おはようございます
広島大学病院乳腺外科の角舎です
暑い日が続きます
趣味のカヤックフィッシングのおかげで、既に真っ黒になり皮がむけてしまいました
広島はタイがよく釣れますので、それを狙って「タイラバ」という仕掛けを海の底で上下しながら釣ります。単純作業なんですよ
五島列島で始まったらしく、広島に限った仕掛けではないようですけど・・・
先週、知り合いのドクターと出かけた釣果がこれ!
すごいでしょう!


こんな感じのカヤックで釣っています
倉橋島、蒲刈、大崎島あたりでこの青と緑のカヤックが釣ってたら私です
さて、本日のタイトル
「乳がん術後のフォローアップに腫瘍マーカーの測定は推奨されるか?」
ですが、腫瘍マーカーについては定期的にブログに取り上げています。しかし、手軽にできる検査なのか「いつでもなんでも相談室」には定期的に質問をいただいていますので、また簡単に説明させていただこうと思います
ホルモン療法を行っている方などは肝機能障害などの副作用があるので、定期的に血液検査をします。その時に腫瘍マーカーを一緒に出すことが多いのですが、先日、ホルモン療法が終了して1年に1回のフォローになっているのに腫瘍マーカーの検査を希望される方がおられました。まあ、2時間くらいまでは結果が出ますし、長年しているとしないと不安なのでしょうね
名前も「腫瘍マーカー」というだけあって、再発を敏感に検出することができると考えるのでしょう
乳がんでは、CEA, CA15-3, NCC-ST439などの腫瘍マーカーが保険適応となっており、特に前二者は代表的なものです
広島県では、フォローアップには基本的に3ヶ月以上間隔を開けて二つの腫瘍マーカーまでとなっています
各腫瘍マーカーが再発時に上昇している確率は、だいたい60〜70%であり、決して100%ではありません
術後フォローアップ検査の目的は「生存期間を延ばすこと」です。
がんの種類によっては、「遠隔転移を早く見つけること」=「生存期間を延ばすこと」であることもあります。大腸がんなどは肝転移を早く見つけて切除すれば根治が期待できますので、そのような場合は「出来るだけ再発を早く見つけること」が大事です。
一方、乳がんの場合「再発を早く見つけること」と「生存期間を延ばすこと」は残念ながら同じではないのです。術後フォローアップ検査としてCT検査が挙げられていないのも同様の理由からです。もちろん、我々も気持ち的にはできるだけ早く遠隔転移を見つけてあげたいという気持ちがありますが・・・
しかし、局所再発については別で、早く見つけることが生存期間を延ばすことに繋がるので、ガイドラインでも「触診」と「マンモグラフィ」は術後フォローアップに必要なこととされています
これまでのエビエンスでは、腫瘍マーカーを測定して症状が出るよりも早く再発を見つけたとしても「生存期間を延ばすこと」にはつながらなかったという結果ですので、現在は腫瘍マーカーに対して我々、医療従事者は過度に期待はしていません。定期的な血液検査と一緒に提出している、という感覚です
しかし、腫瘍マーカーよりももっと早く再発を見つけられて治療を開始出来たら生存期間は延長しないのだろうか?術後化学療法は小さな転移を無くしてしまうので、再発は減りますし予後も改善しますからね。
現在は、マイクロRNAやcirculating tumor cell(血液中のがん細胞そのもの、もしくはがん細胞の遺伝子の一部)など、微量ながん細胞の断片を見つけらるようになってきていますが、それを早く見つけたから生存期間が延長したというエビデンスはまだありません
じゃあ、一体どうしたらいいのか?
それは
「早期発見」
「術前、術後の治療を適切に行うこと」
ということに尽きると思います
とにかく、乳がんの初期治療をどうするか、ということは非常に大事なことで、これが全てと言ってもいいくらいです
自分の主治医としっかり話し合い、また自分の価値観とも照らし合わせてとにかく納得のいく治療を選択してもらいたいです