あなたは人間ですか(知能とはなにか) | 元IBMerが語る現代文明論

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「あなたは人間ですか?」

この問いに自信をもって、答えられますか。

思い込んでいるだけではありませんか。
あるいは、証明可能ですか。

こんなこと聞かれること自体がおかしい、そうお思いでしょうか。
では、あなたのネット上の友人については、どうですか。

実は、落とし穴がありそうなのです。

「チューリングテスト」:
20世紀の半ばに、アラン・チューリングによって考案された機械が知能を持つかを判断するためのテスト

内容:
端末を2台用意して、端末の先には、一方はコンピュータに接続し、もう一方は人間が応答する。
それぞれの端末に向けてに同様の質問を行い、テストする側に人間に、相手がコンピュータか人間かが区別が付かなければ、そのコンピュータは知能があるといえることになる。


1980年代にすでに「人工無能」と総称されるプログラムがありました。
これは、いわゆる自動応答プログラムで、ちょっとした会話なら、かなりそれらしく応答してくれました。
なんと、TK-80BSでも実行可能でした。
私自身も、自分でハンダ付けしたTK-80BSの上で、動作させていました。

もっとも、感情や感性、などがプログラミング可能かと言ったところが議論を呼びそうですね。




また、チューリングテストに対する反証として、「中国人の部屋」問題が提唱されています。

「中国語の部屋」:
ジョン・サールが考案した思考実験

内容:
「中国語の部屋」と称する小部屋に、中国語をこれまで見たことも習ったこともない人に入ってもらう。
一方の小窓から、中国語で書かれた質問を中に入れると、中の人は、分厚いマニュアルに従って回答し、反対側の出口から、外の人に渡す。
中の人は、ひたすらマニュアルに従って、書き換えて外に渡すということを繰り返す。


実は、この無敵のマニュアルを作成した人が知能を持っているということになりそうです。

本質的に、知能を有することができるのは、コンピュータのハードウェアではなく、ソフトウェアであり、コンピュータのハードウェアをいかに制御するかということになるため、この無敵のマニュアルをソフトウェアとして搭載したコンピュータは、知能を持つことになりそうですね。
それ以前に自然言語の完全な応答が可能かといった議論も巻き起こしそうです。
この「中国語の部屋」が意味論的に中国語を理解しているかという議論になりますが、そもそも、1対1の対応マニュアルの実現性がほとんどないため、意味論的理解とは何かの定義が必要になりそうです。


「チェスなどの高度なゲームで、人間と同等にプレイすることができれば、十分知能があるといえる」
といわれたこともありましたが、1997/05/11にIBM製Deep Blueが当時のチェスチャンピオンを破っています。
また、2011年には、ワトソンと名付けられたマシンが、クイズ番組でチャンピオンになっています。
日本では、昨年、将棋ソフトとの対戦で、プロ棋士のチームがコンピュータのチームに敗北を喫しています。





さて、あなたは、あなたと仲良くしてくれている彼(彼女)が本当に生身の人間だと言い切れますか。
FaceBook・メール・ブログだけのお付き合いだとしたら、はたして本当に人間なのでしょうか。
どこかの研究所がこっそりとリサーチしていて、たまたま、あなたがその対象になってしまっている、そんなことおこっていたとしたら・・・。

心配なら、彼(彼女)に聞いてみてください。

仮に、「はい、私は人間です」と答えてくれたとしても、「クレタ人のパラドックス」と同様の問題が発生します。
つまり、彼(彼女)が人間か否かについては、主観的判断にゆだねられることになります。


私自身、私が生身の人間であることを、証明できるかどうかについては少々不安を覚えてしまいます。
もっとも、FaceBook・ブログの友人たちは直接お会いしているので、その方たちを頼れば証明してもらえますが。

安手の怪談より、背筋に冷たいものが走りそうなお話でした。

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「クレタ人のパラドックス」

「クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言った。
なお、この発言をしたクレタ人はエピメニデスであるとされる。

ここでクレタ人(エピメニデス)自身が「クレタ人は嘘つき」と言及しているため、パラドックスが発生してしまう。すなわち、

「クレタ人は嘘つきである」が本当なら、クレタ人であるエピメニデスも嘘つきであるはずで、従って「クレタ人は嘘つきである」という発言も嘘でなければならない。

しかし「クレタ人は嘘つきである」が嘘なら、クレタ人であるエピメニデスも正直者である事になる。従って彼の「クレタ人は嘘つきである」という発言も本当でなければならない。

Wikiから引用


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写真は、Deep Blueの後継機 Deep Gene
遺伝子解析などの科学分野で活躍している。

TK-80
NECの半導体部門が、1976/8/3に発売した、マイクロコンピュータ・システム開発のためのトレーニングキット
基盤とLSIが、バラバラの状態で提供され、購入者が自分でハンダ付けして組み立てる。
CPUは、intel 8080A互換の8bitプロセッサを使用、単体でのメモリーは1KB。
BSと組み合わせることで、高級言語のBasicが動作する。


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