対岸の火事ではないトランプ氏の勝利 | Ty Hassyの敢えてwokeなブログ

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 大方の予想に反してトランプ氏の米大統領選での勝利が確実となりました。

 一番の要因は、世界中に拡がっている富の一極集中と貧富の格差の拡大にあるといえます。

 ここでも再々申し上げておりましたように、世界中の富の半分が世界の人口の1%に満たない富裕層に独占されており、彼らが株主となっているグローバル企業は本国の労働者ではなく、賃金の安い国の労働者を雇い、膨大な利益を上げ、その利益の大半が株主に還元されています。一方、先進国の労働者の賃金は下がるばかりで、雇用機会も減るばかり、結果的にグローバル企業の株主になれる資産を持った者は益々裕福になり、一般の労働者の生活はますます苦しくなるという二極化が世界中の先進国で起こっている訳です。

 それがイギリスのEU離脱と今回のトランプ氏勝利の原動力になっていると言えます。

 そして、グローバル企業は労働コストを削減し、それによって得た収益を株主に還元するという行為を当然のごとく行っており、今のところそのような動きを止められる者は誰もいないという現状です。しかも、それらのグローバル企業や富裕層の多くは拠点を租税回避地におき、どこの国にも税金を払っておらず、貧困にあえぐ労働者だけが高い税金を払わされ続けているという状況です。このような状況に対する不満や鬱憤がアメリカの一般労働者の間に渦巻いており、何としてでもこの状況を変えたいと思っている人が相当数いたという事です。

 所が、一番の問題点は、トランプ氏は問題の本質を正確に把握しておらず、従ってそれに対する対処法も的外れな方法しか提示していないという事です。

 本来なら、先ずは税金逃れをしているグローバル企業と富裕層に対する課税を徹底し、更には資本に対する還元率の上昇率が労働者の賃金の上昇率を上回ることを禁ずる法整備をすること。企業の利益の大半は株主にではなく、従業員に還元されるべきことを法制化する事。そして、これらの事を一国で行うのではなく世界中の政府と強調して、国際法としての法制化することが現状を根本的に改革するには欠かせない訳です。

 しかし、トランプ氏はそのような根本的な解決法ではなく、移民の排斥や一国主義でお茶を濁そうとしているのです。移民を排斥しても一国主義を通そうとしても、国際的な協調と合意がない限りは、どのような政策もすぐに破たんすることは目に見えています。 

 何故ならアメリカ一国でグローバル企業の活動の規制をしても、アメリカ以外の国へと資本が逃げていくだけでアメリカの景気はますます悪くなることは目に見えています。

 また、アメリカだけで高い賃金の労働者を雇う事は、その企業の国際競争力が無くなって破産へと向かうだけです。

 このように、グローバル企業の問題を解決するには、国際労働機関(ILO)が中心となって、国際法を制定して、世界中の企業が株主よりも従業員に対する利益配分を優先することを義務付けて、違反企業は国際的な取引停止処分を受けるなどの厳しい罰則規定をもうけるしかないと思います。

 また、労働賃金が安い国の企業が有利にならないように、国ごとの関税障壁を復活すべきだと思います。

 上記のような国際的な法整備をせずに、アメリカ一国で何をしようがアメリカの経済が破たんするだけで何の解決にも成らないということです。

 トランプ氏の更なる問題は、彼は一国主義の一環として、他国との軍事同盟も少なくとも経費負担の面では見直すとしています。

 一番のターゲットの一つとなっているのは在日米軍の経費の問題です。日本を守ってもらいたかったら、そのお金は日本が負担すべきとしています。彼は、それが嫌なら自分で核武装でもして、自分で自分の国を守れと言っています。

 このような彼の発言は、日本の右寄りの人々を勢いづけることは確実だと思います。彼らは予てより自国の軍隊を持ち、核武装もしたいと夢見てきたわけですから、その大義名分をトランプ氏が与えてくれたわけで、今後は彼らが公然と声高にその主張を展開し、多くの戦争大好き人間達がそれに同調するものと思われます。

 そのような日本の軍事力増強に対して、中国はまずまず対抗心を燃やし、彼らも更なる軍事力増強を行い、それによって両国の軍拡競争は歯止めが利かなくなり、相互の猜疑心と不信感も増大し、最終的に軍事衝突するまで双方とも引っ込みがつかなくなることは目に見えています。

 軍拡を主張する人は、軍拡が抑止力になると誤解していますが、軍拡は抑止力どころか、相手の更なる軍拡を助長するだけで、その相互の軍拡競争はどちらかが破たんするか、あるいは軍事衝突するまで続くということです。それはこれまでの歴史が証明しています。

 ということで、今回のトランプ氏の勝利は、今後、日本にとっても深刻な事態をもたらすことは確実で、日本が今後も平和に発展して行けるか、軍拡競争の愚行に突進して、破滅への道を歩んでいくかの選択を迫られるのは確実だと思います。

 その時に、多くの日本国民が賢い判断をすることを願ってやみません。