神戸市垂水区で英語リトミック教室と
英語絵本の広場を主宰しています
講師のキディ先生 こと 木戸あきこです
今年は寅年なので年明けに
トラが出てくる英語絵本について書きました
その時、書きながらふとトラが出てくると言えばと
有名な絵本ちびくろサンボを思い出して
載せたのですが
差別問題で一時絶版になってしまい、
その後また復刊したという事実に行きつきました
この絶版騒動について調べてみたら
より詳しく知りたくなってしまって
もっと調べて後でゆっくりブログに書こう思ったら
なんと今になってしまいました
こちらは
皆が知ってる一番メジャーな日本語訳の絵本
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アメリカ版の一番メジャーな絵本と思われるものはこちら
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ちびくろサンボがジャングルで4匹のトラに出会い、
食べられそうになってしまうところを
サンボが身に付けている物を渡すことで
何とか食べられずに済みますが
次こそ食べられてしまうんじゃないかというところで
トラたちがケンカを始め、ぐるぐる回って
なんとトラたちがバターに変わってしまいます。
そして、最後は家族3人で
そのトラのバターを使って作ったホットケーキを
おいしくいただくというお話です
このお話を読んでもらった当時、
子供ながらにヒヤヒヤしながらも
話の展開や結末の発想がユニークで
とても印象に残った絵本でした
子供の頃に、この絵本に魅せられ、
物語の世界観を楽しんできた人は
私の他にもたくさんいると思います
実際に日本では教科書にも採用され
世界中で愛される人気絵本でした
ところが、
アメリカやカナダで
黒人差別を助長する図書だと言われて
一時は絶版になるという悲運を辿ります
日本もそれに追従する形となり、
1988年に絶版措置が取られ、
そして、1999年に復刊します。
この差別問題、絶版問題について調べてみると
何が問題だったか少し見えてきました
こちらの本を読んで書いています
まず「差別だ」と主張している人々が
「どこに差別を感じるか」
主に多くの人が指摘しているのはこの3点。
1.登場人物の名前
サンボ、マンボ、ジャンボは差別語である
2.イラスト
黒人にとって不快なステレオタイプである
3.ストーリー
黒人は「愚か」で、「未開」、または「ずるがしこい」というマイナスイメージを与える
では、作者ヘレン・バンナーマンと
ちびくろサンボ誕生秘話について
触れてみたいと思います
作者のヘレンはスコットランドのエジンバラ生まれで
結婚して夫の仕事の関係でインドへ渡りました。
そしてその後、二男二女に恵まれます
ある日、ヘレンが
インドの避暑地コダイに子供たちを残して、
夫のいるインド南部のマドラスへ向かいました。
その旅の途中で頭に物語が浮かび、
これを手作り絵本にして、
コダイにいる子供たちへ送りました
このお話が「ちびくろサンボ」です
元々は出版する予定のなかった
私的な絵本だったんです
The Story of Little Black Sambo
こちらは作者ヘレン・バンナーマン自身による挿絵の
オリジナルバージョンです
(原書では作者自身のイラストのものは今は無いようです)
ですが、今は世界中で作者のオリジナルの物とは違う
色んなバージョンの絵本が販売されています
実は作者ヘレンにこの絵本の出版を勧めた友人、ボンド婦人が
本国イギリスで出版社との交渉に当たっていたのですが、
作者の意思に反して版権を売ってしまったんです
作者本人からしたら信頼して任せしたのに
「えぇ~!!」て感じですよね
そして、版権を譲渡してからは
質の悪い「ちびくろサンボ」が多数出版されてしまった
ということです
元々はサンボはインドの子供だったのに
サンボがアフリカ系の子供のように
描かれることが多くなってしまい、
その中に差別的に感じさせる
ヒドイ物もあったんだとか
右は作者オリジナルのイラスト
左は日本で一番メジャーなフランク・ドビアスのイラスト
そうした事情から差別だと指摘されていた3点
1.登場人物の名前
2.イラスト
3.ストーリーのうち
初めは②のイラストが問題視されたようです
アメリカの黒人にとって、登場人物の特徴が
不快なステレオタイプであるということ。
特にお母さんのイラスト
太っていて頭にバンダナを巻いているのは
南北戦争時代の黒人メイドを象徴していると
批判されたようです。
そして、③のストーリーに対する批判は少なかったものの、
そちらもいくつかあったようです。
・人物の衣服はまともなのに、裸足であること
・落ちたバターを使う不衛生さ
・ホットケーキをたくさん食べたことについては黒人は異常な食欲の持ち主である など
これらの批判は
質の悪い海賊版が出版されたことに関係なく
ストーリー自体に問題があるとの指摘があったようです
こういった現実にはあり得ないようなストーリーは
子供向けのお話には多いので
私は問題だとは感じませんが、
一度誰かが「差別だ」というと、
粗探しをする人が出てくるのかもしれませんね
そして最後に①の登場人物の名前に対しての批判ですが、
「サンボ」「マンボ」「ジャンボ」が差別語であるということが、
日本で絶版になった大きな要因だったようですが
差別問題が出てきた当初、アメリカでは
名前に関しては差別語であるという認識はなかったようです。
ところが
「ちびくろサンボ」反対キャンペーンの中で次第に
「サンボ=差別語」となり、
「黒人全体をさす差別用語」として全国化したと
推測されています。
「ジャンボ」「マンボ」は
スワヒリ語の挨拶の言葉でもあるので
アフリカっぽい響きを感じますが
どうやら、こちらもインドと関係があるようです
当時、作者ヘレンはインドに住んでいましたが
インド北方のヒマラヤ・グルカ文化圏(狭義にはシェルパ語圏)には
「サンボ」という名前が多く見られ
「ジャンボ」「マンボ」もよくある名前だそうです
(シェルパ語はチベット語の一方言)
また、トラが登場しますが
アフリカにはトラはいませんよね
やはりインドのお話なんですね
さて、日本での「ちびくろサンボ」絶版騒動ですが
この最大の問題点は
海外でどのような事が起こっているのか
何が差別なのかをしっかり議論されないまま
抗議団体から抗議を受けて
出版社が絶版にしてしまったことだそうです
差別を指摘する人権団体などは
当事者がどう思っているのかに関わりなく
「差別である」とする論法を用いるので、
議論に慣れていないと
言い負かされてしまうとのこと
実際には黒人と言っても
様々な価値観、バックグラウンドを持つ人々がいて
ちびくろサンボを見て不快に感じる人もいれば
親しみを感じる人も多数いるようですが
あたかも全員が不快感を感じているかのように
一括りにしてしまったのは問題ですね
調べてみたら、
ちびくろサンボを絶版に追い込んだ団体は
様々な漫画や本、キャラクターなどに対して抗議文を送り
表現の修正や出荷停止、販売中止などになったものが
たくさんありました
多くの人が「差別」と感じないものにまで
当事者に代わって「差別だ」と指摘することで
逆に差別を生んでいるようにも感じてしまうのは
私だけでしょうか
さて、その後のちびくろサンボですが
まずは「差別」に配慮する形で
さまざまな改作本が出版されました。
そして、その後日本では1999年に復刊しましたやはり復活を待ち望む声は多かったんですね
長々と書いてしまいましたが
今日はこの辺で終わりにします
(まだ、あるんかいって)
次は改作本について書こうと思います
最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました