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 11月7日付の産経新聞は、一面トップでロコモ運動器症候群)が子供たちに広がっているという事実を報じた。
 子供たちの心身が脆くなってきていることにうすうす気づいてはいたが、統計には驚かされた。
 

ロコモは体を動かすのに必要な関節や骨、筋肉など『運動器』が機能不全を起こした状態で、骨折や捻挫を誘発する。
 関節が衰えてこわばり十分に曲げられなくなるため、力を入れると耐えきれず折れてしまう。
 加齢や運動不足が原因とされ、高齢者に多い。

 だが、近年は子供たちの間で増えている。
 幼い体が『老化』しているのだ。

 文部科学省の委託を受けた埼玉県医師会が平成22~25年、県内の幼稚園から中学生までの子供1343人に運動器の検診を行った結果、約40%に機能不全の兆候がみられた。
 3人に1人以上に、ロコモの疑いがあるということだ。」


 加齢と共に弱って生ずるロコモティブシンドロームが、幼い体を蝕んでいるとは……。
 わずかな段差で転んだり、しゃがんで用を足しにくかったりするのは年配者の宿命だったはずだが、子供のうちからそうした身体ならば、彼らはいったいどういう大人になるのだろう。
 

「ニッセイ基礎研究所の村松容子主任研究員が学校での骨折発生率を算出したところ、昭和45年には0・64%だったが、平成23年には1・60%に増えた。」

「『体力は国力の基盤』。
 1960年代、ケネディ米大統領はこんな趣旨の言葉を残した。
 テレビや自動車の普及で子供の体力が急低下。
 学校での運動強化を『国家戦略』に位置づけた。
 今の日本の姿が重なる。
 スポーツ庁幹部は語る。
『地域や学校で運動の機会を増やすことが重要だ』」


 千葉県船橋市は、子供たちの体力向上をめざして公園でのボール遊びを試験的に解禁し、そうした動きは広がりつつあるという。

 子供たちの異変はさらに報告されている。
 

「『トイレットペーパーがうまく切れない』(東京都の区立小教諭)
『液状のりの容器を押す力加減が分からず、噴出させる』(横浜市立小教諭)
『握力が弱く鉄棒がにぎれない』(幼児教室教員)」

「全国国公立幼稚園・こども園長会が昨年、665人の教員を対象に実施した調査では、76%の教員が『教え子がひもを結べない』と回答。
『箸を正しく持って使えない』も66%だった。」


 ここまでくるともはや信じがたいといったレベルである。
 しかも、力が弱っているためにHBの鉛筆では、はっきり書けないので、2Bなどが喜ばれ、消しゴムもまた、あまり力を入れずに消せるタイプが売れており、「過保護マーケット」と揶揄されている。
 

「NPO法人、子どもの生活科学研究会の実技調査(30~44歳の男女338人対象)によると、30~34歳で鉛筆を正しく持ち使える人は26%に留まる。
 35~39歳、40~44歳でもほぼ同じ割合で、子供のモデルとなれる親は4人に1人だ。

 同研究会代表の谷田貝(やたがい)公昭・目白大名誉教授(保育学)は語る。
周囲の大人の教える力も衰えている。子供が自立して生きられるようにするため、今、その責任が問われている』」


 教授の言う「大人」とは誰か?
 消え去りつつある団塊の世代も含まれるのではないか?
 事実、70才になる小生は、自分たちの世代が、父親や叔父たちの世代が持つ心身の頑健さを失いつつあると実感してきた。
 昭和の末期、評論家村松剛は「豊かな社会の相続人たち-自前の精神を先人の足跡に学ぶ-」を書いた。
 あらためて読んでみたいと思う。
 段階の世代は何をやってきたのか、最後にやるべきことは何か、遺すべきものは何か?

 いずれにしても、ケネディの時代とは違う。
 明治の日本が富国強兵を進めたように、子供たちを強く逞しく育て、人口も増やして世界に冠たる日本にしようなどというイメージはもう、持つべきでなかろう。
 格差の拡大と地球の温暖化という人類最大の問題を引き起こしたグローバリゼーションの行きづまりは明白だ。
 このまま進めば、AIを駆使し自由貿易を正義とする一握りの資本家が富の寡占を進め、ついには、生身の人間によるAIシステムの破壊といった致命的な暴動すら起こり得るだろう。
 グローバリゼーションという〈原理〉を調整する叡智、人類の視点に立った新たな思想が求められている。

 たとえば、デンマークの納税者負担は58~72パーセントに上っているが、暴動は起きず、デンマークは世界有数の〈住みやすい国〉とされている。
 デンマークの人々は、自尊心をかけてたくさんお税金を払っているのだ。
 タックスヘイブン(租税回避地)を探して血眼になる者たちだけが人類の代表者ではない。
 世界最小のミクロヒメカメレオンは、小さな島という環境に自分の背丈を合わせて小型化し、生き延びてきたという。
 人類もそろそろ、〈分〉を知ってよい段階ではなかろうか。
 




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「のうぼう あきゃしゃきゃらばや おん ありきゃ まり ぼり そわか」※今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
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〈四国霊場の天井画には意外なものが……〉

 七回忌供養でAさんご一族が来山された。
 ひいお祖父さんとひいお祖母さんと、お祖父さんがもう、ご先祖様の仲間入りをしておられる。
 喪主だったお父さんを中心に、奥さん、お祖母さん、そしてお子さんと、三代にわたるご家族、ご親族が集まられた。
 にぎやかで皆さんの笑顔が好ましい。

 法要の心構えをお話しした。

七回忌阿閦如来(アシュクニョライ)様が一つの関所を越えさせてくださる時期です。
 三回忌で阿弥陀様の極楽浄土に到着し、それから4年間、このみ仏にお導きいただいてきました。
 阿閦様は、無瞋恚(ムシンニ)如来、あるいは無動(ムドウ)如来とも呼ばれ、どんなことがあってもイライラせず、怨まず、人の道を邪魔するあらゆる魔ものを降伏させます。
 動じることがありません。
 み仏の世界を歩まれている故人もきっと、不動の悟りを開き、東の浄土におられるこのみ仏のお力で、よき世界へ転生(テンショウ)する流れに乗っておられることでしょう。
 古来、七回忌法要を終える頃になると喪主を務めた人も縁者の方々も、故人の死と人生を丸ごと受け容れ、乗り越え、引き継ぎの段階をすっかり終えて、故人に見守られつつ不動の信念で新しい世界へ進むことができるとされています。
 また一つの区切として、思い出につらなるものをまとめたりするのに適した時期でもあります。

 さて、私たちは、亡くなった家族や親族をいつから〈ご先祖様〉とお呼びするのでしょうか?
 それは、四十九日忌からです。

 中陰(チュウイン)という行く先の定まらない時期を過ぎ、あの世での道が定まればもう、ご先祖様なのです。
 そして、喪主はその後、施主(セシュ)となります。
 〈喪に服する人〉から〈供養を施す人〉へと役割を進めるのです。


 しかし、三回忌あたりまでは、まだ、故人はこの世で果たした役割のイメージが強く、それぞれの人々なりに、お祖父ちゃんやお父さんといった感覚の存在です。
 〝ご先祖様になった〟とはなかなか思えないのが人情というものでしょう。
 それも七回忌あたりになると、故人に関するすべては〈よき思い出〉という1つの清浄で温かく揺るぎない結晶体となり、仏神に通じる尊さをはっきりと帯びています。
 私たちは、このあたりでようやく、ご先祖様として手を合わせられる気持になるものです。

 施主様はお1人ですが、それは、本当の意味では施す人々の代表であり、先祖様へ供養を施す人は等しく尊い役割を果たしていると言うべきです。
 だから、今日は、皆さんが施主様になったつもりで、お手元の経典をお読みください。
 経典はまず、日頃の過ちを懺悔(サンゲ)させ、私たちがみ仏の子であることを思い出させます。
 清らかな心身でこれからのご供養を行うのです。
 次に七回忌の守本尊である阿閦如来様をお讃えします。
 そして、お焼香して故人の冥福を祈り、自分もまっとうに生きて行くことを誓いましょう。
 最後に、ご供養した功徳をご先祖様と自分たちだけにいただくのではなく、広く生きとし生けるものへ廻し向け、皆共に安心の世界に生きられるよう祈りましょう。

 これが本日行う供養会の意味と意義です。
 どうぞご一緒にお手元の経文をお読みください。」

 最初は小さかったお父さんの声がだんだんはっきりしてきた。
 小学校へ入ったばかりのお嬢さんらしい一生懸命な声も聞こえた。
 こうした年忌供養の場に代わり得るものはないと思う。
 だからこそ、ご先祖様は、その時代、その時代なりに工夫し、方法を伝え、守ってきた。
 当山もしっかりと役割を果たして行きたい。
 




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〈四国霊場のお大師様〉

 人類が発祥以来続けてきたはずの祈り瞑想と、人工知能AI)について考えてみましょう。

1 目をつむる祈り

 私たちは祈る際に目をつむります。
 いかに圧倒的なご本尊様を前にしても、必死の思いで願いを込めるならば自然に合掌し、視界を塞ぐはずです。
 なぜでしょうか?

 そもそも、私たちは、〈見る〉ことによって膨大な情報が網膜から脳へもたらされるというイメージを持っていますが、一旦失った視力を回復する過程の研究などによると、そうしたイメージは覆ります。

 私たちはこの世に生まれ落ちた直後から、五感六根によって得る情報を分析し蓄積します。
 そして、自分なりの情報処理法をつくって行きます。
 なにしろ、1000億個から2000億個もの脳細胞がそれぞれ、1000個の脳細胞と複雑なネットワークを構築するというのだから驚きです。
 人工知能AI)研究者ヘンリー・マークラム氏は指摘しました。
 

「部屋の認識は99パーセントの脳内における情報処理と、1パーセントの外的刺激による」


 もしも、窓に白いレースのカーテンがかけられており、その右側には書棚があると認識するならば、カーテンと書棚が網膜に映った際の刺激そのものの99倍に上る情報処理が行われてようやく、そこへたどりつくと言うのです。
 情報処理がうまくゆかなければ、入った刺激は、カーテンや書棚といった意味内容を伴った認識をもたらしません。

 そうすると、私たちがご本尊様の前で目を閉じるのは、無意識のうちに情報処理そのものを深めようとしているのかも知れません。
 それは、私たちの心が、その中にあるご本尊様の世界へより近づく過程であるとも言えましょう。
 お大師様は説かれました。
 

「それ仏法、遥かにあらず、心中にしてすなわち近し」


 真剣に祈る時、私たちは不断に流れ込む刺激をシャットアウトし、邪魔されずに心中の思いを深めようとするのです。

2 祈り瞑想

 祈り瞑想は似ています。
 たとえば。阿字観(アジカン)のご本尊様を前にして瞑想する時は、眺めてから瞑目した世界へご本尊様をお招きし、一体になり、即身成仏(ソクシンジョウブツ)の境地を目ざします。
 心を真実世界へ解き放つのです。
 
 こうした祈り瞑想は、人間が人間であるための砦を守るようなものであるとも言えそうです。
 それは以下の理由からです。

3 人工知能AI)ができないこと

 11月25日、ロボット「東ロボくん」で知られる国立情報学研究所教授新井紀子氏は、朝日新聞へ「AIの弱点は『意味理解』」 仕事奪われぬため 人間こその力磨け」と題した一文を寄稿しました。
 AIが進歩すればその便利さによって人類は幸せになれるのでしょうか?
 

AIから得られる富が、地球上のすべての人に平等に分け与えられればそうかもしれない。
 しかし、そのような仕組みは、今までかつてこの地球上に築き上げられたことはない。
 むしろ、ITが社会に導入されて以降、経済格差は広がり続けている。」

「AIはどのように仕事を奪い、仕事を生み出し、社会を変えるのか。
 私がはじき出したのが、30年に現在のホワイトカラーの仕事の半分がAIに置き換えられるという予想だった(後に、それはオックスフォード大の研究グループが行った予測とぴたりと合うことになる)。」

「AIを大胆に導入し、コスト削減に成功した企業の利益率が上がる一方、雇用を守ろうとした企業は市場から退場を迫られるだろう。」


 このまま進めば、ほとんどの人間は、AIを駆使する一部の人たちによってますます搾り取られるだけの存在になってしまいます。
 どうすればよいのでしょうか?
 

AIには弱点がある。
 それは『まるで意味がわかっていない』ということだ。

 数学の問題を解いても、雑談につきあってくれても、珍しい白血病を言い当てても、意味はわかっていない。
 逆に言えば、意味理解しなくてもできる仕事は遠からずAIに奪われる。」

「みなさんは、どうか『意味』を理解する人になってください
 それが『ロボットは東大に入れるか』を通じてわかった、AIによって不幸にならない唯一の道だから」


 ロボットは、どこまで行っても、決まった手はずどおりにやってくれる存在であり、何のためにという目的を決めるのは人間です。
 目的は必ず意味を伴い、意味のない目的はありません。

 この意味がまっとうであるためには、世界と自分の認識が歪まず狂わず、誤った自分勝手な価値観を離れねばなりません。
 それには何が必要でしょう?
 まっとうな祈り、霊性・仏性をはたらかせる瞑想ではないでしょうか。
 意味のわからないロボットに祈りはありません。
 脳内ネットワークを深化させる瞑想もできません。

 私たちがロボットをまっとうにはたらかせられる人間であり、共にお互いの幸せを喜び合える社会をつくるために何が必要か?
 祈りと瞑想の意義は大なるものがあると言えそうです。
 




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「おん ばざら たらま きりく」※今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0
 

 




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