お天気のいい日には日光を浴びる!(乳がんの手術の準備はどんなことがありますか?) | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

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広島大学病院乳腺外科スタッフが、乳がんのこと、日常のこと、感じたことなどを交代で綴っていきます。ぜひ、気軽にコメントもいただければうれしいです!
注:このブログは広島大学公式ブログではありません。発言内容は個人の見解であり、広島大学とは一切関係ありません。

こんにちは、最近車の運転距離が長くなると右足のすねの横がつります、鈴木です照れ

今日はとんでもなくいいお天気でしたね晴れ
私も本日は外に出て15分は日光を浴び、ビタミンDを活性化ビタミンDにして喜んでおります。本当か自分では調べておりませんが、ビタミンDはコロナの重症化を防ぎ、がんを防ぐなどの情報を小耳に挟みまして。
あとは、梅雨の最中ではございますので、これからどこかのアニメ映画の様にずっと雨になってしまったら困りますので雨

いえこれは冗談ですが 笑)、今のうちに太陽光を浴びておきます。

 

それにしても、雨が多く土砂災害が警戒されている地域の方は、どうぞお気をつけていただければと思います。

私は大学院生で研究もしているのですが、最近安定して細胞が育っているのが嬉しいことです(大学院4年目でやっとではございますが)。ご指導いただいている先生には少し前に「本当に上手になったね」と言っていただいて、顔には出しませんでしたが内心嬉しすぎて小躍りしそうになりました。まだ課題は山積みですが、なんとか取り組んで行きたいと思っています。

 

本日の写真です。

広島大学病院のカルテは毎日今日の花がお知らせされています。

先日のカルテ表示ですが

お見苦しいですが。

「ぴえん草」かと目を見張りましたがキョロキョロ、「ひえん草」でした真顔

こんな見間違いするなんて私も若いわ、と一人自分にツッコんでおりました。

ちなみにひえん草はこんな植物の様です。

 

こちらからお借りしました。

飛燕草と書くのですね。そういえば先日雨の日にもはや低く飛ぶどころか道ばたに止まる燕をみましたヒヨコ

そろそろ燕が巣作りする時期なのですね。

って、あれ?カルテには淡紅色と書いてありますね、まあ、よくわからなかったのでいいことにします波

本日は乳がんの手術の際の準備について書いてみようと思います。

乳腺外科は「外科」と名のつく通り、患者さんが手術を乗り越えられる場面が多い科になります。
残念ではありますが、手術が基本的に適応ではないStageIV乳がん以外の患者様は現時点ではほぼ全員手術を経験されますのでその割合は乳がんにおいて96%ほどになります。

少し話が脱線しますが、手術をしなくてもいいのではないのかという研究がなされている乳がんは二つあって
小さな非浸潤がんと術前化学療法で癌が消えてしまったHER2乳癌の方になります。
小さな非浸潤がんのかたはタモキシフェンというホルモン剤を内服する必要があり
術前化学療法の方は術前化学療法のあとにエコーで癌の残存がないこと(残存と区別がつかない線維化がある場合に針生検が必要です)と放射線治療が必要となっています。
どちらも、これまでのデータを元にして、「大丈夫と思われる」という根拠を揃えて、しかし結果が確定はしていないので調べられています。
外科医としては、手術が少なくなるのは仕事ななくなるようで複雑な心境ではありますが、乳腺外科の患者さんからすれば手術はないほうがずっといいと思いますので、これからもこの様な検討がしっかりされることを希望いたします。
また、この治療に沿って現在治療中の方は、順調に運ばれますように応援しております。

さて、手術については準備することがたくさんあります。
①    検査結果から手術へと進む治療の大まかな流れをご理解いただくこと
②    術式を決めていただくこと
③    術前検査を受けていただくこと(血液検査、心電図、胸部レントゲン)
④    手術の日程に合わせてご自身のスケジュールを組んでいただくこと
⑤    同意書の説明を聞いてご理解いただくこと
⑥    麻酔科の受診をしていただくこと
⑦    入院説明をご覧いただくこと
⑧    入院に必要なものを揃えていただくこと
(術後に放射線治療が必要だとわかっている方は、術前に放射線治療科に受診いただくこと)


「乳がんです」と診断されてそれだけでも気持ちがいっぱいになってしまうのに、これらたくさんのことを落ち着いて全てこなすのは本当に大変なことだと思います。

それぞれの準備について、簡単にまとめさせていただければと思います。
①    検査結果から手術へと進む治療の大まかな流れをご理解いただくこと
まず、他の臓器への転移がない方の多くは手術から治療が始まることになります。
しこりが大きいけれど3cm以下で、部分切除を選択する方は手術前の抗がん剤の対象です。
また、腋窩リンパ節転移がある方で、ホルモン陽性乳癌ではないかたの多くは化学療法から始めます。基本的に手術の前に抗がん剤をしたほうがいいかどうかは主治医の提案と患者さんの同意によって決まります。
腋窩リンパ節転移がある時に抗がん剤をする目的には、画像には現れないけれど飛んでしまっている乳がん細胞があった場合には抑えることもあります。
抗がん剤が必要な方でも、手術の前にするか後にするかは選択することもできます。
手術のあとに抗がん剤をしても手術の前に抗がん剤をした方と生存率は同じであることがわかっています。ですから、部分切除をするためにしこりを小さくしておきたいという方以外であれば抗がん剤は手術の前でもあとでもいいということです。
検査結果が出たら、基本的にあまり期間を開けずに治療することが望ましいとされています。病状によっては、あいた期間で進行してしまうことがあるからです。
検査結果や治療に少しでも疑問を感じたら、説明の時にいつでも聞いていただけたらと思います。

②    術式を決めていただくこと
術式を決めるのは、皆様とても悩むことだと思います。
どんな仕上がりになるのか、変形してしまうのではないか、これからの生活に影響があるのではないか、いろいろご心配になると思います。
ここからは主な術式ごとにまとめてみます。
乳房切除は明らかに切除したことがわかる術式になります。大胸筋の上にある乳腺組織と脂肪組織を全体的に切除するからです。見た目の問題の解決法は、再建術(人工乳房・自家組織)や、少しお手間ですが健側に合わせて作成した偽乳房をつけて温泉に行かれる方もいらっしゃるとお聞きします。乳房切除の後には基本的に放射線が必要ありませんが、リンパ節に転移があった方は、乳腺は全部とっているものの再発を予防するために胸壁と鎖骨上に放射線治療が勧められます。
乳房部分切除はしこりが3cm以下の方の選択肢となります。しこりの周囲に余裕を持って摘出するため、しこりの大きさによって摘出する大きさが異なります。もともとの乳房の大きさは個人差がありまして、部分切除より乳房切除+再建の方が綺麗になる方もいらっしゃいます。部分切除はどうしても摘出に伴う変形の可能性がありますが、できるだけ目立たないように周囲の乳腺を寄せるのが一般的です。
乳房の再建術には人工乳房と自家組織による再建があります。
手術の回数は1回(乳がんの手術と同時に再建手術終了)と2回(乳がんの手術の時に拡張器:ティッシュエキスパンダーを挿入しておき、2回目の手術でインプラントに入れ替える)がありますが、2回に分けて行うかたが多いです。1回での乳がん+再建手術をご希望になられても、リンパ節の転移が疑われるときや進行度によって、再発率が高まる危険性があるときは特におすすめできないことがあります。
人工乳房の利点は手術が比較的簡便であることと丈夫であること、手術の負担が軽いことです。欠点は人工物なので硬いこと、耐用年数が10〜20年であることなどです。自家組織による再建の利点は仕上がりが自然であること、放射線治療をしても大丈夫なことなどです。欠点は手術の入院期間が人工乳房よりも長いこと(2週間ほど)、血管が詰まると脂肪全体が死んでしまうことなどです。
再建の適応は、体全体のバランスをみながら、あとはそれぞれの欠点と利点を考えながら形成外科の先生と決めていただくことが多いです。

③    術前検査を受けていただくこと(血液検査、心電図、胸部レントゲン)
全身麻酔をかける前に、問題がないか確認します。この時問題があれば、循環器や呼吸器の先生、糖尿病の先生やほかの科の先生にご紹介になることがあります。

④    手術の日程に合わせてご自身のスケジュールを組んでいただくこと
手術日はそれぞれの方で初めにお伝えする手術日があります。手術日はときに流動的で、ほかのかたのキャンセルに伴い繰り上げできることもあります。お仕事がお忙しい方などは調整がなかなか難しいとは思いますが、可能な範囲でご検討いただければと思います。
手術日が思ったよりも先だなという印象を持たれることがあるかと思いますが、乳癌は比較的穏やかな癌で、数年かけて今に至っているものが多いので、手術日までに病勢が進行してしまうのではないかということは、主治医が心配するほどの病状ではない限りまず大丈夫です。

⑤    同意書の説明を聞いてご理解いただくこと
同意書はたくさんあります。手術の同意書(乳腺外科・形成外科・麻酔科)、病理の同意書、血液検査研究の同意書、被爆研究のための同意書などです。
簡単にそれぞれご説明すると、手術の同意書は手術の術式・麻酔法の同意書です。
病理の同意書は摘出した組織の取り扱いに関する同意書です。
血液検査研究の同意書は、最新の遺伝子研究技術を用いた研究のために血液検査をご提案する同意書です。
被爆研究のための同意書は、広島ならでは、被爆とがん・遺伝子の関連の研究のための摘出組織の取り扱いに関する同意書です。被爆した方としていない方ともに対象となります。
血液検査研究の同意書に捕捉をすると、すでにこの研究結果として血液検査のみで乳癌、食道癌、肺癌が診断できるのではないかという研究結果が出ています。もう少し研究が進んでこれが一般的になれば、痛みを伴うマンモグラフィーをする必要がなくなることや、がん検診のために多額の出費が必要なくなることが期待されます。

⑥    麻酔科の受診をしていただくこと
麻酔科の受診は、通常のかたですと1回、全身麻酔に何か影響がありそうな既往のある方は2回ほど受診していただくことがあります。

⑦    入院説明をご覧いただくこと
入院から退院まではクリニカルパスという詳細なスケジュールに沿って過ごしていただきます。大まかにご説明すると、当院乳腺外科では手術前日の入院が一般的です。センチネルリンパ節生検をする方は手術前日か手術当日に放射性同意元素の入った注射を手術する側の乳輪の近くに注射します。とても、痛いと言われている注射です。それから、手術当日は絶食、飲水は決められた時間まで可能です。手術後は基本的にベッド上安静で、2時間は仰向けです。4時間経つと飲水が可能になります。手術翌日には朝ごはんがきます。そして歩けます。久しぶりに歩くこともありふらつくことがありますので、転倒されないように十分お気をつけください。手術翌日からは足腰が弱くならないように適度に動いていただくことがよろしいと思います。ドレーンの量が50mlよりも少なくなったら抜去でき、抜去できた翌日には退院となります。入院の説明の中にはほかにも必要な物品などがありますのでご確認ください。

⑧    入院に必要なものを揃えていただくこと
先ほどの入院説明に沿って、入院生活に必要な物品と、同意書や入院案内などの書類一式をご準備いただければと思います。

 


さて、長くなりました。

一通り確認して参りましたが、どの手術もきっとそうだと思いますが、本当に患者さんにとっては大変なことの連続ですね。


最後に
「乳がんです」と診断されて皆さん心配になることはたくさんあると思いますが、例えば以下の様なことが挙げられています。
皆様も当てはまることがありますでしょうか。
・乳がんに伴う症状はどんなものか
・どんな治療をするのか
・手術の後、傷や見た目はどの様になるのか
・死亡率はどのくらいなのか、どのくらい生きられるのか
・仕事場にはどのように説明したらいいのか
・保険会社にはどの様に説明したらいいのか


このような悩みを抱え続けることは、慢性的なストレス、不安、うつ病の原因となることがあります。悩みを抱えないように、少しでも気になったら主治医に聞いていただけると幸いです。がん相談室など適切な相談窓口もご案内できると思います。
精神的な問題を根本的に解決する方法はいくつか挙げられていて、その中に対面でのカウンセリングやグループでの会話など、とありました。これをみて改めて、毎月行われているピンクリボンの会の参加は、乳癌患者さんにとってとてもいいのだと思いました。
特に落ち込む時や不安が強い時には、資格のある心理学者との個々のセッションが、思考と行動のパターンの理解と修正に役立つとされています。必要に応じて心理カウンセラーの先生とも連携できるとありがたいと思います。

これからも入院して手術を経験される患者様が少しでもご不安なく過ごしていただけるように、継続して勤めて行きたいと思います。

それでは、本日も皆さまにとって実り多い1日でありますように。

鈴木