抗がん剤の副作用~しびれはなぜ起こる?~ | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

広島大学病院乳腺外科スタッフが、乳がんのこと、日常のこと、感じたことなどを交代で綴っていきます。ぜひ、気軽にコメントもいただければうれしいです!
注:このブログは広島大学公式ブログではありません。発言内容は個人の見解であり、広島大学とは一切関係ありません。

こんばんは

広島大学病院 乳腺外科の笹田です。

 

タキサン系の抗がん剤で、手足のしびれが出て困った方は多いと思います。

この嫌なしびれはなぜ起こるのでしょうか??

しびれは、神経に由来する症状ですが、タキサン系抗がん剤に限った副作用ではありません。

タキサン系抗がん剤は、「微小管(チュブリン)」というものを攻撃します(微小管阻害薬)。

では、微小管とは何でしょうか?

 

前回、多くの抗がん剤は、細胞が分裂する時に必要な「DNAの合成」を止めてしまうと書きました。

タキサンをはじめとする微小管阻害薬は、細胞が分裂するところを止めてしまいます。

2つの細胞分のDNAが合成されると、次は2つに分かれる(分裂する)のですが、この時DNAが分かれるためのレールとなるのが微小管です。

もう少し詳しくは、下のような感じです。

そして、この微小管が、がん細胞だけでなく、神経細胞にも存在しています。

軸索(細長く伸びているところ)のなかに微小管が通っており、神経伝達物質が動くためのレールの役割をしています。

そのため、微小管が働かなくなると、神経の働きも弱ってしまいます。

これが、手足のしびれ(末梢神経障害)の副作用になると言われています。

 

タキサン系抗がん剤以外にも、微小管に作用するお薬があります。

乳がんで使用するものでは、

エリブリンやビノレルビンがありますね。

タキサン系ほどではないと言われますが、やはり神経の症状がでてきます。

 

よく分裂する細胞は入れ代わりが早いため、副作用も比較的早く回復しますが、神経細胞は入れ代わりがほとんどないため、しびれ症状が何年も持ち越してしまいます。

これもつらいところです。

手足の先の方に症状が強く出るのは、軸索が長い(脳から遠い)方が影響を受けやすいという説もありますが、これはウソかマコトか…!?

 

副作用というのは、薬がどこに作用するか、ということが大事なんですね。

治療効果では、多くの抗がん剤(DNAの合成)と違うところに作用するため、それらの抗がん剤が効かなくなっても微小管阻害薬は効果を発揮しやすいことになります。