今回の野球関係の仕事で得られた大事な教訓:「通訳に簡単な仕事はない」
先週、野球関係の方のインタビューの通訳をするというお仕事がありました。
お仕事自体はとても楽しく進み、良い経験をさせていただきました。
その様子は、先日ブログに書いたとおりです。
ここで書いたとおり、現場はとても和やかでリラックスムード、とても楽しく仕事をさせていただきました。
しかし、仕事の内容については、個人的にはとても難しいものでした。
それは、私自身、野球をほとんど知らないためでした。
個人的には野球を見たこともありますし、子供の頃はプレーもしたことがあります。
基本的なルールは知っていますし、大リーグの試合も、アメリカで実際に見に入ったことがありますし、最近の大谷さんの活躍もあり、大リーグのニュースも耳にします。
しかし、その程度。
どのチームが強いかくらいは知っていますが、有名な選手などは知りませんし、ポジション名やプレーの名称など、ほとんど知らない状態。
ですので、最初、このお仕事のお話をいただいたとき、引き受けるかどうか躊躇したのでした。
「果たして、自分に通訳の役目が果たせるのか・・・」
翻訳の仲介業者から連絡をいただいたとき、そのことはきちんと伝えたのですが、「それでも大丈夫」とのことでした。
その後、(金曜の)昼すぎに依頼主から直接電話をいただき、打ち合わせをしたときにもそのことは伝えました。
自分の出来なさ加減がどれくらい伝わったかは不明ですが、それでも依頼主は「大丈夫。簡単な話だし、リラックスしたインタビューなので、分からいことは聞いてくれてOK」とのこと。
「なんならジャージで来ていただいてもいいくらい、食事をしながらのカジュアルなインタビューだと思うので大丈夫です」と太鼓判を押していただいたので、快く引き受けたのでした。
実際、現場はとてもリラックスしたムードで、先日ブログに書いたとおり、依頼主もインタビュアーのジャーナリストさんも、ていねいに説明をしてくれたり、私の知識不足をどんどん補いながら話を進めてくださり、(おそらく)インタビュー自体は問題なく終わりました。
ギャランティーもきちんともらい、満足していただけたようでした。
それは良かったのですが、しかし、やはり、個人的には「プロの仕事」としては、やはり力不足だったなぁと思うところだけでした。
相手の話を聞きながら、フォローをしてもらいながらだったので、意思疎通という点では大丈夫だったと思います。
しかし、やはり私自身、野球知識がぜんぜん足りていませんでしたし、英語も日本語も、野球の用語を知らなさすぎでした。
ピッチャー、キャッチャー、バッターなどは分かりましたが、1塁手、外野手などなど、それから球種や控え先週、スタメンなどなど・・・
野球を知っている人であれば何ともないような言葉が、出てこないのです。
インタビューの当事者は、当然どちらも野球関係者ですのでよく分かっていて、通訳である私の方がたくさん助けられた感じでした。
用語もそうなのですが、一番困ったのが「人名」
今回のインタビューで、今有名な日米のプロ野球選手はもちろんのこと、日米球界の殿堂入りしているような、だれでも知っている人の名前(それすら私は知らない)から、話はちょっとマニアックな、でも素晴らしい選手の名前まで、さまざま出てきました。
人名って、言われたとおりに訳すのがとても難しいんですよね。
日本人の名前ならまだいいのですが(でも、アメリカでは発音がちょっと違ったり)、アメリカ人の名前だと、日本語でどう発音すればいいか分からない人が多いのです。
それは、耳で聞いての話。
ですので、スペルを言ってもらい、それを日本語っぽく言い直して・・・
そうすると、日本人の方すぐに「ああ!あの人ね!」と分かってくれる、そういった感じでした。
人名は難しい!
UnsplashのDez Hester @DezHesterが撮影した写真
さらに、話題はアメリカのハリウッド映画や書籍の話に。
もちろん野球関係の映画や書籍の話なのですが、世界的に有名な映画なのに、私は映画もあまり見てこなかったので、何の映画なのか分からない。
丁寧に、主演者や監督の名前を言ってくれたりするのですが、それがさらに私にとっては混乱の原因に!
また名前をスペルしてもらい・・・
結局、お二人それぞれが題名やストーリーから推察して「これではないか?」と思うような映画や書籍をその場でネット検索して・・・
2人で画面を「せーの」で見せ合って答え合わせをして、一致していると爆笑したり
結果的に、それすら楽しい時間にはなったのですが、一方で、通訳としての私はどうなんだろう・・・という
その場を楽しく、スムーズに進めるという意味では、なんとか依頼者の目的を果たすことはできたと思うのですが、それでもやはり、通訳の仕事としては、難しかったと感じました。
どんなに「分からなくても大丈夫」と言われた仕事でも、私としては、結局なんのことを話しているのかよく分からないまま仕事の時間が終わってしまったという感じでした。
インタビューの当事者お二人同士は(結果的に)意思疎通ができたので良かったですが。
今回の通訳の仕事で、あらためて実感したこと。
それは、通訳の仕事は「言語」だけではないということ。
言語だけの知識では、まったく仕事にならないということを改めて(身をもって)思い知ったという経験でした。
やはり通訳の仕事は奥が深い!
言語の能力でなく、その話題の内容について、幅広い知識を持っていないと、子供でも分かるような話でさえ通訳することができないということを、再認識しました。
今回得られた大事な教訓:「通訳に簡単な仕事はない」
そして、もう1つ言うと・・・
「傍から見る通訳の『簡単』と、実際の通訳の『簡単』は同じではない」ということ。
これからもますます勉強を重ねて、精進して行こうと思ったのでした。
通訳として、とても良い経験をさせていただきました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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