〈四国霊場のお大師様〉
人類が発祥以来続けてきたはずの祈り、瞑想と、人工知能(AI)について考えてみましょう。
1 目をつむる祈り
私たちは祈る際に目をつむります。
いかに圧倒的なご本尊様を前にしても、必死の思いで願いを込めるならば自然に合掌し、視界を塞ぐはずです。
なぜでしょうか?
そもそも、私たちは、〈見る〉ことによって膨大な情報が網膜から脳へもたらされるというイメージを持っていますが、一旦失った視力を回復する過程の研究などによると、そうしたイメージは覆ります。
私たちはこの世に生まれ落ちた直後から、五感六根によって得る情報を分析し蓄積します。
そして、自分なりの情報処理法をつくって行きます。
なにしろ、1000億個から2000億個もの脳細胞がそれぞれ、1000個の脳細胞と複雑なネットワークを構築するというのだから驚きです。
人工知能(AI)研究者ヘンリー・マークラム氏は指摘しました。
「部屋の認識は99パーセントの脳内における情報処理と、1パーセントの外的刺激による」
もしも、窓に白いレースのカーテンがかけられており、その右側には書棚があると認識するならば、カーテンと書棚が網膜に映った際の刺激そのものの99倍に上る情報処理が行われてようやく、そこへたどりつくと言うのです。
情報処理がうまくゆかなければ、入った刺激は、カーテンや書棚といった意味内容を伴った認識をもたらしません。
そうすると、私たちがご本尊様の前で目を閉じるのは、無意識のうちに情報処理そのものを深めようとしているのかも知れません。
それは、私たちの心が、その中にあるご本尊様の世界へより近づく過程であるとも言えましょう。
お大師様は説かれました。
「それ仏法、遥かにあらず、心中にしてすなわち近し」
真剣に祈る時、私たちは不断に流れ込む刺激をシャットアウトし、邪魔されずに心中の思いを深めようとするのです。
2 祈りと瞑想
祈りと瞑想は似ています。
たとえば。阿字観(アジカン)のご本尊様を前にして瞑想する時は、眺めてから瞑目した世界へご本尊様をお招きし、一体になり、即身成仏(ソクシンジョウブツ)の境地を目ざします。
心を真実世界へ解き放つのです。
こうした祈りや瞑想は、人間が人間であるための砦を守るようなものであるとも言えそうです。
それは以下の理由からです。
3 人工知能(AI)ができないこと
11月25日、ロボット「東ロボくん」で知られる国立情報学研究所教授新井紀子氏は、朝日新聞へ「AIの弱点は『意味の理解』」 仕事奪われぬため 人間こその力磨け」と題した一文を寄稿しました。
AIが進歩すればその便利さによって人類は幸せになれるのでしょうか?
「AIから得られる富が、地球上のすべての人に平等に分け与えられればそうかもしれない。
しかし、そのような仕組みは、今までかつてこの地球上に築き上げられたことはない。
むしろ、ITが社会に導入されて以降、経済格差は広がり続けている。」
「AIはどのように仕事を奪い、仕事を生み出し、社会を変えるのか。
私がはじき出したのが、30年に現在のホワイトカラーの仕事の半分がAIに置き換えられるという予想だった(後に、それはオックスフォード大の研究グループが行った予測とぴたりと合うことになる)。」
「AIを大胆に導入し、コスト削減に成功した企業の利益率が上がる一方、雇用を守ろうとした企業は市場から退場を迫られるだろう。」
このまま進めば、ほとんどの人間は、AIを駆使する一部の人たちによってますます搾り取られるだけの存在になってしまいます。
どうすればよいのでしょうか?
「AIには弱点がある。
それは『まるで意味がわかっていない』ということだ。
数学の問題を解いても、雑談につきあってくれても、珍しい白血病を言い当てても、意味はわかっていない。
逆に言えば、意味を理解しなくてもできる仕事は遠からずAIに奪われる。」
「みなさんは、どうか『意味』を理解する人になってください。
それが『ロボットは東大に入れるか』を通じてわかった、AIによって不幸にならない唯一の道だから」
ロボットは、どこまで行っても、決まった手はずどおりにやってくれる存在であり、何のためにという目的を決めるのは人間です。
目的は必ず意味を伴い、意味のない目的はありません。
この意味がまっとうであるためには、世界と自分の認識が歪まず狂わず、誤った自分勝手な価値観を離れねばなりません。
それには何が必要でしょう?
まっとうな祈り、霊性・仏性をはたらかせる瞑想ではないでしょうか。
意味のわからないロボットに祈りはありません。
脳内ネットワークを深化させる瞑想もできません。
私たちがロボットをまっとうにはたらかせられる人間であり、共にお互いの幸せを喜び合える社会をつくるために何が必要か?
祈りと瞑想の意義は大なるものがあると言えそうです。
原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
般若心経の音声はこちらからどうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらからどうぞ。
「おん ばざら たらま きりく」※今日の守本尊千手観音様の真言です。
どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0