調(フラット4つ)」の曲なのに、この楽章だけ突然「ホ長調(シャープ4つ)」という、遠い関係の調で書かれています。この色彩の変化が、はっとするような幻想的な雰囲気を作ります。

 

 

オペラのような歌:
ピアノが、まるでオペラ歌手のようにたっぷりと歌います。

 

 

キラキラした装飾:
メロディの音と音の間を、細かい音符で埋め尽くすような装飾(フィオリトゥーラ)が多用されます。

 

 

実はこれ、ショパンの《ピアノ協奏曲第1番》の第2楽章にそっくりなんです。ショパンの協奏曲も同じ「ロマンツェ」というタイトルで、同じ「ホ長調」。ショパンはフンメルのこのスタイルを徹底的に研究し、自作に取り入れたと言われています。つまり、この曲を聴くことは、ショパンのルーツを聴くことでもあるのです。

 


 
第3楽章:Rondo alla Spagnola. Allegro moderato(変イ長調)

 

しっとりとした第2楽章から一転、第3楽章は「スペイン風ロンド(Rondo alla Spagnola)」と題された、とても華やかなフィナーレです。またピアノと木管の掛け合いも美しく、平和な温かい春を感じさせます。

 

 

ただ独奏者は3連符が多く技巧的なパッセージが永遠と続けなければなりません。譜読みだけでも大変です。ピアニストのかたを尊敬します。まぁこれはDTMだから問題ありませんけど…

 

 

当時、ヨーロッパでは異国情緒あふれる音楽が流行しており、主題はカスタネットを叩くようなリズムや軽快なスタッカートが飛び跳ねます。ベートーヴェンのような重厚な戦いではなく、あくまで聴衆を楽しませる「エンターテインメント」としての協奏曲の形がここにあります。

 

 

この第3楽章も民族舞踊を主題に取り入れている点でショパンの《ピアノ協奏曲第1番》の第3楽章との類似性が指摘できます。

 


 

 

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3.お勧めの演奏

 

フンメルのOp.113は、長い間歴史の中に埋もれていましたが、近年再評価が進んでいます。

  • 古典派の整った形式美
  • ロマン派を先取りする感情豊かなメロディ
  • そして、後のショパンへとつながるピアノの技巧

 

これらが詰まったこの曲は、音楽史の「失われた環(ミッシング・リンク)」をつなぐ重要な鍵です。ハワード・シェリーといった名手たちの録音で、ぜひその優雅な世界に触れてみてください。


 

ちなみに私がこの曲に初めて触れたのが、1994年にウィーン旅行した際、ドブリンガー楽譜店でニコラウス・ラウセン(P)、児玉宏指揮、南ヴェストファーレン管弦楽団の1970年代の録音のCDでした。

 

 

 

 

この度、以前制作したJ.N.フンメル作曲『ピアノと管弦楽のための序奏と華麗なるロンド イ長調, Op.56』のDTM再編集版を公開しました。

 

今回の打ち込みデータは、約10年前に作成した1st.versionをベースに、主にテンポの微調整と音源の変更を行って全面的にリフレッシュしたものです。
1st.editはこちら

古典派の優雅さとロマン派の情熱が交差するこの作品を、より多くの方に楽しんでいただくため、作品の聴きどころを解説します。


1. 作品を理解する鍵:「ブリリアント様式(Brillant Style)」の典型

この作品のタイトルにある「華麗なる(Brillant)」という言葉と、形式を示す「ロンド(Rondo)」こそが、この曲を理解する上で最も重要なポイントです。

時代が生んだ聴衆を魅了する音楽

『序奏と華麗なるロンド』が書かれた1810年代は、古典派の端正な様式から、ロマン派の情熱的な自己表現へと移り変わる音楽史の「過渡期」にあたります。

この時代にフンメルは、聴衆を魅了するために発達した「ブリリアント様式」(華麗様式)を代表する作曲家の一人として活躍しました。

その特徴は以下の通りです。

  • 輝かしいパッセージ: ピアノが素早い音階(スケール)やアルペッジョ(分散和音)を多用し、きらびやかに演奏されます。

  • 技巧の誇示: 高音域でのきらめくような音型、トリル、跳躍など、当時のピアニストの高度な技術を披露することに焦点が当てられています。

  • 優雅さと明快さ: 師であるモーツァルトから受け継いだ古典的な優雅さや、旋律の明快さも保たれており、単なる技巧の羅列で終わらない品位を備えています。

 

2. 楽曲の構造(ロンド形式):技巧と旋律の繰り返し

ロンド形式は、特定の主題(リフレイン:A)が、異なる挿入部(エピソード:B, Cなど)を挟みながら何度も回帰する形式です(例:A-B-A-C-A...)。この作品は、華麗なピアノ協奏曲として構成されています。

楽曲構成のポイント

構造特徴と聴きどころ序奏 (Introduzione)オーケストラの荘厳なファンファーレに始まり、装飾豊かな美しい緩徐楽章となっています([00:09])。主題 (A)静かなユニゾンから、すぐに生き生きとしたリズミカルな主題で始まります([05:29])。この主題が戻ってくるたびに、聴き手は安心感を覚えます。第二主題木管楽器のアンサンブルとピアノが優雅なかけあいを披露。ピチカートに乗って民族的な雰囲気のメロディーが登場します。挿入部 (B, C)主題とは対照的に、短調を用いたり、より叙情的な旋律が登場する部分です。しかし、この作品では挿入部でさえも、ピアノの華麗な技巧を披露する場となっています。コーダ (終結部)最後は、オーケストラとピアノが一体となって熱狂的に盛り上がり、輝かしく曲を閉じます

 

3. 歴史的な位置づけ:フンメルの個性が確立された一作

この作品は、単なるピアノの練習曲や小品ではなく、オーケストラを伴う本格的な協奏的作品(コンチェルタンテ)としての地位を確立しています。

フンメルは、モーツァルトの古典的な協奏曲の様式を受け継ぎつつ、そこに新しい時代のピアニズム(ピアノ演奏技術)を盛り込みました。

特にこの『序奏と華麗なるロンド Op.56』は、フンメルがこれまでに書いてきた初期のピアノ協奏曲(未出版の処女作や第1番、ト長調Op.73など)とは異なり、よりフンメルらしい華やかさに溢れています。

「歌うような美しい旋律」「華麗な装飾音」の組み合わせには、その後のフンメルの特徴が明確に現れており、彼の個性が最初に確立された協奏曲の一つといえるでしょう。


DTM制作ノート&楽曲情報

今回の再編集版の制作データ

  • 制作環境

    • Sequencer:SSW10 Lite

    • Score creation:Music Pro Windows Plus

    • Sounds:GARRITAN PERSONAL ORCHESTRA5 / ARIA

動画に表示される楽譜(スコア)はMusicProの譜面画面を使用していますが、これはオリジナルの楽譜を正確に打ち込んだものではありません。

私はこのソフトをMIDIデータ入力用として使用しており、「楽譜通りに正確に記譜すること」よりも、「ダイナミクスやテンポの指示を、できる限り自然な演奏のように聴こえるようにプログラミングすること」に重点を置いて制作しています。