Startin' over… -47ページ目
思考は現実になる、そんなクダラナイことを信じてしまいそうなほど
私の立場は危うい。
力不足。
良く言えば破天荒、一般的に見れば非常識。

雨が降ればいいのに。
この命を放棄するのに、そんなに損失は無いとも思う。

「先生、この漢字わかんない。」
「てへんだよ。音読みで”し”、訓読みだと”さす”。
導はよく書けてるね。」
「これ?」
「そう、指って字だね。」

別に私なんていなくても平気だろう。
間違った時間で授業が組まれていた。
18時の一コマのために、6時間ほど無給で働く。

「先生、今日いつ空いてますか?」
「お、質問かい?今いいよ。」

英文解釈。
「うん。言ってることは合ってるよ。
ただ;以降は、後から訳した方がいいね。
Pets help keep us young.の理由が後ろで説明されているわけだから、
今の日本語を英語に戻すと、Becauseまではいかないにしても、
as、sinceから始まる理由部分になって、最後にメインの文が来ると
考えられかねないね。だから;部分は、というのも、でつなぐのはどうかな?」

「そっか。ありがとうございます。」
生徒さんの顔がほころぶ。












「はい、お待たせいくよーー!
The FAOからareの手前までS!」

手元には現代文のプリントが置かれていた。

「あなた、今日英語よ。」
「え?忘れてた、国語だと思ってた。」
いつもなら、いや他の生徒さんなら、じゃ、国語にしよっと言う所だが
「昨日言ったじゃない。模試の大問6やるって。」
報告書にもそう書いた。
「うそ、明日でよかったんだ。」
残念。きっとここに来るまでに一生懸命予習したのだろう。
その当日に宿題に手をつける姿勢、最後の追い込みには使えそうだ。
また今の宿題の量では遊ぶ余裕もあるということ。
追い込んで正解なのかもしれない。

「おれ問題用紙持ってないよ。」
「わかった。刷ります。」


「今日ね、母親から13時からじゃないの?って言われたけど
ずっと16時って言い張ってた。」
「あら、そう。」
「冷蔵庫にね、授業のカレンダー張ってあるんだけどね、
見たら13時だった。」

どうやら藤原、伊藤、私の3人で作成した変更・調整だらけの手書きのカレンダー、
ご家族全員の目にさらされているようだ。
先日あいつがコピーしていた。
一方で、この3人チームが尽力し作ったエクセルのカリキュラム表は
自分の部屋に張っていたらしい。
お母様がその存在を知らず、トラブルにもなった。


それにしても暑い。
汗をかくほど水分もとっていない。ただただ朦朧とした。

「はい、ではいきます!大問1!」
「6でしょ?」
「あ、そうそう。えっと1パラ。真ん中の行チェック!
ここ以外読む必要無し、However以降話ひっくりかえる、おっけ?」

問題用紙には、マーカーが引かれていない。
ただシャープペンで、言われた通り”線”が引かれている。
それじゃ自分で読むときと大差ないだろ。

「ほら、マーカーもって。」
「もった。」

「hopeの後ろのとこ引く。」
「うん。」

なんで重要文よりそこが派手なんだよ。
「先生、暑い。」
「大丈夫かい?飲み物ある?」
「アイス食べたい。」

食べさせてあげたいが買いに行く時間がとれない。21時過ぎれば可能だが。

結果クーラーは壊れていないものの、冷風を出す力が弱まっている。
経営も、運営も、人によっては授業も、あらゆるものがガタついているわが教室。
未だにトイレットペーパーは発注されず私がコンビニに買いに行く始末。
ハンドソープも切らしている。
昨日はベテラン講師の住田先生が、A3用紙をちぎり、お手製のA4用紙を作って下さった。
業務ができる環境は崩壊、どころか最初から無かったような心地さえする。
おかしい。
それに麻痺してしまいそうな今日この頃。
それが一番恐ろしい。

「1kmは何m?」
「・・・・・。」

夏休みの宿題。
計算したいのは速さである。時速から分速の換算をやりたいが、盲点発見。
生徒さんがフリーズする。

「分速はね、一分間に進む距離ね。距離÷時間のことを速さって言うんだよね?」
「・・・。」
「600m毎分ってのは、一分間に600m進むってことね。」

600m/m、600m/分、一分間に600m進む、分速600m。
表記が違うとまだ混乱すると判明。
残り時間あと5分。

ちなみにこの生徒さんは割合・百分率の計算はパーフェクト。
小学校の重要範囲をさらおうとする宿題の方針は賛成できる。
ただ、どうやら前学年の範囲でまだ算数に苦手意識があったときの単元なのか。

「暑い?」
「うん。」

このまま彼女を帰したくないが時間切れ。
報告書に、き・は・じの図と、速さの表記を複数種類書く。
ここだけでもわかってもらい、授業を終えたい。

「これだけでいいからね、計算してみてね。」

向かいのブースにはあいつがいる。
どうやらバイトの出勤まで、1時間40分しかないらしい。
全6パラグラフ、ぶっとばすしかない。