南極:50年間氷の下に閉じ込められても海底では海洋生物が繁殖している
2022年02月07日(月) 記入者: Virgilio Marin

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ハレー彗星6号観測所と北裂け目との位置関係を示す地図。(画像出典:英国南極地域観測所)
 

南極の海底には、豊かな海の生物が生息して居る事とが研究者らによって明らかにされた。

 

先月、南極大陸北部のブラント棚からNY市の2倍以上の大きさの氷山が割れ、50年間氷の下に閉じ込められていた海洋生物の存在が明らかになったのである。

 

2021年2月26日、南極大陸のブラント棚氷から割れた巨大な氷山。 (画像引用元:contains modified Copernicus Sentinel data (2021), processed by ESA, CC BY-SA 3.0 IGO)
 

 

イソギンチャクや濾過摂食動物は、巨大な氷山ができたばかりの南極のブラント棚から数十メートル下の岩にしがみついている。(画像提供:アルフレッド・ヴェゲナー研究所)
 

50年間氷の下に閉じ込められていた南極の海洋生物を科学者が発見
 

「A-74」と呼ばれるこの氷山はウェッデル海に流れ込み、南極氷床には狭い隙間が残された。

 

ポーラースターン探検隊、砕けた巨大氷山を探索
 

研究者達は、ドイツの調査船ポーラシュテルン号でこの開口部に入るという貴重な機会を得ました。

 

 

海底の写真を撮った処、軟体動物、濾過性生物、ナマコ、魚5種、イカ2種が海面下18マイルに生息し、にぎやかなコミュニティーを形成して居る事が判明した。

このミッションを主導したドイツのアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所は「海底からの最初の画像は、数十年間厚い氷に覆われていた地域における驚くべきレベルの生物多様性を明らかにした」と声明を発表している。



海洋生物はどこから食料を調達しているのかという疑問を投げかける発見

 

この発見は、サンゴや海綿などの静止型濾過摂食者の存在からして、非常に驚くべきものである。

 

これらの海洋生物は、植物プランクトンと呼ばれる微細な海洋藻類の形で、栄養分が運ばれてくるのを待つことで餌をとっています。

 

南極大陸の氷床下で発見された生命体は「そこに存在しないはず」のものだった

 

植物プランクトンは太陽が大好きで、より多くの日光を受ける事ができる海の上部に浮遊する傾向があります。

 

その為、氷床下で上から降ってくる餌に依存する海洋生物は、珍しいといえる。

 

南極大陸の氷床下で発見された生命体は「そこに存在しないはず」のものだった


フィルターフィーダーが、どの様にして生存しているのかについて、研究者らは、植物プランクトンまたは上空の氷から流出した有機粒子の形で、氷河の下数千フィートに引きずられ、底棲生物の餌になっているのではないかと推測している。

 

  

Filter feeder


研究者たちは現在、海底の堆積物サンプルを調査し、水の栄養成分について更に詳しく調べている。

 

また、ウェッデル海に設置された調査ブイから、水温や塩分、海流速度などのデータを収集している。

 

これらのデータを元に、南極大陸の気候モデルを改良し、数年後に南極大陸がどうなっているかを予測することができるのです。

 



南極の生物は水の世界に住む宇宙人の存在を示唆

 

南極氷床の遥か下に、動かない海洋生物の豊かなコミュニティを発見する事は、必ずしも前例が有る訳ではない。

 

先月、研究者達はウェッデル海南東部のフィルヒナー・ロンネ棚から半マイル以上下にある岩に付着した海綿やその他の固定濾過生物のコロニーを発見した。

 


研究者達は棚氷に穴を開け、海底の堆積物サンプルを採取する為にカメラを落とした。

 

フィルヒナー・ロンネ棚氷の900mのボーリング孔を進む英国南極観測所のカメラ(画像内の動物は発見とは関係ない)Huw Griffiths博士/英国南極地域観測隊

 

その結果、16個の海綿と22個のフジツボと思われる未同定の生物を含む、海洋生物に覆われた巨石が撮影されました。

この海域で、転石群落が発見されたのは初めてのことです。

 

 

又、この岩石は光合成を行う生物が生息する場所から160マイル(約1300km)離れた場所にあり、定常的な生物が存在する可能性は極めて低いとしています。

南極大陸の地下にこの様な生物が存在すると云う事実は、木星のエウロパや土星のタイタン、エンケラドスに宇宙人が存在する可能性を後押しする筈だ。

 

これらの氷の月は、水に覆われ、地質学的に活発であると考えられている為、居住可能である可能性がある。

 

地球でも、地下火山や深海の噴出孔の近くで生命体が繁栄していることが確認されている。

 

現在、アメリカ航空宇宙局(NASA)はエウロパの表面を詳細に調査するミッションに取り組んでいる。

 

このミッションの探査機(「エウロパ・クリッパー」と呼ばれる)は、この10年の半ばに打ち上げられ、エウロパの傍を飛行して、居住可能か否かを調査する予定だ。