翻訳歴19年の翻訳者が感じる、機械翻訳・CATツールを導入して良かったと思う点【まとめ】
CATツールとは
「コンピュータ支援翻訳のツール」
という意味です
Computer-assisted translation
私が翻訳を始めたばかりのころは
まだほとんど活用されていませんでした
あれから
19年余り・・・
今では
どこの翻訳会社でも
何らかのCATツールの使用を
要件とするようになってきています
有名なところだと
Trados Studio
というやつでしょうか
他にも
Wordfast
MemoQ
Memsource
などなど
たくさんあります
どのツールを使うかは
翻訳会社によって
また
同じ翻訳会社でも
案件によって異なります
案件の性質や
元々その案件が
どのツールをベースにやっていたかにも
よるのだと思います
使い勝手は
どれでもだいたい同じだと思います
違いは
QAのやりかたや
エラーチェックレポート(LTBレポートなど)の
生成方法の違いや
オンライン/オフライン
TMの管理方法
といった
付帯業務的な部分です
ちょっと触れば
簡単に慣れるのですが
最初、その説明書を読んだり
ボタンを探したりするのが
面倒です・・・
私は最初
そういうのが面倒で
Tradosの案件か
CATツールを使わない案件しか
引受ていませんでした
しかし
受注から納品・請求までの
自動化が進むにつれて
CATツールもその一環に組み込まれる案件が増えてきて
4~5年前くらいから
もうどんなツールでも引き受けることにしました
ただ
Trados Studio以外は
すべて翻訳会社からライセンスなどを提供してもらっていますので
すべて無料で利用できるものばかりです
よく
「CATツールは使ったほうがいいですか?」
という質問を受けます
以前は
「別にいらない」
と答えていましたが
今では
「使った方がいい」
と答えています
そのメリットを
まとめておきたいと思います
思いつくままに挙げるので
網羅的ではありません
他にありましたら
是非、コメントなどで
追加をお願いいたします
重要だと思うものは
ご紹介させていただきます
【CATツールを使うメリット】
・1文抜かしたなどの訳抜けのリスクが減る
・用語集や候補が表示されるので用語や表現の統一に便利
・繰り返しや似たような表現は自動的に入力されるので、楽
・数字の写し間違いがなくなる
・同じような表現が出てきたとき、訳文を思い出す手間が省ける
・QA/エラーレポートで案件固有の用語や表現、誤字脱字のミスを可視化できる
・進捗%が表示されるので、進捗の管理や見通しを付けやすく、仕事がしやすい
逆にデメリットや使いづらい点もあります
【CATツールを使うデメリット】
・全体や前後のつながりが見えづらいので、文章としては質が低くなりかち
・1文ずつ区切られるので、特に前後の2文をあえて繋げるなどの工夫がやりづらい
・メモリ(TM)に保存されている訳語や訳文の質に引きずられる(ろくな訳語が保存されていないことがある)
・ツールによって使い方(キーボードショートカットなど)が微妙に違うので、複数のツールを同時進行で使うとタッチミスをしがち
・オンライン専用ツールだとネット環境がないとできない(セキュリティ上はメリット)
・他のソフトよりバッテリーを食うので新幹線の中での長時間作業などは要注意
CATツールで勘違いされやすいのが
自動翻訳ソフト
たとえば
Google 翻訳とか DeepL 翻訳みたいな
これらは
自分で文章を入力して
1文1文を訳してもらうツールです
CATツールは
機械に翻訳してもらうのではなく
自分が翻訳をします
どんなものか・・・
見たことのない人や
これから導入を考えている人たちのために
お見せすると・・・
こんな画面です
実際の画面は
あまりお見せすることができないのですが
まあこれくらいなら大丈夫でしょう
こんな風に
1文1文を対訳で訳していきます
訳した文は
メモリに蓄積されていきます
保存するメモリを指定するので
案件ごとにメモリを作ってもいいですし
分野別にメモリを作ってもいいですし・・・
私は
同じ金融関係でも
クライアントによって
スタイルや用語
文末処理やテイストが異なるので
クライアントごとに作っています
翻訳した文章を対訳として保存して
蓄積しながらやっていくので
繰り返しや共通点のある文章は
その都度メモリから呼び出されるので
新たに考える手間が省けていきます
メモリにどんどん蓄積されていくので
蓄積される訳文の質が低いと
質の低いメモリになってしまう
というわけです
Google翻訳なども
メモリがあって
それをAI呼び出して
翻訳してくれるわけです
詳しい仕組みは知りませんが
Googleは
恐らくネット上のあらゆる訳文や言語を拾って
蓄積していると思うので
それだけ
質が低いというか・・・
高いかもしれませんが
質の保証がないわけです
これでは
プロの仕事ではつかえない
というわけですね
私は
Google翻訳のツールも活用していますが
Googleの呼び出してきた訳が
そのまま使えるか
手を加えれば使えるか
まったく使えないか
はたまた
誤訳であるかは
私(人間)が判断しているわけです
ともかく
CATツールは
翻訳をするお手伝いをするツールであり
翻訳をしてくれるツールではありません
TRADOS(トラドス) | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所 (ameblo.jp)
とはいえ
上で述べた
メリットとデメリットを天秤にかけたとき
私の場合は
誤訳や訳抜け
統一などの観点から
ミスを減らすという意味で
CATツールを必ず使ったほうがいい
と思っています
メリットのほうが上回る
と思います
特に
プロとして
毎日大量の訳文を産出していると
数字の写し間違い
約物(句読点やカギカッコなど)の訳し間違いなど
機械でやっていれば防げるようなミスを
連発しがちです
特に疲れてくると・・・
ですから
ミスを少しでも減らすために
機械を使っていなかったならば
そこにも時間と労力を割かなければならなかった作業を減らすために
機械を導入しています
CATツールが要件とされていない案件でも
私はすべてツールを使って翻訳しています
訳語や表現の蓄積もできますし
レビューの作業もかなり楽になります
使い方が難しそう
とか
慣れるまで大変そう
と思われがちですが・・・
もちろん
少し慣れるまで練習が必要ですが
大まかな仕組みは
どのツールでも共通なので
あっという間に慣れてしまいますし
わりと簡単です
ただし
上で挙げたデメリットもあります
特に
財務レポートなど
表現の再現性の低いものや
ナラティブな文章は
あえて2文をつなげたり
分割したり
あるいは
原文にない接続詞や副詞を使って
前後関係をより立地するなど
工夫は必要です
そういう推敲作業において
CATツールはちょっと邪魔になります
でも
上で挙げたようなメリットがあり
そちらがデメリットをはるかに上回ります
ですから
私の場合は
最終的に訳文を元のファイル(形式)に戻して
文書を俯瞰しながら
推敲するという作業を欠かすことができません
パワーポイントの翻訳も
CATツールを使います
パワーポイントの場合は
特に
1文1文を訳すというよりも
そのスライドでの効果や
言葉と画像が訴える力を
しっかりと引き出さなければならないので
元のPPT形式に戻して
レビュー(推敲)をする作業は
欠かすことができません
このステップは
確かに
以前よりも時間を食う原因かもしれません
でも
その代わり
訳抜けや誤字脱字が
かなり減ったと思います
ミスを100%なくすことはできないかもしれませんが
CATツールができるミスの削減を加えることで
自分の翻訳の質が
さらにアップするのに
寄与できていると思います
以前は
スペルチェックや表現チェックに
それはそれは神経と時間をかけていましたが
今では
機械のおかげで少しそこが軽減されたと思います
その分
私は「文章」に力を入れることができるようになった
というわけです
仕事をするうえでは
1日に使える時間と体力は
限られていますからね
そういう意味では
私の場合はCATツールを導入して
かなり仕事の精度があがり
リスクの管理にも自信がついたので
(客観的に管理できるようになった)
導入して本当に良かったと思いますし
今となっては
使わない翻訳作業は
考えられません
CATツールは
それぞれの使い方があると思いますが
ミスのリスクを減らすのには
とても役立つので
みなさんも是非導入してみてください
これから翻訳者になるために
勉強をしている人は
今のうちにCATツールに慣れておくといいと思います
現場では
まず使わないということはないと思います
いきなりフル回転できますよ
最後にまとめると・・・
CATツールを導入して
総じて良かった点は
仕事が効率的になったとか
翻訳が楽になったとかいうよりは
より行き届いた丁寧な仕事ができるようになった
ということでしょうか
ちなみに
私が今使っているTradosは
SDL Trados Studio 2015 Freelance
というやつです
ちょっと古めですが
とても頼れます
あとは
翻訳会社至急のツールが
いくつか入っていたり
オンラインで利用できたりしています
今日も最後までお読みくださり
ありがとうございました
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