「1冊を翻訳するのにどれくらいかかりますか?」という質問にお答えします(出版翻訳の現場) | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

「1冊を翻訳するのにどれくらいかかりますか?」という質問にお答えします(出版翻訳の現場)

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「翻訳をやってます」と言うと、よく尋ねられる質問のひとつに、これがあります↓

 

「1冊を翻訳するのにどれくらいの時間がかかりますか?」

 

まあ、端的に言うと、原書のボリューム(何ページあるか)や内容の難易度、出版予定日などによって、締め切りまでの時間がタイトなのか、余裕を持たせてもらえるのかがバラバラです。

 

たとえば、最近(2020年1月出版)の本『WHOLE』ですと、原書をいただいてから「3カ月くらいを目処に」といった感じだったかと記憶しています。

 

また、『投資哲学を作り上げる/保守的な投資家ほどよく眠る』(パンローリング刊)は、実は2冊の原書を1冊にまとめた本で、そのうちの1冊は、わりと短い書籍(100ページ未満)だったで「1カ月くらいで」という指定だったかと思います。

 

この本の翻訳は、当初は2冊べつべつに進んでいて(実は、3冊同時進行だったのですが)、出版する段階になって、2冊をまとめようという編集の方針に変わったようで、1冊ずつ順番に出版されたわけではありませんでした。

 

私のその他の出版物については、よろしければこちらをご覧ください↓

 

丸山の出版物・My Publications | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所 (ameblo.jp)

 

ハチハチハチ

 

とまあ、こんな風に、出版物の翻訳は、締め切りがわりとふわっとした感じで設定されていて、出版社の方針や情勢などを考慮して出版の時期がずれたりすることもあるので、その都度、編集部の担当者や編集長と話し合いながら進めるというのが、私の場合は多くなっています。

 

また、自分の筆の進み具合も、いつも順調なわけではなく(他の仕事の兼ね合いで、順調に筆が進まないこともあり)、設定されている締め切り近くなると、焦ってきたり、間に合わなくて調整をお願いしたりすることもありました。

 

基本的には出版の時期が決まっていますし、自分が翻訳をして終わりというわけではなく、編集をする方のスケジュールもありますし、監修やリライトをしてもらう場合もあるので、そういう人たちのスケジュール調整もあるので、基本的には自分の締め切りはきちんと守らなければなりません。

 

余談ですが、私は守れないときもあり、そんなときには担当者にお願いするのですが(もちろん迷惑がかかっています)、毎日、「進捗はどうですか?」と電話やメールをいただいて催促を受けることもありました。

 

サザエさんに出てくる、ノリスケさんとイササカ先生のような感じですね。

 

笑いごとではないのですが・・・

 

(反省しています)

 

かたつむりかたつむりかたつむり

 

ちなみに、書籍翻訳のプロセスについて簡単にご紹介しておきますと・・・

 

実際には、書籍を翻訳すると決まってから出版に至るまで、出版社の仕事も含めるととても長い時間がかかり、多くのプロセスがあるのですが、今回は翻訳者の仕事という観点から、プロセスについてお話したいと思います。

 

これも、出版社によって、多少の違いはありますが、私の場合はだいたいこんな感じです。

 

まず、出版社から新しい書籍翻訳のプロジェクトについて依頼があります(発注)。

 

そのとき、締め切りが設定され、その日までに翻訳作業をします。

 

で、翻訳が完成して出版社に納品したらそれで終わり、というわけではありません。

 

そこで、編集者が翻訳した原稿を編集します。

 

文章が上手な翻訳者であれば、ここはスムーズにいくのでしょうけれど、私はあまり上手ではないので、ここで編集者からたくさん直してもらいます。

 

専門家に監修をしてもらう書籍の場合、(ここで前後するかもしれませんが)専門家の方に原稿を読んでもらい、間違いなどのチェックをしてもらいます。

 

私も、投資関係の書籍はその専門の方に、栄養学(『WHOLE』)の場合は医師の先生に監修をしていただきました。

 

監修は、出版社が手配してくれます。

 

(『WHOLE』の原稿チェックをしていたときの写真です)

 

 

編集や修正、手直しをしていただいた原稿(赤入れのある原稿)を戻してもらう場合もありますが、編集と監修が終わった原稿は、上の写真のような感じで出版される書籍のイメージで印刷されて、翻訳者のところに戻ってきます。

 

最終的に、編集や監修が行われた箇所に、原文と齟齬(そご)がないか、誤字・脱字がないかなどを確認します(校正)。

 

また、このあたりで、巻末などに載せる自分のプロフィール文を提出・確認したり、訳者の言葉を書くときには、このタイミングで提出することになると思います。

 

上の写真ように、この段階では、レイアウトやデザインも含め、ほぼ完成した状態になります(あとは印刷するだけみたいな)。

 

このあたりの作業は、出版社の仕事となります。

 

こうして翻訳者の最終チェックが終わり、編集長からのOKが出れば「校了」となり、ここで翻訳者の仕事は(ほぼ)終わりとなります。

 

あとは印刷されて、発売日に向けて書店に配送されるわけです。

 

基本的に、翻訳者のやることはこれ以上ないのですが、まあ1冊でも多く売れたほうがいいわけですから、個人的にもちょっと宣伝をしたりするわけです。

 

宣伝活動は、別に出版社から求められるわけではありません。あくまでも自主的にやることです。

 

ペンギンペンギンペンギン

 

とまあ、だいたいこんな流れになるのですが、翻訳をする書籍が手元に届いてから翻訳原稿を書き終えて終わり、というわけではなく、一旦翻訳原稿を提出してからも、編集後の校正やチェックなどの作業があり、それはそれで時間がかかる仕事です。

 

また、自分の作業後の編集などの作業の進捗に応じて、原稿の最終チェックなどの時間がタイトになったりすることもあり、さまざまなことでバタバタしたりします。

 

とにかく、自分ひとりで翻訳をしているわけではなく、多くの人たちとの関わりで作業が進んでいくのです。

 

しかも、みなさんがさまざまな仕事をたくさん抱えながらやっていますから、スケジュールの前後はよくありますし、柔軟に対応していくことも求められる仕事だと思います。

 

だいたいイメージがつかめましたでしょうか?

 

書籍の翻訳の仕事は、翻訳をするという本編の作業の後にも、編集や校正、チェックなどの作業があり、多くの時間と人手がかかるプロセスなのです。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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