昨日(12/3)、今年(2018年)の「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表された。
年間大賞は、平昌オリンピックで銅メダルを獲得した、女子カーリング日本代表チームが、
頻繁に使っていた言葉「そだねー」だったが、
ベスト10に選ばれた言葉の中で、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」というものが有る。
・第35回(2018年)ユーキャン新語・流行語大賞
・そだねー(年間大賞)
・eスポーツ
・(大迫)半端ないって
・おっさんずラブ
・ご飯論法
・災害級の暑さ
・スーパーボランティア
・奈良判定
・ボーっと生きてんじゃねーよ!
(流行語大賞の表彰式で並ぶ、カーリング日本代表の本橋麻里選手と、チコちゃん)
NHKで放送されている、『チコちゃんに叱られる!』という番組で、
番組のキャラクター「チコちゃん」が使っている、決め台詞(?)である。
今、その「チコちゃん」が大人気を集めているが、『チコちゃんに叱られる!』とは、一体、どんな番組なのであろうか?
<「永遠の5歳」の少女(?)チコちゃんが、素朴なギモンと向き合う、NHK『チコちゃんに叱られる!』>
『チコちゃんに叱られる!』は、「好奇心旺盛で、何でも知りたがる5歳の少女」という設定の、
着ぐるみの女の子(?)チコちゃんが、様々な素朴な疑問を大人にぶつけ、
質問された大人がそれに答えられないと、怒りのあまり(?)、チコちゃんの顔が巨大化し、
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
と激怒するが、
その後に、その疑問に対して的確な回答をする専門家による解説VTRが流れる、
というのが、毎回の番組の基本的な流れである。
『チコちゃんに叱られる!』の番組MCは、ナインティナインの岡村隆史で、
岡村隆史の他、毎回、男女1名ずつのゲストが招かれ、
その3人が交代で、チコちゃんに対する質問に答えて行くという形式である。
しかし、チコちゃんの質問は、なかなか鋭く、
質問された大人は、答えに詰まってしまう場合が多い。
或いは、苦し紛れに、テキトーな答えを言ったりする。
すると、チコちゃんの怒りが爆発し、
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
と、質問にまともに答えられなかった人は、容赦なくチコちゃんに叱られてしまうわけである。
このチコちゃんと、質問される大人達のやり取りや、チコちゃんの個性的なキャラクター、
そして、チコちゃんによる質問が、なかなか為になる内容ばかりで、非常に面白い。
かくして、『チコちゃんに叱られる!』は、NHKのバラエティ番組としては、『ブラタモリ』以来の大ヒットを記録している。
<チコちゃんは大洋ファン!!とても渋い趣味(?)の5歳の少女>
ところで、『チコちゃんに叱られる!』のメイン・キャラクター、チコちゃんは、
とても野球が大好きな女の子である。
従って、『チコちゃんに叱られる!』では、頻繁に野球に関するネタが取り上げられる。
例えば、レギュラー放送の第1回(2018/4/13)では、
「何で、プロ野球では優勝すると、胴上げするの?」
という質問が有った。
ゲストの佐藤健は、「喜びを表現するため」と答えたが、
チコちゃんは、「何で喜びを表現すると、人を放り投げるの?」と畳み掛ける。
その質問に、佐藤健は絶句してしまったのだが、
チコちゃんは「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と、佐藤健を叱りつけた。
ちなみに、その質問の答えとは、
「胴上げをするのは、異常な状態の人を、シラフに戻すため」
というものであった。
元々、民俗学的には、物を空中に放り投げるというのは、
悪い物を取り払うといういう意味が有ったそうである(民俗学者の新谷尚紀教授の解説)。
それが転じて、例えば、異常な興奮状態にある人には、悪い憑き物が憑いていると考えられ、
その、異常な興奮状態にある人を空中に放り投げて、
その人から、悪い憑き物を追い払うという意味で、胴上げが行われるようになった。
例えば、婚礼の儀式が終わった直後の新郎を放り投げるという風習が残る地方も有り、
今でも、新潟県糸魚川市の「裸胴上げ祭り」や、福井県鯖江市の「殿上まいり」では、
最後に、厄落としのために、人を放り投げているそうである。
しかし、それがいつの間にか、喜びのあまり人を胴上げするという習慣が始まり、
プロ野球では、1950(昭和25)年、セ・リーグの初代優勝チーム、松竹ロビンスが、優勝の際に小西得郎監督を胴上げした事が、
プロ野球界における、胴上げの起源とされている。
(セ・リーグ初代優勝チーム、松竹ロビンス。先頭は小西得郎監督(明治OB))
この時に、チコちゃんから衝撃の発言が有った。
「松竹ロビンスって、(古すぎて)懐かしくもないもんね。ギリ、大洋ホエールズかな。ヒゲのシピンとか、良かったよね」
と、何と、チコちゃんは大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)のファンである事をカミングアウトしたのである。
なお、チコちゃんは「永遠の5歳」という設定だが、チコちゃんの声を担当しているのは、現在55歳の木村祐一との事である。
木村祐一が、変声機を使って、チコちゃんの声を喋っているため、どうしても、5歳の女の子にはそぐわないような話が沢山出てくる。
それでも、表向きはチコちゃんは5歳なので、そのギャップ(?)が、また面白いのである。
<チコちゃんは筒香の大ファン!そして番組スタッフは遂にシピンに会いにアメリカへ…>
(大洋ホエールズのエース、「カミソリシュート」の平松政次)
(大洋ホエールズの「ライオン丸」こと、ジョン・シピン選手)
大洋ホエールズ以来のベイスターズファン(?)であり、
カミソリシュートの平松政次や、「ライオン丸」ことシピンなどの、大洋ホエールズの名選手が好きだったたと語るチコちゃんは、
現在は、横浜DeNAベイスターズの主砲・筒香嘉智選手の大ファンとの事である。
(横浜DeNAベイスターズの主砲・筒香嘉智選手)
ゲストの河北麻友子が、取材で会って以来、筒香のファンになったと話すと、
チコちゃんは「それ、あたしと被ってんのよー」と言っていた。
そして、チコちゃんは「筒香可愛い!婿(むこ)にしたい感じ」と、筒香が好きな理由を語っていたが、
5歳の少女らしからぬ感想である。
そして、チコちゃんが大洋ファンであるという発言をして、シピンの事を度々話しているのを汲んで、
番組スタッフが、「クジラは、何で身体が大きいの?」という質問に対し、
現在、アメリカに住んでいるという、シピン氏に、わざわざ取材に行っていたのには驚いた。
クジラといえばホエールズ、ホエールズといえばシピン、という事から、シピンに会いに行ったとの事だが、
シピンは、「クジラは、沢山食べるから、身体が大きくなった」という正解を、ズバリと言い当てていた。
流石は、元大洋ホエールズのスター選手の面目躍如、といった所である(2018/5/5の放送)。
ちなみに、この正解VTRの場面では、
わざわざ、かつての大洋ホエールズの応援歌「行くぞ大洋」をBGMとして流すという念入りさで、
『チコちゃんに叱られる』のスタッフは、古くからの大洋ファンをニヤリとさせた。
このような、わかる人にはわかるという芸の細かさも、『チコちゃんに叱られる』の魅力の一つであろう。
ちなみに、私も大洋ホエールズ以来の横浜(DeNA)ベイスターズファンなので、
そういう意味でも、『チコちゃんに叱られる!』は、横浜ネタが多く、非常に面白く見ている次第である。
(1978(昭和53)年、巨人に移籍したシピンは長髪とヒゲをバッサリ)
(巨人移籍後の1978(昭和53)年、大洋・門田富昭投手に死球を当てられ、激高したシピンは乱闘事件を起こす)
<野球の応援「337拍子」の由来は、明治大学応援団だった!!>
そして、野球の応援でお馴染みの「337拍子」の由来って何?と、
チコちゃんがゲストの北斗晶に質問し、北斗晶が答える事が出来ず、
チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られていたが、
この答えは、何と「明治大学応援団の、一人の天才が思いついたから」というものであった。
1921(大正10)年、明治大学応援団が誕生したが、
その際に、明治大学応援団の初代団長、相馬基が、早稲田大学との対抗試合の際に337拍子を思いついたそうである。
(神戸大学で、日本民族音楽を研究している岩井正浩名誉教授による説)
当時の応援は、
「勝った方がいい!勝った方がいいったら、勝った方がいい!」
という、まるでラップのような掛け声であった。
当初は、掛け声が先で、それに合わせて掛け声と手拍子が生まれ、
いつしか掛け声が無くなり、手拍子だけが残ったそうである。
そして、戦後の東京六大学野球の応援をキッカケに、全国に広まり、
それ以降、野球の応援として、完全に定着するに至った。
この、「勝った方がいい!勝った方がいいったら、勝った方がいい!」という、当時の応援を、
現在の現役の明治の応援団が再現していたが、かなり苦戦していた。
しかし、約100年後にも、自分の考案した応援が残っているのを知ったら、
泉下の相馬基も、かなり喜ぶのではないだろうか(2018/6/15の放送)
なお、337拍子は、歌のリズムとしても非常に素晴らしく、
ピンクレディーの『サウスポー』や、X JAPANの『紅』(いずれも、高校野球の応援歌の定番である)、
そして、ZARDの『負けないで』も、よく聞くと337拍子が使われているとの事である。
そう考えると、337拍子を考案した相馬基の功績は、途轍もなく大きいものである。
それにしても、まさか『チコちゃんに叱られる!』で、大洋ホエールズのネタに続き、
東京六大学野球のネタまで出てくるとは、思ってもいなかった。
『チコちゃんに叱られる!』は、何処まで私のツボを心得ているのかと、思わず言いたくなってしまう。
<番組を支える面々、塚原愛アナウンサー、森田美由紀アナウンサーのナレーション、江戸川の黒いカラス・キョエちゃん>
『チコちゃんに叱られる!』は、MCの岡村隆史の他、NHKの塚原愛アナウンサーもアシスタントとして出演し、
補足説明などを、的確に行い、番組の進行を支えているが、
何と言っても、ナレーションの、NHK・森田美由紀アナウンサーが素晴らしい。
森田美由紀アナウンサーは、持ち前の落ち着いた口調で、淡々とナレーションを務めているが、
その際に、「〇〇が何かも知らず、やれ△△だ、やれ◇◇だと言っている日本人の、何と多い事か」と、
例の冷静な口調で、毒舌を吐いている。
これが、良い味を出していて、非常に面白い。
チコちゃんからの質問を、街頭インタビューで質問しても、大体の人が答えられないのだが、
その際に、森田アナがナレーションで、上記の毒舌を吐くわけである。
それもまた、番組の大きな魅力の一つとなっている。
そして、番組の最後、チコちゃんと岡村隆史が、縁側に座り、視聴者からのハガキ(必ず5歳と書くのが決まり)を読むのだが、
そのハガキをくわえているのが、江戸川の黒いカラス・キョエちゃんである。
キョエちゃんは、当初は「バカー!」しか言っていなかったが、最近は饒舌になり、歌まで披露している(これが結構上手い)。
という事で、非常に濃い内容で、大人から子供まで楽しめる『チコちゃんに叱られる!』!を、まだ見ていない方は、是非ともご覧頂きたいものである。
私も、これからもとても楽しみにしている。