天の川銀河の中心から吹き出す1,000本の不思議な電波エネルギーのフィラメントを発見しました
2022年2月5日(土) by: Kevin Hughes

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世界最大級の電波望遠鏡群を用いて、天の川銀河の中心部を観測した処、何千本もの謎の紐状構造が見付かりました。

 

  

 

天文学者が銀河の中心からはじき出される1,000本の奇妙な電波エネルギーの「フィラメント」を発見
 

 

これらの構造は電波フィラメントとも呼ばれ、銀河の中心から細長く伸びており、その長さは最大150光年、地球と最も近い隣の星系であるプロキシマ・ケンタウリとの距離の約40倍にも及びます。

天体物理学誌』と『天体物理学誌レターズ』に掲載される予定の2つの研究によると、フィラメントの中には対になっているものと、ハープの弦の様に等間隔に並んでいるものが在る事が判りました。

 

 

これらのフィラメントは全て、光速に近いスピードで磁場を通過する何十億もの電子によって生み出されたエネルギーで光っているのだろう。

 


この様なフィラメント銀河系中心に存在する事は何十年も前から指摘されていましたが、今回、南アフリカの電波望遠鏡『MeerKAT』による高解像度の観測により、この細長い構造がこれまで考えられていたよりも 10 倍も多く存在する事が明らかにされました。

 

 

この奇妙な構造を大量に研究する事で、これらのフィラメントが何であり、どの様うに作られたかを完全に解明する事ができるかも知れません。

 


「数本のフィラメント調べただけでは

「それが何であり何処から来たのかについて」

本当の結論を出すことは困難です」

と、この研究の主執筆者で、イリノイ州エバンストンにあるノースウェスタン大学の物理・天文学の教授でもあるファラッド・ユセフ・ザデ教授は語っている。


 

 


天の川の中心には不可解な天体がひしめいている

 

「そして今、私達は終に」

「その全体像を観る事ができたのです」

「これは、これらの構造の理解を」

「更に深める為の分水嶺です」



天の川の中心部には、ガスや塵に覆われた不可解な天体がひしめいており、可視光の波長では適切に調べることができない。

 

しかし、銀河の中心から放射される強力な電波に注目すると、そこで起きている強力な構造や相互作用の一端を垣間見る事ができるのです。

 

(関連記事:天の川銀河には地球の様な惑星が沢山有る可能性、研究者が示唆


今回の研究では、南アフリカの北ケープ州にある64台のアンテナを並べたMeerKAT電波望遠鏡を使い、3年間で200時間、銀河系中心の電波活動を調べました。

 

これらの調査から、研究者は20の別々の観測からなるモザイクを作成し、それぞれが電波天体の明確なセクションに焦点を当てました。

 

この画像は、200時間以上かけて20回の観測を行い、モザイク状にしたものです。(提供:I Heywood, SARAO)


MeerKAT旧称:Karoo Array Telescope)は、2018年に導入された電波望遠鏡で、64本のアンテナは直径8kmをカバーします。

 

 

電波望遠鏡の画像から、天の川の中心が驚くほど詳細にわかる

 

この種の望遠鏡の中で最も感度が高く、今後10年以内に南アフリカとオーストラリアに建設されるスクエアキロメートルアレイ電波望遠鏡の先駆け的存在でもあります。

 


その結果、明るい超新星残骸や新しい星が誕生する宇宙空間のガス領域など、既知の電波源を数多くとらえ、約1000個の電波フィラメントの謎の指紋を含むパノラマが完成した。

 


宇宙線がつくるフィラメント

 

1980年代初頭に高度に組織化された磁気フィラメントを最初に発見したユセフ・ザデによれば、この指状のフィラメントは、太陽系外からやってくる高エネルギー放射線である宇宙線によって生成されたものだという。

 

これまでの研究により、天の川の中心に潜む何かが巨大な粒子加速器として機能し、宇宙線を宇宙に向けて発射し続けていることが明らかになっているが、その発生源はまだ謎に包まれている。

 

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その証拠のひとつが、銀河中心から吹き出す一対の巨大な電波泡だ。一方は銀河平面より高く、他方は銀河平面より低くなっている。

 

この電波の泡は、銀河の中心部にあるブラックホールからの古い爆発によって作られたと考えられています。


今回の研究で新たに検出された電波フィラメントの多くは、これらの巨大な電波バブルの空洞の中に降りてきており、このストランド状のフィラメントが、数百万年前に電波バブルを膨らませたのと同じ古代のブラックホール活動の爆発によって作られた可能性があるとのことです。

 

「フィラメントが」

クラスターを形成する理由も」

「フィラメントが分離する仕組みも」

未だ判って居ませんし」

規則的な間隔がどの様にして」

生じるのかも判って居ません


と、ユセフ・ザデ教授は言いました。

「私達が一つの疑問に答える度に」

「他の複数の疑問が発生するのです」

 


研究者達は、この地域の将来の電波調査は、フィラメントが移動しているか否か、或いは時間と共に位置が変化しているか否かに集中するだろうと付け加えました。

 

 

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