平成30年度の当初予算案が示され、現在開会中の第1回定例会で行われる予算特別委員会にて予算審議を行います。
予算案の特徴は、
1.過去最大の予算規模
一般会計の予算規模は1,246億円と過去最大。
投資的経費が212億円(前年比+73億円 +53%)で、新ホールや新区民センター、池袋西口公園整備事業など。
2.東京を狙い撃ちに実施された不合理な税制改革による減収
ふるさと納税、法人住民税の一部国税化、地方消費税の交付金の見直しなどの影響により、合計39億円もの減収を見込まざるを得ない。
一方で、納税義務者の増による特別区民税の増収、法人住民税や固定資産税の伸びによる特別区財政調整交付金の増などがあった。
しかし税制改革による減収は補いきれず、特別区債への依存度が高まり、区債の残高は300億円を超えた。
3.5年連続財政調整基金の取り崩しを行わない予算編成
新規拡充事業223事業、62億円分を計上したが、基金や補助金の活用などにより一般財源負担を大きくすることはなく、5年連続して財政調整基金を取り崩さずに予算を計上することができた。
歳出の内容については、予算特別委員会にて議論を深めていきたいと思っております。
(私どもの会派からは、河原弘明議員、星京子議員が委員として登壇します)
今回取り上げたいのは歳入面、予算案の特長の2についてです。
東京を狙い撃ちにした税制改革は不合理なものと言わざるを得ず、区財政に多大な影響を与えることとなっております。
①ふるさと納税
ふるさと納税制度は、
(1)納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度である
(2)生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度である
(3)自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと
とう3つの意義があります。
この制度の趣旨には私自身も大いに賛同できるところです。
しかしながら、現状は
・返礼品を目的にした寄附が増えており、制度の趣旨を逸脱
・過剰な返礼品による見返りを受けた住民のみが実質税負担減の恩恵を受け、その他の住民は失われた税収入分の行政サービスの低下を甘受する不公平が生じている
・一部の限られた自治体に寄附が集中し、「返礼品競争」に勝つ一方で、多くの自治体で返礼品の経費負担や減収に苦しんでいる
・「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の適用により、国が負担すべき所得税控除分まで、地方自治体の個人住民税控除で負担していることは明らかに問題
・本来、税源の偏在是正措置は、法人住民税の国税化やふるさと納税をはじめとした方策ではなく、全体の地方税財源を拡充することや地方交付税の法定率を上げるなど、国の責任において実施すべき
という問題があります。
※29年3月13日特別区長会要望より抜粋
豊島区における影響額は年々大きくなっております。
26年 約1,900万円
27年 約6,300万円
28年 約3億8,200万円
29年 約6億4,900万円
30年 約8億1,000万円(見込)
過剰な返礼品競争に対して、ようやく国も問題視して歯止めをかけようとしていますが、効果はまだ分かりません。
いずれにしても上記に挙げた問題点を解決するような形での制度運用を求めます。
ちなみに本区でも今年からふるさと納税の新たな取組みを行います。
「トキワ荘関連施設整備基金」の設置(現在条例案が上程中)に伴い、ふるさと納税による寄付を募っているところです。
3万円以上のご寄付を頂いた場合、トキワ荘復元施設等へ設置する寄付者銘板に名前等を記名いたします。
詳しくは区のHPをご覧ください⇒トキワ荘関連施設整備基金について
②地方消費税の清算基準見直しの影響
29年第4回定例会最終日に、都民ファーストの会豊島区議団が提案者となった
「地方消費税の清算基準の見直しに関する意見書」が、賛成多数で可決されました。
地方自治体の必要財源は国が責任を持って確保するのが本来のあり方であり、地方税を地方自治体の財源調整に用いる動きには疑問があります。
この不合理な税制改正により、東京全体では1,000億円の減収、豊島区では12億円もの減収となってしまいます。
更に消費税10%増税時で16億円へと減収幅が広がる見込み。
詳細は私のBlogをご覧下さい⇒
「都民ファーストの会としまが提案者となった「地方消費税の清算基準の見直しに関する意見書」が議決
③法人住民税の一部国税化
28年度税制改正において、法人住民税の国税化がさらに拡大されることが決まりました。
この更なる国税化の措置により、区の歳入減は32年度から拡大します。
想定される影響は、23区全体で現在は628億円、消費税10%増税時で1,012億円。
豊島区への影響は、現在は19億円、10%増税時では31億円の減収が見込まれます。
①ふるさと納税 8.1億円、②地方消費税清算基準の見直し 12億円、③法人住民税の一部国税化 19億円
30年度予算案への影響は上記合計の39.1億円もの減収額となります。
国は「地方創生」の名の下で、都市と地方の税源偏在の是正を東京から一方的に財源を奪う形で進めてきています。
しかしながらこの考えは、人口や企業が極端に集中することによる大都市特有の膨大な行政需要が全く考慮されておらず、さらに地方の自主財源である地方税を充実されるという地方分権の流れに逆行するものです。
平成元年以降の国による不合理な税制度の見直しの流れは、平成30年1月に東京都が作成した小冊子に分かりやすく掲載されています。
是非ご一読ください。
7頁目をご覧いただくと、地方交付税で既に一人当たりの税収格差は調整済みということが分かります。
都市vs地方の構図になっていること自体がおかしく、地方の自主財源である地方税を充実させるなど税源の偏在是正措置は国の責任において実施すべきものです。
⇒平成30年1月東京都「都民の税金が奪われる! 東京都の主張~平成31年度税制改正に向けて~」
東京23区の大学のみ定員抑制をするということが決まるなど、東京vs地方のような構図を作られてしまうのは残念に思います。
過去blog⇒30年2/9「東京23区の大学の定員抑制に反対するシンポジウム~これでいいのか⁉︎地方創生、大学のあり方~」
東京の力を削いで国内で平均化を図ることが本当に国益なのでしょうか。
東京から税源を奪い、東京23区の大学の定員を抑制する、地方創生がこのやり方で実現するのでしょうか。
宮崎市日南市など、そのような方法に頼らずとも地方創生を実現している自治体はあります。
地方の大学でも、秋田県の国際教養大学や石川県の金沢工業大学など、競争力をもつ大学は存在します。
日本全体をよくするためにどのような方策が必要なのかを考える必要があります。