こいつらも「迷惑系」か? | ほうしの部屋

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 衆議院補欠選挙の東京15区で、つばさの党・根本りょうすけ陣営による「選挙妨害」が連日行われ、マスメディアでも大きく取り上げられました。選挙期間中ほぼすべての日程で選挙妨害は行われたため、多くの陣営が街頭演説日程を公表しなかったり、演説会そのものを中止するケースもありました。警察も、選挙妨害の容疑で警告を発しましたが、逮捕には至りませんでした。選挙結果では、根本りょうすけは、1千数百票の得票で最下位に沈みました。

 

 そもそも、つばさの党は、自分たちが当選することなど、はなから目指していませんでした。他の陣営の選挙運動を妨害することそのものを目的化していました。立憲民主党のようなリベラル政党から、日本保守党のような右派政党まで、手当たり次第に、大音量のマイク攻撃で演説を妨害し、他陣営の役員たちともみ合いの喧嘩をしかけていきました。つばさの党には、左右どちらといった政治的スタンスもなく、ただただ、自分たち以外の候補者の選挙活動を妨害することのみが目的でした。

 

 つばさの党は、自分たちの選挙妨害活動を映像化して、YouTubeなどにアップするのでしょうか(今でもすでにしている可能性もあります)。それが目的ならば、明確な政治的信条など皆無の、迷惑系ユーチューバーと同じです。

 

 既存のあらゆる党派に対する、スキャンダラスな疑惑モドキをぶつけて攻撃するスタイルは、政治家というよりも、記者・評論家のようなメディアのやり方です。実際、そのような主張をするつばさの党の映像は、すでにYouTubeに存在します。今回の選挙における妨害活動も、内容をまとめて映像をアップする可能性があります。

 

 既存の政党や政治家に対する不満や忌避感が、つばさの党のような存在を作り上げているとも言えます。しかし、根本りょうすけの最下位落選を見ると、つばさの党の戦略が、有権者の胸に刺さったとはとても言えません。そもそも、当選したら(国会に進出したら)何を目標に、何をするのかが、全く見えず、ただただ、他の党派や候補に対する、スキャンダルもどきの罵倒を繰り返すのみでは、有権者の心に響くものは少ないと言えるでしょう。有権者もさすがにそこまでのバカではありません。自分たちの政策を訴えることなく、ライバル候補を攻撃するばかりでは、票を得るのは困難でしょう。

 

 問題は、つばさの党のような連中が、自分たちは正義に基づいて行動していると思い込んでいることです。実際、つばさの党の代表の黒川敦彦は筋金入りの陰謀論者です(かつてはN国党に所属していました)。もちろん、SNSをはじめ、さまざまなメディアでそういう活動を展開するのは自由ですが、実際に、選挙に立候補して、他候補に理不尽な攻撃ばかりするということになると別問題です。自分たちの政策面での主張もないまま、他陣営を攻撃するのは、一種の言論テロです。それを自分たちの歪んだ正義感に基づいて行っているから始末が悪いのです。

 

 

 かつて、社会党や共産党などの左派政党の選挙演説に、右翼が街宣車で接近して妨害活動を行うことはありました。しかし、それは左に対する右からの攻撃であり、右翼にも政治信条があったと言えます。しかし、つばさの党は、あらゆる党派を攻撃対象にしています。しかも、自分たちの政治信条はありません。保守、リベラルを問わず、あらゆる候補者を攻撃対象にすることで、あることないことスキャンダラスな誹謗中傷を大音量で流すことで、自分たちの存在を認知させ、心理的に満足を味わおうとしているのでしょう。しかし、その攻撃姿勢が選挙民に訴えるものはありませんでした。つばさの党の攻撃活動で溜飲を下げるような選挙民はほとんどいませんでした。それが、根本りょうすけの最下位落選という結果に表われています。

 

 そもそも、まったくクリーンな政治家など、ほとんど存在しないと言えるでしょう。叩けばホコリが出る人物も少なくありません、それゆえに、週刊誌や日刊紙が売れるのです。それでも、政策や実際の政治活動に照らして、「よりましな」候補に投票するのが、選挙というものです。特に、民主主義の制度における選挙とはそういうものです。つばさの党の活動は、この「よりましな」選択を不可能にするものです。かつて、ナチスがワイマール共和国(ドイツ)の有権者の投票行動を暴力でねじ曲げたように、選挙そのものを破壊しているのです。これは、「誰にも投票したくない」という無党派層の棄権者に通底する現象とも言えます。

 

 国政について、あるいは選挙について、政策について、真剣に考えることを不可能にしてしまうという意味で、つばさの党の妨害行動は罪深いと言えます。