(はじめてこのブログをご覧になる方は、第1話 よりお読みください。)


第57話 シュミレーション


(プレゼンは、ほんの小さなほころびから
一気にひっくり返るから、相手の最終的な
合意が得られるまでは絶対油断するな。)

という拓郎の言葉を思い出し、志保子は
再び気を引き締めた。いよいよ大詰めだ。


志保子:「ありがとうございます。では、
次に、収益シュミレーションについてお話します。」

浅井:「ああ、そうだね。」


浅井は、あやうく今までの話だけで満足
してしまうところだったが、肝心の「お金」
の話を志保子から振られて、正気に戻った気がした。

志保子:「私の給料分と所長が働いた分、
利益が出ないと意味ないですよね。」

志保子は、今一度自分を追い込むか
のようにそう言った。

浅井:「うんもちろん。」

志保子:「だから、何をいくらでどの
くらい売るかをシュミレーションして
みましょう。
まず通学講座ですが、カリキュラムは
合計で、だいたいどれくらいの時間か
決まってますか?」

浅井:「うーん。だいたい1回5時間で、
10日間くらいかなって考えてる。」

志保子:「つまり、50時間くらいです
ね。通学だと受講料をいくらくらいに
するのが妥当だと思いますか?」

浅井:「通学だし・・・15万円くらいが
相場かなあ。」


志保子:「では、20人集まったとして
300万円ですね。なら、広告費に
50万円くらいかける必要があります。」

浅井:「ちょ、ちょっと待って!広告に
そんなにかけるの?一人も来なかっ
たら大損だぜ。」

志保子:「大損はしません。小規模で
実験してからしか広告はしません
から。実験には、
5~6万しかかけないからご安心
ください。」

浅井:「それでも集らなかったら?」


志保子:「その点は大丈夫です。
もしそうなったら自腹を切ります。」

浅井:「いや、お金の問題じゃなくて、
受講生が集らなかったら通学講座が開けないじゃん。」

志保子:「最悪、モニターとして参加してもらいます。」

浅井:「モニターか。なら、集らなかった
らというよりも、最初からモニター募集
した方がいいかもしれないな。」


思いがけなく浅井が乗ってきたので、
志保子は思い切って言った。

志保子:「はい!実は、収益のメインは
通学講座ではないので、できたら通学
は、モニター料金として低料金でお願い
したいと思っていたんです。
そうすれば、広告費を通信教材の方に
使えますから。」


浅井:「まあ、通学する受講生のことを
考えると、その方がいいかもな。」


志保子:「はい!」


浅井:「で、その後はどうなるの?」


志保子:「教材ができたところで、
通信講座を5万円くらいで販売します。
50時間分なら、2時間のDVDで20本くらいになりますよね。

それなら受講料の5万円という金額は
安いと思いませんか?
で、それを月に10個売れば、50万円。
年にすると600万円です。」

浅井:「600万か~。それだけ売れれ
ば、ロビンちゃんに給料を300万円
払ったとしてもまだ利益があるな。」

志保子:「いえいえそれはうまくいったら
の話ですから。でも、話には、まだ続きが
あるんです。それだけで満足して頂いては
困ります(笑)。」




続く・・・・・・
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第56話 ビックリ箱


すると志保子は、浅井の気持ちを察したかの
ようにやさしく言った。


志保子:「でも、所長。だんだん大きな話に
なってしまいましたが、検定試験の話は、
あくまでもうまくいったらの話です。
とりあえず、所長のメソッドを“通信講座”
というカタチにして、世の中に広めていく
ことが大切だと思います。」


志保子は、壮大なプランを、浅井が現実的に
考えられるレベルに落として、浅井の不安を解消した。

この子は、俺の気持ちを読みながら話を
進めている・・・
浅井は、一本とられたなと思いながら先を促した。


浅井:「通信講座か・・・。具体的には?」


志保子:「まずは通学講座を開くんです。」


今日の彼女はどうしたんだろう。
まるで彼女と話すたびに、ビックリ箱を開けている気分だ。


浅井:「それはどういうことかな?」


志保子:「まずは実績作りのために、
通学講座を開くんです。そして、その様子
をビデオに撮って、講義DVDを作ります。」

浅井:「なるほど。」

志保子:「通信教育の場合、テキストだけ
より、講義DVDがあった方が、より正確
に伝わるし、わかりやすくなりますよね?」

浅井:「うんそうだね。より臨場感も出るし・・・。」

志保子:「それに、動画の解説があった
方が、受講生の満足度も高まるんです。」

浅井:「なるほど。」

志保子:「あと、先に通学講座をやって、
その後に通信講座を作るという順番で
やると、販売までのスケジュールが
短縮できるんです。」

浅井:「通学講座は後伸ばしにできないからね。」


志保子:「はい!それに、その順番だと、
通信講座の教材を作る際も、コンテンツ
流れがすでにできているので、あとは
それをテキストやDVDのカタチにすれば
いいだけだから効率的にできるんですよ。」

浅井:「つまり、通学講座の内容を教材に
落とすだけ・・・。そういうことだね?」

志保子:「そのとおりです!」


確かに彼女の言うやり方で講座作りを
進めれば、短期間でいいものができるだろう。浅井は、舌を巻いた。

志保子:「今まで聞いて頂いたのが私の
提案です。内容については、いかがでしょうか?」

浅井:「ビックリしたよ。想像以上に
良かった。俺が考えていたプランが
素人考えだったことがわかった。」

志保子:「ありがとうございます。
では、内容についてはだいたいOKということでよろしいですか?」

浅井:「申し分なし!」


志保子はほっとした。しかし、

(プレゼンは、ほんの小さなほころびから
一気にひっくり返るから、相手の最終的な
合意が得られるまでは絶対油断するな。)

という拓郎の言葉を思い出し、再び気を引き締めた。いよいよ大詰めだ。


志保子:「ありがとうございます。では、次に・・・」



続く・・・・・・
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第55話 本題



浅井が興味をしめしたところで、志保子は
次のカードを切った。

志保子:「で、ここからが本題なんですけど・・・」

浅井:「今までのは前フリか・・・」


苦笑いする浅井に対して、
志保子は笑顔でうなづいた。


志保子:「いくら教材を購入して学んでもらって
も、スキルとして身につかないと意味ないです
よね?」

浅井:「教材もそこに一番気を使って作ってる
んだよ。多くの人は、知識を得るだけで満足
してしまうからね。」

志保子:「確かに私もそういうことよくあります。
所長の人間学のメソッドついても、
はじめて聞いたときは半信半疑だった
けど、実際に使ってみて“ほんとに自分って
変われるんだ”って心底わかりました。」

浅井:「ありがとう。でも、ロビンちゃん
みたいにきちんと日常で使ってくれる
人って結構少ないんだよ。
まあ、カウンセラーになりたいような人は、
熱心にやってくれると思うけど。」

志保子:「そうですね。そこで、検定試験を作る
んです。今まで学んだことが、どの程度スキルと
して身についているか、検定試験があれば、
より意欲がわくし、客観的に実力がわかりますよね?」

浅井:「検定試験・・・。なんだかでっかい話になって
きたな・・・。」

浅井は困惑した。自分のメソッドに自信は
あったが、まさか志保子がそんなに大々的な
事業案を考えてくるとは夢にも思わなかったからだ。

浅井は元来欲のない男なのだ・・・。

すると志保子は、浅井の気持ちを察したかの
ようにやさしく言った。



続く・・・・・・