「さらば青春の光」といえば、今ではお笑いコンビを思い浮かべる人も多いのでしょうが、これをタイトルに付けたのは、元ネタの映画のことを書きたいわけではなくて、なぜか男闘呼組の話です。
これまで、TM NETWORK熱が不意に再燃するということが何度もあり、このブログでも何度もお目汚しして参りました。
しかし、同じころにハマった男闘呼組に関しては、その後、わたしの中のファンスイッチが入ることはなく、あれは一時的な感染症のようなものだったのだろう……と思っていました。
ところが、人生とはわからないもので、ある日、BGM代わりにつけていた音楽特番で、ジャニーズの皆さんがメドレーの一曲として「TIME ZONE」を歌っているのを耳にしてしまったのが運のつき。過去にも、ジャニーズメドレーで「TIME ZONE」が歌われる光景は何度か目にしてきたものの、そこで特にスイッチが入るでもなかったのに、なぜか今回、100年の眠りから覚めたかのように、心を奪われてしまうという非常事態に陥っています。
これは猛暑の為せる業なのでしょうか? 暑さには、男闘呼組の暑苦しさで対抗せよという、一種の猛暑対策なのでしょうか?!
まずはウォーミングアップとして、過去に何度も観た動画を、ひと通りおさらいチェックしていると、なんと、成田昭次くん主演のドラマ「お茶の間」全話に行き当たるという幸運に見舞われました。
6年前のドはまり時期に取り逃したものがいくつかありますが、「お茶の間」はそのひとつでした。都内のTSUTAYAで何度も在庫検索して、やっと見つけたときも、すでに撤去されていただか何かで結局断念することになった、あの、幻の「お茶の間」が!
まさか、あれから6年になろうという今になって、神様がプレゼントしてくれようとは……。
いやー、堪能した。成田くん、やっぱり惜しい人材すぎる。歌ってる姿も声も好きだけど、演者としても光ってる!
不良っぽくてシャイなところが持ち味だと思っていましたが、このドラマの役みたいな、暑苦しいハイテンションキャラも上手いじゃないですか! 成田くんの田舎ヤンキー属性が遺憾なく魅力として昇華されていて、とってもいい感じ。
とにかくまっすぐで、根拠のない自信とゴキブリみたいな生命力の持ち主で、でも捨てられた子犬のような可愛らしさもあって……花井薫(役名)みたいな彼氏、実際に付き合ったらうっとおしそうだけど、こんなふうに熱烈に愛されるのはひとつの理想ですよね!
この「お茶の間」放映と同じ年(1993年)、映画「極妻」に出たのを最後に、もうドラマや映画でその姿を見ることはなくなってしまいました。
成田くんのドラマ出演、そんなに多くはないんだけど、どれもけっこういい役をもらっているんですよね。
「僕の姉キはパイロット!」(1987年)は、男闘呼組全員がパイロット見習い生の役で出演していましたが、成田くんは、主人公の教官パイロットを演じた浅野温子の弟役。この姉弟っぷりが麗しいのなんのって。勝ち気なキャリアウーマンの姉に、反抗的でちょっとシャイな弟。星野ありさに星野隼人って、もう名前からして完全に勝ち組だし!(?)
オープニングテーマが、男闘呼組の「STAND OUT!!」で、壮大なキーボードのイントロを背景に、制服に身を包んだ浅野温子と、私服の男闘呼組が滑走路を並んで歩いている映像が、めちゃくちゃハマっててかっこいいのです。
「オトコだろっ!」(1988年)は、リアルタイムでも見ていた記憶があります。
八ヶ岳の麓でペンションの便利屋を営む“ゴリラ”こと中嶋一郎太(西田敏行)のもとで、プー太郎の若者4人組(男闘呼組の4人)がひと夏のアルバイトにやって来てこき使われるだけのドタバタコメディですが、今見ると、男闘呼組の青春メモリアルビデオという感じで、切なさが止まりません。
長野あたりでペンションが大流行していた時代感も懐かしいけれど、DASH村的な田舎(案外、DASH村の原点はこのドラマにあるのかも)で、悪ガキどもがブーブー文句を垂れながらケンカばっかりしている姿は、大きな動物がじゃれ合っているような可愛らしささえあります。
ここでも成田くんは、“子どもと動物にしか好かれない”ちょっと硬派なキャラクター。他3人が、ラストではそれぞれ意中の女の子といい感じになるシーンがあるなか、ひとりだけ犬と子どもと戯れる場面が用意されているという、ある意味おいしい役どころです。途中、高橋くんとヒロインの不良少女を取り合うんですが、気持ちを伝えることなく身を引いちゃうんですよ。ヒロインと一瞬見つめ合いながらも目を逸らす演技が、なんとも悩ましげで上手いなあと思います。
余談ですが、ドラマの序盤、高橋くんとつかみ合いになる場面で、高橋くんが成田くんに「ショーケンみたいな顔しやがってよ!」という台詞はアドリブだったのか、気になります。確かに、ショーケンに通じるところ、あるかも……。
それに、ドラマじゃないけれど、あの名作青春映画「ロックよ、静かに流れよ」でも、誰よりも強烈な印象を残したのが、やっぱり成田くん演じるミネさでした。
これはほんと、これ以上ない当たり役だったわけですが、この流れで、紡木たくの「ホットロード」も男闘呼組、いや、せめてハルヤマを成田くんの若かりしころに撮影しておくべきだったんじゃないかしら? 特にこのマンガに思い入れがあるわけではないけれど、コワモテで気の優しいヤンキーときたら、当時の成田くんに叶う演者はいないのでは? あんなにリーゼントが似合う妙齢の男子は、他にいなかったと思うの!
その後の成り行きが消息不明という不幸な結末に至ったことにも起因していると思うのですが、あのころの成田くんというキャラクターには、青春の煌めきそのものが詰まっている気がするのです。ガラが悪くて、無鉄砲で、不器用で、でもホントは優しくて……ああ、なんてベタな、思春期しか許されないキャラ! だがそれがいい!!
と、ここまで成田くん中心で稿を進めてきましたが、男闘呼組4人で出演している3作品には、わたしの大好物にして泣き所の原点とも云える映画「STAND BY ME」的な、二度と戻らない季節、永遠の一瞬、うたかたの日々……つまり儚さゆえの切なさが通底しているように思うのです。
男闘呼組はみんなけっこう演技が上手くて、それぞれの持ち味が生かされていたのがまたいいんですよね。そして、落ちこぼれ役がよく似合う。愛しのろくでなし(ラストアルバムのタイトルも「ロクデナシ」だったわね)。
「青春は遠きにありて思うもの」とは、室生犀星のもじりですが、青春のただ中にいる人間には決して見えないのが、きっと青春の光というものなのでしょう。