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第122話 モンタージュ



「武くんについて言う前に、まず、斉藤さんを図にしてみましょう。」

オフィスの時計は、ちょうど7時をさしていた。
正確な腹時計を内蔵しているかのように、
浅井のお腹がグーッとなった。

「ちょっとお腹すいてきたので、これ食べながら
やってもいいですか?」

浅井は、二つのカップ焼きそばを涼子の目の前に
出してニッコリ笑った。

「はい。頂きます。お金払いますね・・・。」

その瞬間浅井は、屈託ない笑顔で、お金を出そうとする
涼子を制止した。
カップ焼きそばを食べながら、浅井は涼子に
いろいろな質問をした。

「それでは、武くんを絵で表したように、
斉藤さんも今から絵に描いていきますので、
“一緒に”描いていきましょう!」

「はあ・・・。」

浅井は、まるでモンタージュ写真の似顔絵師の
ように、涼子に質問をしながら、描いては消し、
描いては消しを繰り返しながら、一枚のイラストを
完成させた


続く・・・・・・

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第121話 受け入れ態勢



「私は、彼の状態を、彼に見せてあげただけなんです。」

「いったいどうやって・・・?」

「知りたいですか?」

「はい。」

「・・・・・さっきまで僕のこと変なこと言い出す人
だなって思ってましたよね?」

浅井は涼子の本音を見抜いて、からかって言った。

「・・・正直(笑)。」

「わかりました。今の涼子さんなら、伝えられると
思います。」

浅井は、涼子が受け入れ態勢に入ったのを
確認すると、ペンと白紙のコピー用紙を取り出した。

そして、紙の左上に“斉藤涼子”とお世辞にもきれいとは
言えないが、力強い字で書いた。

「武くんについて言う前に、まず、斉藤さんを図にしてみましょう。」


続く・・・・・・

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第120話 レントゲンに写る癌



「武くんに、引きこもりから立ち直るために
どんなアドバイスしたんですか?」

涼子は、聞きたいことだけ聞いてさっさと帰ろうと
切り出した。

「アドバイス? 引きこもっている人がアドバイス
なんて聞くんでしょうか?」

逆に質問されて涼子は一瞬戸惑った。

「じゃあ、どうして・・・」

「例えば、あなたが癌に侵されているとしますよね?」

「はあ。」

「まだ小さな癌です。」

「・・・。」

また、何を言い出すんだ、と涼子は心の中で思った。

「それに気づかず放っておくと、どんどん癌が広がって
いきます。そして、手遅れになる・・・。

しかし、癌が小さいうちにレントゲンで癌が見つかったら
どうしますか?」

「治療してもらいます。」

「でしょう? 人間は、自分の状態がはっきりわかって、
このままだとヤバいって、ほんとに思わないとそこから
脱出しようと思わないんですよね。」

「そうですね。」

「私は、彼の状態を、彼に見せてあげただけなんです。」

「いったいどうやって・・・?」



続く・・・・・・