昔の記事ですが音の基準レベルについてでも同じ内容に触れています、音声出力レベルがラインにしては小さいしマイクにしては大きい問題と言うのがあります。
この代表格と言うべきはSHUREの安価なワイヤレスマイクセットです。
SHURE BLX288/SM58
参考に、SHURE BLX288/SM58を取り上げます。以前から、この手のワイヤレスマイクセットの音声出力レベルに注意しなければならないな、と思っていました。たまたまこれだ!という組み合わせに遭遇しましたので解説を残します。まず、この製品のXLR出力レベルを見てみます。
SHURE BLX288/SM58の出力
XLR connector -27 dBV(into 100kΩ load)
※6.35 mm -13 dBV (into 100kΩ load)
※結論を書いてしまうと、XLRではなく6.35mmフォンから出力すればこのケースはOKですが、XLRからしか出力しないと仮定してください。
-27dBV、つまりー24.8dBuですが、この数値が実に中途半端です。(表記はMIC OUTです)この時点で、音声出力レベルがラインにしては小さいしマイクにしては大きい値だな、と感じます。
実際にNTi ML1で計ってみました。マイクで適当に一定音量でしゃべってみます。
NTi ML1でSHURE BLX288/SM58の出力を計測してみる
実際に計ってみると、-28dBuほどです。しかしマイクですので様々な音量差が発生する事でしょう。
この出力をTASCAM MZ-372というミキサに入力したいとします。以下、スペックです。
TASCAM MZ-372 XLR入力仕様
MIC
最大入力レベル = -30dBu
最小入力レベル = -65dBu
入力インピーダンス 33kΩ
LINE
既定入力レベル = -1dBu
最大入力レベル = 20dBu
入力インピーダンス 22kΩ
これだけですと分かりづらいかと思いますので図にしました。
TASCAM MZ-372の入力レベル範囲とSHURE BLX288/SM58の基準出力レベル
図にしてみると一目瞭然で、SHURE BLX288/SM58のXLR出力レベルはTASCAM MZ-372に適さない、というのが分かります。
-30~-20dBuの範囲が中心に来る機器の入力に適さない
実際に、実機で組み合わせてみますと、ちょっと声を張るだけでクリップして音がバリバリに割れてしまいます。小さな声でしゃべるには問題ありませんが、これでは普通に使用する事が出来ません。アッテネータで10数dB音声レベルを落とす必要があります。
音響設備業従事者なら、基準レベル出力が-27dBV(ー24.8dBu)の時点で何か変だな、と気が付かなければなりませんね。
ではこの出力レベルが全く使えないのかと言うとそうでもなく、ミキサによってはLINEレベルとMICレベルが被っている製品もあります。
製品によってはLINEとMICでカバーエリアが被っている場合がある
参考に、YAMAHA MA2120を取り上げます。スペックは以下です。
YAMAHA MA2120 入力仕様
MIC
感度 -56dBu(1.23mV)
規定レベル -30dBu(31.6mV)
最大ノンクリップレベル -8dBu(0.309V)
LINE
感度 -30dBV(-27.8dBu 31.6mV)
規定レベル -10dBV(-7.8dBu 316mV)
最大ノンクリップレベル +10dBV(12.2dBu 3.16V)
LINEレベルとMICレベルが被っていると音声出力レベルがラインにしては小さいしマイクにしては大きい問題に悩まされることはありません。
結論としては、機器同士を相互接続する場合は必ず仕様を確認しましょう、と言う事です。