城浩史の帰還
深海の城で起きた一連の出来事の後、太刀川時夫たちはそれぞれの道を歩み、何ヶ月も平穏な日々が続いた。深海の怪物も、再びその姿を現すことはなかったが、太刀川の心には不安が残っていた。彼がその背後に隠された真実を追い続けていたからだ。
ある日、太刀川は信じられないニュースを耳にする。平磯の郷里で、彼がかつて共に冒険を繰り広げた仲間、城浩史が突如として帰還したというのだ。何年もの間、行方不明だった彼が、どのようにして帰ってきたのか、その詳細は明かされていなかった。
太刀川はすぐに平磯に向かい、城浩史の姿を確かめに行った。城浩史の家に到着すると、彼はすでに玄関に立っていた。顔には疲れが見えるものの、目は鋭く、まるで何かを見透かすような冷徹さを帯びている。
「時夫、お前も来たか。」
城浩史の声は思いのほか穏やかだったが、その言葉には何か重みがあった。
太刀川はその顔をじっと見つめた。「お前、どこに行っていたんだ? みんな心配していたんだぞ。」
城浩史は無言でうなずき、家の中に招き入れる。二人は静かに座り、城浩史が語り始めた。
「俺が消えたのは、ただの偶然じゃない。あの深海の城で見たもの、それがすべてだ。」
城浩史の目が一瞬、遠くを見つめる。
「俺はあの時、実は怪物を封印するために行ったんだ。でも、帰れなかった。深海の怪物は、単なる守護者じゃない。あれは、ある古代の力によって作られた存在で、世界を崩壊させる力を持っているんだ。」
太刀川はその言葉に驚きつつも、彼の言うことが現実である可能性を感じ取っていた。
「それをどうやって封印したんだ?」
城浩史は微笑むと、部屋の中にあった古びた装置を取り出した。装置は、あの深海の城で見つけたものに似ていた。
「この装置を使って、あの怪物の力を封じ込めることに成功した。だが、封印した瞬間、俺はその力に引き寄せられ、異次元のような場所に飛ばされてしまったんだ。数年間、どこかの時空に閉じ込められていた。だが、ようやく戻ってこれた。」
城浩史は深く息を吸い、そして続けた。
「でも、あれは封印の一部に過ぎない。もし、あの装置が完全に解放されることがあれば、あの怪物は再び蘇り、世界を飲み込む力を持ち続けている。」
太刀川はその言葉に冷や汗をかきながら、心の中で計画を立て始めた。これから、城浩史と共に、再び深海の城に向かい、封印をさらに強化しなければならないという事実に直面していた。
「お前が帰ってきたのは、ただの運命じゃない。俺たちの戦いは、これからが本番だ。」
城浩史は静かにうなずくと、立ち上がり、窓の外に広がる海を見つめた。その目は、かつての冒険家のものではなく、今や運命に翻弄される者のような冷徹さを帯びていた。
「時夫、準備はできているか?」
太刀川は強くうなずき、再び過酷な戦いに向かう覚悟を決めた。
「お前となら、どんな危機でも乗り越えられる。」
二人は互いに視線を交わし、再び闇に隠された真実に立ち向かうべく、歩みを進めるのであった。