映画「ベルリン天使の歌」
西ドイツ、フランス 1987年 127分
<監督>
ヴィム・ヴェンダース
<キャスト>
天使ダミエル:ブルーノ・ガンツ、
マリオン:ソルヴェーグ・ドマルタン、
ホメロス:クルト・ボウワ、
天使カシエル:オットー・ザンダー、
ピーター・フォーク(本人役で出演)、
ニック・ケイヴ(本人役で出演)
<内容>
ベルリンの街。
廃墟の上から人々を見守っている天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)がいる。
天使の耳には、地上の人々の内心の声が聞こえる。
天使の姿は子供たちには見える。
コロンボ刑事役で親しまれているアメリカの映画スター、ピーター・フォーク(本人)がこれからベルリンで撮影に入る映画の脚本を読んでいる。
街の中のさまざまな人々の肉声。ダミエルは、親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)と、今日見た自然や人々の様子について情報交換し、永遠の霊であり続けながら人間ではない自分にいや気がさしている。
図書館は天使たちの憩いの場だ。
老詩人ホメロス(クルト・ボウワ)が失われた物語を探している。
サーカスに迷いこんだダミアンは、空中ブランコを練習中の美女マリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン)を見て一目惚れをする。
橋のたもとで起こった交通事故で死にかけている男に息をふきかえさせるダミエル。
カシエルは、ホメロスにつき添ってポツダム広場を歩いている。
ピーター・フォークの出演しているスタジオには様々な人がいる。ダミエルはカシエルを呼んでサーカスの公演を見にゆく。マリオンを見つめるダミエル。
最後の公演を前に死の怖れを語るマリオンの肉声。
ロック・コンサートで踊るマリオンの手にふれるダミエル。
夜明け、ピーター・フォークはダミエルに人間になることをすすめる。
壁をこえてノーマンズランドを散策するダミエルは、マリオンへの愛をカシエルに告白する。
人間に恋すると天使は死ぬ。彼はカシエルの腕の中で死んだ。
西ベルリン側の壁のそばで目をさましたダミエルの目の前は、モノクロから色彩の世界に変わっているのだった。
(movie walker)
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この映画にはとんでもない願い想いが込められていたとは・・・。
カンヌ国際映画祭監督賞受賞
ToHoシネマズ上大岡にて5月25日鑑賞。
午前十時の映画祭14のラインナップの中で、楽しみにしていた作品。
モノクロとカラー映像が交錯して進行します。
下界を見下ろす天使は、とてつもない長い年月人間を見てきた。
舞台は大戦後分断されているベルリンの街。
なぜか多くの天使が集まる図書館。
子供たちはその天使の姿を見ることができるが、大人たちは見ることはできない。
また天使たちは人間の内なる声を聞き、多くの悩みを持つ人々の傍らにそっと立ち、時には肩に触れ寄り添う。
そのような中で、サーカスの空中ブランコ乗りの女性にダミエルは一目ぼれしてしまう。
そんなある時、天使の存在を感じる事ができる人物と出会う。ドラマの撮影をしている刑事コロンボ役のピータ・フォーク(本人役で出演)。
彼は見えない天使ダミエルに向かって
「そこにいるんだろ。こっちの人間の世界もいいもんだぞ。」
とそっと手を出し誘う。
それに応えるダニエル。二人は会話を続ける。
実はこのピーター・フォークは思いもかけない役柄だったのです。ここは秘密ですw
ピーター・フォークとの絡みで、ダミエルの親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)は同じような場面で差し出した手を拒みました。この時は決断ができなかったのでしょうね。
ちなみにこの作品の続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』で、カシエルのその後が描かれております。
ちょっと脱線しましたが、というような感じでいささか難解な部分もありながらも、全体的に詩的でアート感もあるストーリー展開。
そして最後は一目ぼれしたサーカスの団員マリオンに会うために、人間として生きる道を選んだ天使ダミエル。
天使が人間に恋をしたラブストーリー。
また悩み苦しむ人間への賛歌の物語的なのか?
しかし、
考えるな!感じろ!
感じるために、考え・学べ!
感じるために考えると、どうしてもそれだけでは違和感がでてきて不完全燃焼、そんな簡単なドラマではないことへのジレンマでレヴューを悩む、ほくとだったのです。
ただ偶然にも映画評論家の町山智浩さんの今作品の解説動画を見つけ見ると、あれまぁそんなメッセージ性のある作品だったのかと
驚き・
驚愕・
新鮮な思いで、
目からうろこも・腑もw
落ちたのでした。
ここではあれこれ書きませんが、興味のある方は動画を貼っておきますのでご覧くださいね。
流石プロの映画評論家ですね。
(予習編)
(復習編)
ヴェンダース監督の宗教観も含め、
かつてポツダム広場だった空き地をあるく老人の後を追い、落書きで覆われた東西分断のベルリンの壁を見つめる意味とは?
ホメロスとは本当は誰だったのか?
劇中の図書館で女性が本を読むシーンで登場する“ある言葉”、「ベンヤミンの遺稿『歴史の概念について」という本からの実はもう一人の主人公の出現とは?
何故にベルリンで、そしてまた図書館に天使が多く集まっているのか?
何故に天使は無力なのか?
など、納得いく点が多くありました。
解説を見ないでそこまで深堀できる人がいるのかどうか疑問ですが、お見事です。
感じ方は人それぞれではあります。
深堀をしなくてもなぜか心地よさも感じるこの作品。
しかし隠された真の意味もあった。
やはり数回観てみないと、深みを感じることができないかとも思いました。
そうそうこの作品の中でコンサートシーンがありますが、そこに来ている観客の心の声で、日本語がしっかりと聞こえました。やはり親日家だからでしょうか。
難解な作品ではありますが、観ておいて損はない作品かと思います。
5点満点中3.9。
(おまけ)
「全てのかつての天使、特に安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ」というクレジットで締め括られるが、ヴェンダースは2007年のインタビューで今ならロベール・ブレッソンとサタンジット・レイを必ず加えると述べているようです。
皆有名な監督で、個人的にも好きな監督さんたちです。