ChatGPTに謝らせました。知識のない人がChatGPTを使うと危険!
昨日、最近よく話題になっているChatGPTを活用しているという話をしました。
その中で、もしかしたら(目ざとい人なら)気づいた人もいるかもしれませんが・・・
ChatGPTは、よく間違いをします。
エラーについては、SNSなどでも話題になっていますし、ChatGPT自身も「自分は間違うこともあるのでよく確認してください」みたいなメッセージを流してきます。
しかし、あまりにも(人間の目には)自然に思えるような返答をしてくるので、ともすると見逃しかねないと思います。
私も、ちょっと見逃してしまうところでした。
その昨日の記事はこちら↓なのですが・・・
ChatGPTを活用して稼ぎを増やす | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所 (ameblo.jp)
そのなかで、ChatGPTとの会話のスクショの中にこれがありました。
そして、気づきましたか?
念のためにChatGPTにも確認しようと思って尋ねたのでした。
あれ?ちょっと違うような気が・・・
そこで、こう質問してみました。
そうしたら、驚きの返事が返ってきたのです!
スペイン語でした
おそらく、この直前の会話が「学長」のスペイン語についてスペイン語で展開されていたからだと思います。ですので、返信がスペイン語で来るというのも、藪から棒ではないのですが・・・
それにしても、この質問の前には日本語でやりとりしていたのに・・・いきなりスペイン語で返されたので、ちょっと面食らいましたね。
AIもきまりが悪かったのでしょうか・・・
むしろ、親近感が沸きました。
ちなみに、このChatGPTの返答は、「Discuulpa」(ごめんなさい)から始まっています。
一応訳しておくと
「ごめんなさい。私の間違いでした。平成とは和暦で使用される年代のことで、2019年4月30日で終了し、これに続いて新しい令和時代が始まりました。よって、和暦に平成31年はありませんでした。平成時代の最後の年は平成30年で、グレゴリー歴の2018年に相当します。」
え?これも、何か間違っていません??
謝って訂正してくれたのはいいのですが・・・ その訂正がまたウソ!ウソ!! Mentira!
みなさんは何がウソか、見抜けましたか?
そこで、私はこう追及ました↓
2度もウソをつかれたので、私もちょっと興奮気味で、スペイン語で返してしまいましたが・・・
Sí existía 平成31年.
つまり、「いや、平成31年はありましたよ」
すると、もう1回謝ってくれました。
そしてようやく、「平成31年は2019年」だと認めてくれました。私は知っていました。
そして、要求もしていないのに、続けて昭和天皇が崩御されたあとから、上皇様が退位され、今上天皇が即位されて令和時代になったという、解説まで付け加えてくれました。
これは、謝罪の気持ちで付けてくれたのでしょうか?
最後の1文に、
Lamento el error en mi respuesta anterior. Gracias por la corrección.
(先ほどの回答に誤りがあり申し訳ありません。訂正ありがとうございます)
と、ありました。
この一連のやりとりをしてて、なんだか誰か人と話しているような気分にもなりました。
ChatGPTは、正しい答えは持っているようなのですが、そこに辿り着くまでにきちんと導いてあげないといけないようです。
どれが正しい情報でどれが間違いなのか、判断できる人でなければ使うことはできなさそうですね。
また、昨日も話しましたが、持っていない情報には答えられないようで、「分かりません」という回答が返ってくることもあります。
昨日の話のなかで、「『cinética del deporte』という講義名を採用している学校はどこかにあるか?」という、具体的な質問をしてみたのですが、回答は「ある」とでも「ない」とでもなく、次のようなものでした。(またスペイン語で、読めない方には申し訳ないです)
著作権の問題もあるので、回答全体を載せるのは控えておきますが・・・
回答は「私の言語モデルでは、大学や教育機関の具体的な講義名の情報に対するアクセス権がありません」という意味合いです。
つまり、最後まで調べてくれるわけではないのです。
ここでは正直に言ってくれているから、まあよかったと思います。
しかし、私がこういう質問をしたのには、その前段階の会話があったのです。
それは、「『運動学』という科目名は南米のスペイン語ではどうやって訳したらいいと思うか?」という質問をしたのですが、それに対する回答が、次のようなものだったのです。
「日本語の『運動学』という科目名は、南米では『cinética del deporte』と言います」というものでした。
ここで、私からちょっと意地悪な質問をしてみました
「cinética del deporte」と言うと断言しているけど(そして、確かに意味は通じるけど)、実際にそういう科目名が採用されている事例はあるのか?
採用されている場合、日本の大学で言う「運動学」に相当する科目なのか?
採用されている実績がないとすれば、その名称(訳語)で本当にイメージが伝わるのか?
そんな疑問が沸いてきたので、先ほどのような質問をしたのでした。
つまり、「『cinética del deporte』という名称の科目を提供している大学の具体例を挙げてください」
そしたら、返事はこれでした。
Lamentablemente, como modelo de lenguaje, no tengo acceso a información específica sobre los programas académicos de todas las universidades…
「実は情報を持っていません」とのことでした。
要するに、持ってない情報を、あたかも持っているかのように回答で伝えていたということです。
これでは、仕事の現場では困ります。
こうして勝手に訳したものが、適確な訳語でない場合、ChatGPTやインターネットの世界の中でボヤっとしたまま蓄積されていってしまうのです。
(実際、今、ネットで利用できる機械翻訳の現状はこれだと思います)
こういう状況が今度もっと進んでいくと、ネット上の情報(AIの情報)は、どんどん信憑性が下がっていってしまうと思います。
正しい答えもあれば、正しくない答えもある。いつ正しくて、いつ正しくないのか分からなければ、やはり信頼できませんよね。賭けになってしまいます。
そして、これが私たちが今、(特に翻訳業界で)機械翻訳や翻訳メモリを導入することで直面している大きな問題だと思います。
「情報の信頼性がどんどん下がっている。情報の質がどんどん悪くなっていっている。不純物がどんどん蓄積されている」
それから、こんなこともありました。
ChatGPTに、私が訳したスペイン語をチェックしてもらいました。
その訳文自体はここに載せることができないのですが、ある一文をChatGPTに載せて、確認してもらったのです。
(その訳文自体は、ネットで公開しても守秘義務に抵触するような性質のものではありませんでした。念のため)
すると、La oración es correcta, pero podrías hacer algunos ajustes para que suene más natural:(訳文は正しいですが、もう少し手を加えるともっと自然に聞こえる文になりますよ)と言うのです。
つまり、もっと自然に聞こえるようにするために「手を加えた」文を示してくれたと言うのです。
そして、その下に「手を加えた」と言う文が改めて載せてありました。
ところが、どこからどう見ても、私が書いた訳文と違うところが見当たらなかったのです。
そこで、こう尋ねたのです。
つまり、「あなたが私の文に手を加えたという箇所を教えてもらえませんか?」
すると、「手を加えていなかった」ということを白状したのでした。
Lo siento, no realicé ningún cambio en tu oración original. Me equivoqué al decir que la oración era correcta pero sugerí algunas mejoras para hacerla sonar más natural.
(ごめんなさい。あなたが最初の書いた文に変更点は1つもありませんでした。文は正しかったのですが、もっと自然に聞こえるようにするために改善を提案しますと言ったのは間違いでした)
なぜ「手を加えた」などと、私にウソをついたのでしょうか???
これは本当に謎!
まあ、何も手を加えていないことを認めてくれたので、気持ちは収まりましたが。
Mis disculpas por la confusión.
最後にこう謝罪していただきました。
とはいえ、ChatGPTは、うまく使えばとても便利だし、フリーランス翻訳者の強い味方になると思います。
そのとき、仕事上のルールを守ることが必須になりますので、プロフェッショナルとしてしっかりと意識を持って利用することは大事ですね。
そのために、開発途中であり、これからもどんどん進化していくであろうChatGPTについては、(ただ利用するだけでなく)その功罪やリスクについてもしっかりと勉強する責任は私たち翻訳者側にあると思います。
私たちプロの場合、クライアントという存在があり、先方にご迷惑をかけないようにすることも、大きな責任だからです。
・ChatGPTの言っていることの真偽や適格性について(利用している翻訳者自身が)責任を負う
・守秘義務などのデータ処理やプライバシーに関する義務を果たす
・総監督は翻訳者自身であり、提供する成果物の品質について総合的に責任を持つ
この3点については、機械がどんなに発達しても、最終的には人間(仕事を請け負っている翻訳者自身)が責任を追っていくのだと、最近つくづく思います(機械が責任を負えるようになるとは思えない)。
ChatGPTも使い方によってはとても有用だと思いますので、上手に使っていきたいですね。
それと同時に、ChatGPTさんにももっともっと勉強していただき、優秀になっていただけたら嬉しいです。
今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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