頭悪いのか必死なのか | ほうしの部屋

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 最近、訪問や電話で、プロバイダ契約の変更を促そうとする勧誘が目立ちます。プロバイダ乱立時代だから、厳しい競争になっているのもわかりますが、勧誘する人間の頭の悪さには辟易させられます。どうせ、下請け会社の非正規バイトでしょうが、それにしても、まともなコミュニケーションさえ取れないのです。

 

 例として、最近の、私の経験を2つ紹介します。

 

 1つめ。電話をかけてきて、こちらが出ると、オペレーターらしい若い女性の声で、プロバイダはどこかと聞いてきます。答える義務もないのですが、一応、プロバイダ名を教えます。1ヶ月何円支払っているかと聞くので、それも正直に答えます。すると「ああ、それなら、これからこちらの言うとおりに設定してくださいね」と、いきなり、何の手続きも説明もなく、プロバイダ変更の(PCでの)操作手順を教えようとするのです。たぶん、「うちのほうが安いから、客は了解するだろう」と勝手に解釈して先走るのでしょう。私は、「今の状況で満足ですから、いらないです」と言って、電話を切りました。電話が再びかかってくることはありませんでした。

 

 2つめ。玄関のチャイムが鳴るので、出てみると、若い男性が立っていました。新しいインターネット回線をマンションに引き込む工事が完了したとのことです。そして、「2つだけ質問させてください」と言います。現在のプロバイダはどこか、プロバイダの1ヶ月の支払いはいくらか、(手に持ったルータの印刷写真を見せて)こういう機器を使っているか、……早くも、質問は2つを超えています。そして、「2つだけ言わせてください」と再び言います。「本日引き込みが完了した弊社のプロバイダ契約の方法ですが……」「プロバイダと携帯電話の契約会社は同じほうがお得なので……」「(再び写真を見せて)こういう機器を接続するだけで、簡単です……」などなど、またまた2つ以上の要件を話しています。どうやら、「2つだけ」というのは、この男の口癖のようです。いかにも、短時間で終えると臭わせて、セールスに引きずり込んでいくつもりなのでしょう。私は、途中で「現状で満足ですからいいです」と言って、玄関ドアを閉めようとしました。閉まる直前に、男は「月々2000円以上お得になります」と、イタチの最後っ屁のように、言い放ちました。それが最期の殺し文句なのだとしたら、虚しすぎます。

 

 プロバイダ変更は、セールスマンたちが口で言うほど簡単ではありません。ルータを変更し、PCの接続設定を変更し、何よりも、メールアドレスが変わってしまうのが迷惑です。私は、同じメルアドを20年以上使っていて、愛着もあり、変更したら、仕事の取引先、友人、親族など色々な方面に連絡しなくてはならず、その間に、間違って旧アドレスに送られてくる「死にメール」もかなり出てくるはずです。新しいプロバイダにすると使用料が安くなるといいますが、その微々たる安さのために、メルアド変更などのリスクを引き受けるつもりは、私にはありません。

 

 それよりも何よりも、上記に紹介した2例のように、セールスを担当する職員のコミュニケーションレベルの低さが、会社の評価を下げていることを、会社は把握しているのでしょうか。もしかして、上記のような、押し売りまがいのセールストークを教育しているのでしょうか。どうも、そういう教育を、何も知らないバカな若者たちに施している疑いがあります。こういう会社の基本は「客に、考える暇を与えず、矢継ぎ早にこちらのペースに持ち込む」というセールストークの展開なのでしょう。私は、自分自身のことはさておいて、会話上のマナーにうるさいので、上記のようなマナーのなっていないセールストークを冒頭だけでも聞かされただけで、嫌気がさし、断ります。

 プロバイダ乱立で、競争が厳しいので、客に有無を言わせぬセールスを(たぶんバイトの)社員に強要しているのでしょう。そういうセールストークを展開させられる若い社員たちも哀れです。きちんとした、コミュニケーションの要領を学ぶことなく、押し売りまがいのセールストークを教え込まれて前線に送り込まれ、厳しいノルマも課され、多くは、長続きせず、戦死(退職)していくのでしょう。ブラック企業です。

 

 大手のプロバイダのコールセンターの多くは、電話応対も丁寧です。トラブルがあったり、わからないことが生じて質問しても、懇切丁寧に答え、教えてくれます。他にも、通信販売の電話オペレーターなども(これも玉石混淆ではありますが)丁寧に応対します。少なくとも、(形式的でも)客に対するリスペクトがあります。自分の考え(会社の方針)だけを押しつけることはありません。

 

 新興プロバイダのセールスに駆り出されている(たぶん非正規社員の)若者たちは、頭が悪い上に、ノルマ達成だけが念頭にあり、必死に売り込もうとします。頭が悪いのか必死なのか、というよりも、頭が悪い上に、必死なのでしょう。幸い、断るのは比較的簡単ですが(電話を切る、ドアを閉めるなど)、必死さだけで押し売りしてくる頭悪い連中の相手をする時間のムダには、腹が立ちます。