広島大学病院 乳腺外科の笹田です
個人的には、悩ましい状況はない方が嬉しいのですが、
大学病院で、がん診療連携拠点病院ということもあり、なかなかそういうわけにもいきません。
患者さんそれぞれに印象に残ることがあるのですが、
病気が悩ましい状況の方は、それはそれで印象に残ります。
比較的最近では、
・腋窩リンパ節に病気があるけど、どんなに検査しても乳房に病気がみつからない
・びっくりするほど新婚ほやほや
・妊娠中
病気のことは気になるけど、他にも気にすることが山積みです。
そして、どうするか決めるのに、時間をかけられないこともあります。
後ろ2つの状況は、
これから子供を作りたい
元気な子供を産みたい
という気持ちが強いと思います。
女性は、「子」を優先することが多い印象ですが、
男性は、「子」は大切ですが、「妻」の方を優先することが多い印象です
患者さん、周りの人のいろいろ絡み合うさまざまな思惑を両立する方法はあるのでしょうか?
乳がん患者の妊娠出産と生殖医療ガイドライン
というものがあり、参考になります。
2017年版は『手引き』という扱いでしたが、2021年版から『ガイドライン』となり、重要性が高まっています。
とはいえ、ここに書いてあることだけですべてが解決するわけではありません。
個々のいろいろな状況のなかで、『何が正しいのか分からない』ことは少なくありません。
そもそも、『正しい』のモノサシが何かも分かりません。
私たちのスタンスとしては、
すぐに諦めることはしない。
自分でできないことは、人の助けを借りる。
あれもこれもある中で、うまくすれば、手に入るものは1つではないかもしれません。
抗がん剤治療をしても、子供をつくることはできるかもしれません。
妊娠中でも、「児」の安全が確認されている抗がん剤があります。もちろんダメな薬もあります。
そんななかから、治療の方法と順番を決めていくわけですが、結果が保証できるわけではありません。
最終的に大切なのは、患者さんが、家族が、「よかった」と思えるかどうかだと思っています。
医療に限りませんが、いろいろ苦労する状況があっても、「よかった」と言ってもらえると、やっぱり嬉しいです。
私は臆病なので、なかなか直接聞くことはできませんが。
正しいと思って行ったことが、本当に正しいとは限りませんので、ときどき立ち止まって考えてみることは大切に思います。
おでかけのとき、いただきもののリュックを背負って、嬉しそうに歩いています。
こういうのも印象に残りますね。
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