広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

広島大学病院乳腺外科スタッフが、乳がんのこと、日常のこと、感じたことなどを交代で綴っていきます。ぜひ、気軽にコメントもいただければうれしいです!
注:このブログは広島大学公式ブログではありません。発言内容は個人の見解であり、広島大学とは一切関係ありません。

皆様こんばんはイチョウ月見
 

私も くらしき に行ってまいりました!

 

中四国地方の皆様との交流をさせてもらい、

毎度ありがたい機会だな〜と思っている網岡愛ですにっこりハート

 

 

本格的な観光はできませんでしたが、帰りに一緒になった桃子先生と、ティータイムは楽しめて帰れましたコーヒー

 

 

いや〜食欲の秋ですね🍁

 

ついつい美味しいものに手が伸びてしまうのは仕方がない。。。

 

という言い訳はグッと我慢して、今回は乳がんと「肥満」のお話です。

 

🟠 肥満があると、乳がんの再発リスクが高くなる。

この関係は、これまで患者さんを対象とした多くの研究で確認されてきました。乳がんの治療後も、体重が増えすぎないように気をつけることは大切です。

 

でも、ここで気になるのが、

 

「どうして肥満が、乳がんの再発に関係するのか?」

 

ということです。

 

ホルモンや炎症など、関係する仕組みは少しずつ分かってきていますが、まだ解明されていない点もたくさんあります。

 

そんな中、その理由を考える手がかりになりそうな研究が、今年9月、科学雑誌 Science に発表されました🔍

 

注目されたのは、乳房の脂肪細胞が出す物質が、肥満によってどう変わるか注意です。

 


◎ 注目されたのは、脂肪細胞の「働き」

乳房には、母乳をつくる乳腺と、その周囲を包む脂肪があります。

この脂肪をつくる「脂肪細胞」は、肥満のある方にも、ない方にも存在する、体に必要な細胞です。

 

一方、「肥満」は、体全体に脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。

 

今回の研究は、肥満のある状態と、ない状態で、乳房の脂肪細胞が分泌する物質にどんな違いがあるかを調べたものです。

 


◎ 脂肪細胞が、がん細胞を壊す物質を出していた

研究チームが脂肪細胞の分泌物を調べると、乳がん細胞の増殖を抑える脂質が見つかりました。

 

名前は、「9S-HODE」。

 

少し覚えにくい名前です凝視

 

この物質は、乳がん細胞にフェロトーシスという細胞死を起こしていました。

 

簡単にいうと、鉄が関わる反応によって、細胞膜などをつくる脂質が強く酸化され、乳がん細胞が壊れる仕組みです。

 

乳房の脂肪細胞が出す物質に、周りの乳がん細胞の増殖を抑える働きがあることが、実験で示されたということです。

 


◎ 肥満があると、この物質が少なくなっていた

肥満のあるマウスでは、乳房の脂肪細胞が出す9S-HODEが少なく、腫瘍で起こるフェロトーシスも減っていました。

 

そこで、肥満マウスの腫瘍に9S-HODEを直接投与しました。

すると、腫瘍の増殖が抑えられました物申す

 

脂肪細胞が何を分泌するかによって、がん細胞への影響が変わる。

 

肥満に伴って、がんを抑える物質が少なくなることも、肥満と乳がんの関係を説明する仕組みの一つかもしれません。

 


◎ ヒトでは、何を調べた?

この研究では、ヒトの乳房から採取され、研究に提供された「白色脂肪組織」も調べています。

白色脂肪組織とは、乳房の中で脂肪を蓄えている部分のことです。

 

研究チームは、その組織に含まれる脂質の量を測定しました。

つまり、測ったのは血液中の量ではなく、乳房の脂肪組織そのものに含まれる量です。

 

すると、肥満の指標であるBMIが高い人ほど、組織中の「9-HODE」が少ないという関連が認められました。(9-HODEは、今回注目された9S-HODEを含む脂質の呼び方)

 

さらに、別の実験では、患者さん由来の乳がん細胞を立体的に育てた「オルガノイド」に9S-HODEを加え、増殖が抑えられることも確認しています。

 

これらの結果は、人でも、肥満に伴う乳房の脂肪組織の変化が、がんの育ちやすさに関係する可能性を示しています。

 

ただし、今回の研究自体は、人の再発を追跡したものではありません。また、減量によってこの物質が増え、再発が減るところまでは確認されていません。

 

人を対象とした研究で分かっている「肥満と再発リスクの関係」に、今回の研究が、仕組みの面から新しい手がかりを加えた、と考えると分かりやすそうですにっこり

 


◎ 乳がんのタイプによって違う?

乳がんには、ホルモン受容体陽性、HER2陽性、トリプルネガティブなど、異なるタイプがあります。

 

今回の研究では、これらの異なるタイプの乳がんを使った実験でも、9S-HODEの働きが確認されています。

 

一方、どのタイプに「より」効果があるのか、同じタイプでも効きやすさに違いがあるのかは、今後の研究課題です。

 


◎ 新しい治療につながる?

研究者たちは、9S-HODEを乳がん治療に利用するための特許コインを出願しています。

 

現在はまだ、患者さんに使える治療薬になっているわけではありません。

 

人での効果や安全性、必要な量をどう腫瘍に届けるかなど、これから確かめることがあります。

 

日々の診療では、無理なく適正な体重を保つことを大切にしながら、研究の進展にも注目していきたいところです PC地球

 

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秋深まる今日この頃、各地でスポーツのイベントが開催されています紅葉

 

広島の小学生も陸上競技会で奮闘していました  晴れ日本国旗

 

若者が頑張る姿は、見ていて気持ちの良いものですね!!

 

 

心地よい秋風を感じられる間に、ぜひ身体を動かして、

気持ちのよい日をお過ごしくださいクローバー

 


参考論文
Curtin MC, et al.
Lean adipocyte oxylipin signaling restrains breast cancer through ferroptosis.
Science. 2026;393.