ウクライナ紛争に関し、欧米側がロシアに国連で制裁を求めても、アメリカが民主主義を掲げて諸国に団結を求めても、中国やインド、ブラジル、南アフリカは乗ろうとはしなかった。ウガンダのムセベニ大統領らは「アフリカの混乱に責任を負う欧米が、ウクライナに肩入れする状況は二重基準」などと批判する。
20世紀であれば、欧米は圧倒的な経済力と援助外交で、こうした新興国や発展途上国のこうした声を封じ、支持を取り付けていたかもしれない。かつての貿易摩擦で日本を脅したように、巨大な市場を背景に相手国の貿易や投資を制限する方法もあっただろう。1990年時点では米は6.0兆ドル、日本は2.4兆ドルなので、米市場を欠かす訳にはいかず、無駄な自主規制や公共投資に走らされれた。経済規模を背景にした、覇権主義の手口である。
でも世界銀行のデータをみると、潮目が変わっていることが分かる。購買力平価ベースで、米とEUのGDP(青線)を、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の赤線とを比べてみると赤線が21世紀に入ると急速に追い上げて、2020年に逆転している。成長率や人口規模、また先端技術分野における主要論文数などを思うと、将来的には欧米側とさらに差を広げていくだろう。
自分たちの経済圏が十分な規模になれば、欧米の経済協力と経済規制のアメとムチも効かない。BRICSには天然資源も豊富である。もちろん一枚岩ではないが、欧米から激しい攻撃や収奪を受けてきた歴史は共通だ。南アフリカのアパルトヘイトをサッチャーが支持する一方、マンデラの運動を旧ソ連は支援した。欧米が人権や民主主義を掲げる欺瞞、アフリカやラテンアメリカ、中東で披露してきたその悪どい手口も骨身に染みてよく知っている。ウクライナ紛争も、NATOの東方拡大、英米によるウクライナ政権の転覆工作、ネオナチ支援によるロシア系住民の迫害、といった欧米の挑発が原因という見方もしている。LPGの利権を握る米とノルウェーがウクライナ領のパイプラインを破壊し、ドイツを苦しめているのも明らかにされた。植民地支配のときと同じ、いつもの挑発して仕返しに権益を拡大する手口である。逆に旧フランス領のアフリカ諸国で、フラン圏やその収奪体制を外れた、BRICSからのインフラ投資なども受け入れられている。
下のグラフをみると、これからBRICSを中心とした世界秩序に転換するのでは、と思えてならない。日本もG7とかに混ぜてもらって、議長国だと喜んでいる場合だろうか。将来を見通せば、BRICSとの関係構築へと転換する時機だと思われる。