Startin' over… -17ページ目
幸せな一日であった。

冬期講習をお申し込み頂いた。
今日から早速授業に入った。
昨日は河合のセンタープレ。その解説授業だ。

「サンゴの問題ね。環境問題で、エネルギー問題やらリサイクルうんぬんにはかかわってるけど、多くの人はサンゴについて考えないだろうって話ね。どれ、設問見せて。」
「なんかcoralって何かわかんないから、サンゴだと思ったけど、やっぱりサンゴだった。」
まぁ、それはいいだろう。
「どこ間違った?」
「問4。これnitrogenを自分で作り出すから助けるのは違うって書いてあった。」

今まで、こんな件を”言い訳”と一蹴していたが、なぜ間違えたかを自分なりに分析していることにより、授業はやりやすいのかもしれない。

「そこのhelp、助長する・促すの訳もできるように。
help O to V`は文法問題集にも載ってるからね。あ、to無い時もあるからね。問題集は?」
「今日持ってきてない。」
「なんだよ。まぁいいや、類題解いておくこと。」

理由を知ったら、次は対策。
これが今までうまくいってなかったんだな。
私も対策をしなければ。

段落ごとに見出しをつけ、要約していく。
どうせ最後の問6では、見出し問題が出てくる。
重要な行に下線を引き、答えの根拠としてノートにまとめておくと次につながると、私は信じている。

「それじゃ、3パラの一行目、構文とって訳して下さい。」
「うんとね・・・。」
出た。いつもの。
「いいよね?これ水中の炭酸イオン。」
「よくわかんなかった。」
その割には意味はとれていた。
「酸って何だっけ?」
「えっと,acid。」
「そうだね。じゃあacidityは酸性で推測できるよね、ということでそこは”一定の酸性レベル”と訳せばOK。」

せまい行間に単語の意味を書き足すあいつ。
あとで見てわかるのか?ノートに行間をつくらず単語をみっしり書くよりまし。

「はい、それじゃButの後ろのwith、後ろに文来れないよね。SV構造とれないよね、
O的なもの、C的なもの探して=で結んで下さい。」

分詞構文の付帯状況。
”大気中の二酸化炭素のレベルが増加し、海水中の炭酸イオンが減少するのに伴い、
サンゴにとって骨格を形成を形成するのはますます難しくなっていく。”

くらいが文型に則った可もない不可もない訳だ。

「withのかたまりどこまで続くの?」
「最後まで?」
「そうだね。メインの文のitは何指してるの?」
「え、ちょっと待って。あれ・・サンゴ?」
「落ち着け。to build their skeletons。」

It is high time S` V`(過去):
「もうとっくにSがVする時間だ。」の文もぶっこまれていた。
"protected"になっていたことに気付いて解いていただろうか。


それから問3の言及されていない選択肢を選ぶ問題。
4つの中から言及されている3つの選択肢と、本文での該当部分を結びつける。

「rubbish、これ”ゴミ”でよろしく。」

trash,garbageという単語が出てこなかったのが残念。


問4であるが、①気候変動の記録については5段落の10行目のWhat以降の文に述べられている。
そこを正確に読み取れていれば、得点できた。
サンゴは炭酸カルシウムの濃度と幅で気候変動の記録ができるという内容と、と結びつけたら完了。
③サンゴがビーチの砂になる話は5段落5~6行目、④の天然の防波堤については同段落3~5行目に書かれている。
よって言及されていないものは②のみである。


模試の復習でありがちだが、勢いづいてテンションが上がってしまった。
機嫌がよく映ったらしい。
久しぶりに膝でものを言ってきた。
「おはよっ。」
「うわっまた会った。」
”また”とは何だ?出勤時に会ったのはこれが初めてでないか。まぁいいや。

信号待ちをしていると、南側からあいつが歩いてきた。
ちょうど青になればばったり合うタイミング。
だが皮肉にも、あいつはいつかのように素通りしていく。
気付いてるのか気付いていないのか。

別方向の道に入り、適当に角を曲がったとこで、背中が見えたから声をかけた。

「お昼は、食べたの?」
「うん。」
「松屋最近高いよね。」
「ほんと。どこ行ってるんですか?」
「最近はーすき屋かな。」
「そうじゃなくて、道。」
「え?」

狭い路地。路駐しているトラックを避けようとしただけだ。
「いやいや、教室向かうよ。」
「びっくりした。」

びっくりしすぎだろ。
今日にせよ昨日にせよ。
昨日も退勤後、スーツケースをガラガラ引く私の真横を素通りして行った。
声をかけたが早足で追い抜かれた。
悔しいからリュックを引っ張ってやった。

「どんくらいに着くかな?」
「あと10分くらいじゃない?」
「開いてるかな?」
「開いてるんじゃないすか。」
苦笑しながらあいつが言う。
夏には二人で教室の外で待たされた。
お客様の信頼を守るという義理で社員を馬鹿にする言動は控えていたが、最近はどうでも良くなってきた。今さらではあるが、生徒さんはとっくに気付いている。
週数回しか来ない講師よりもずっと。あいつに限ったことではない。

歩くペースを緩めるあいつ。昨日の素通りの時との違いに驚愕。

二人で歩くと、会話に困る。
夜振り返ってみると、聞きたい事・話したい事がその時になって沸々と湧き上ってくる。
予習した歴史年号を思い出すかのように、ネタを探す。

「髪、伸びたね。」
「そう、邪魔臭い。」
「ちょくちょく切ってるよね。」
「うん、美容師さんがね、あんま短く切らない。」
「そうなんだ。」
「で、すぐ伸びるの。最近は切りに行くのめんどいから行ってない。」

前は立ち上がっていたハチの部分が、重みで下がっている。
ファッションには無頓着らしいが、かなり暗めとはいえカラーリングは怠ってないようだ。

「飲み物かってこうかな。」
「じゃ、行く。」

いつも裏で待ち合わせをするコンビニに入った。

コーヒーの棚に向かう私に、後ろからあいつがついてくる。
「特に買いたいもの無いんだよね。」
「いっつも何飲むのさ。」
「モンスターのコーヒーのやつ。」
「どれさ。」
「えー売ってない。」

レッドブルを2本とった。

適当に商品を見て歩く。会話のネタが浮かばない。
接客ならいくらでもできるのに、どうして?

意味も無くミニトマトがある棚に顔を近づけた。

「晩ご飯とか、どうしてるんですか?いつも帰ってから?」
「うーん、そうだね。昨日は飲んでました。」
「あら。」
「ザンギと日本酒。それっきり何も食べてないや。」
「やばっ。」

一人で出勤できたならどっかに寄ってたのかもしれない。

「俺、外で待ってる。」

会計を終えた後も、悠長にATMで金を下ろす。

「お待たせ。」

あいつがスマホをポケットにしまう。

「日本酒って言って、引かないんだ。」
「え?別に、ただ好きなんだなーって思ってた。」
「そう。」

教室があるビルに入る。

「はい、これ。夏待たせちゃったことあるし。」
「ありがとうございます。」

教室に着いた後、教科書を出し、
あいつがブルの缶を開ける音に、安心感を見出だした。