貴婦人と一角獣 - 猫のいない世界
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あなたは、犬派ですか、それとも、猫派?
賛否両論ですね。
ほぼ、同じくらい、犬好き、猫好きがいるようです。
「かつて、人間には猫が見えていない時代があった。」
こんなこと、信じられますか、しかし事実です。
「貴婦人と一角獣」と呼ばれるタペストリーの連作がある。
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝と呼ばれ、西暦1500年ごろの作とされている。
そのころ、日本は室町時代の中ごろで、応仁の乱の少しあとで戦国時代がまもなく始まろうとしていた。
さらにすこし後の時代のタペストリーが、祇園祭の山鉾を飾っている。
6枚の連作は、それぞれ「触覚」「味覚」「臭覚」「聴覚」「視覚」の五感を表しており、最後の1枚は「わが唯一の望み」と呼ばれ、心、精神、知性を表すといわれている。
また、1844年フランスの女流作家、ジョルジュ・サンドが小説「ジャンヌ 無垢の魂をもつ野の少女」中で絶賛し、世間の知るところとなった。
新国立美術館の展示では、この6枚の連作が、ブーサック城さながらに円形に配置されて展示されている。
次の展示室では、この連作のタペストリーの背景に登場する、様々な動植物がピックアップされている。
中には、見ただけで種類が簡単に特定できる植物もある。
動物は、犬、馬、豹、兎、猿、などが登場する。
エッ、何か足りない。
チョットした衝撃であった。
猫がいない。
思わず、声をあげそうになった。
現代では、人間にとって極めて身近な動物である「猫」が登場しないのである。
中世から近世における「猫」は、魔女の使いであった。
西洋で猫がペットとして認知されたのは、19世紀に入ってからである。
それまでは、実に日陰者の動物だった。
ひどい時は、魔女裁判にかけられて断罪されている。
自分の知識に照らし合わせてみれば、納得はするのだが、なんとも不思議な気分になった。
ここで、こんな発見をするとは、思ってもみなかった。
それを差し引いても、色といい、織といい、なかなかのものである。
時間が取れる方は、日本で見られる機会は少ないと思えるので、ぜひお勧めである。
「貴婦人と一角獣展」乃木坂:国立新美術館 7/15まで
大阪:国立国際美術館巡回予定
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