映画「アンダーグラウンド」(追記) | ほくとの気ままなブログ

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カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞 

 

映画「アンダーグラウンド」

 

 

 

1995年 

フランス・ドイツ・ハンガリー・ユーゴスラビア・ブルガリア合作 170分

 

<監督>

エミール・クリストリッツア

 

<キャスト>

ミキ・マノイロヴィッチ、

ラザル・リストフスキー、

ミリャナ・ヤコヴィッチ

 

<内容>

ナチス占領から起こった旧ユーゴスラビア動乱の時代。

ナチスに侵攻されたセルビア。パルチザンのマルコ(ミキ・マノイロヴィッチ)は地下室に弟のイヴァン(スラヴコ・スティマチ)や仲間のクロ(ラザル・リストフスキー)らをかくまい、武器を製造させることにする。

 

 

 

 

英雄となったマルコは地下生活を続ける仲間たちには第2次世界大戦が続いていると思い込ませ、50年間も地下生活を送らせた。

新政府の重要人物としてマルコはのし上がっていくが……、(シネマトディから抜粋編集)

 

**********************

 

 

 

こりゃ~~たまりません!!

 

万人受けしないであろう映画

 

そして監督自らもそんなこと、承知の助といっているくらい。

 

一部の好き物だけで上等とのこと!!

 

だったら、

だったら・・・観てみましょう!

 

映画好きだったら好みは別としても、観ておきましょう!!

 

 

我慢できないかたは、私の感想を読むより先に↓の予告観ちゃってくださいませ。

 

 

この作品は令和元年度、「ほくとの気ままなブログ」第1回グランプリに輝いた作品。

過去のグランプリ作品の中で、唯一映画館で観ていなかった作品でもありました。

 

いつかは映画館で観たいを思って、映画館にリクエストする日々を過ごしておりました。それがなんとなんと、昨年末から今年にまたがって横浜黄金町のミニシアター、ジャック&ベティにて上映するのを発見!

喜び勇んで劇場へ向かいました。

願いはかなうものですね。

昨年12月29日ジャック&ベティにて鑑賞。

過去記事に追記してプログアップいたします。

 

いや~やはり映画館で観るとまた格別感ありました。

この作品に巡り合った数年前、立て続けにエミール・クリストリッツア監督作品を何本も鑑賞したのが昨日のように思い出されます。

 

エミール・クリストリッツア監督の最高傑作

狂乱のファンタジーでありブラックコメディであり・・・。

 

 

 

まず冒頭から、ジプシーブラスの耳に残る中毒性の高い音楽が炸裂。

私は完全にこの音楽にはまりました!!

この独特のリズムに音色は、癖になります。

 

この音楽が耳障りになる方もいたりするようですが、これがなきゃ意味がなし!

最初に観た時はその強烈なリズムに、電気ショックを受けたように私の細胞の隅々がそのリズムの波長に刺激され、鼓膜にいつまでもリフレインするジプシーブラスの音楽。

今回はあまりにも以前聴き過ぎたせいか、もっと爆音で頂戴〜という感じでしたね。

 

 

ユーゴスラビアの伝統音楽と、その音楽に合わせた狂乱的な役者の演技は、もうトリップしてしまったかのようなシャーマンの舞にも通じるよう。

 

 

 

まるで舞台劇を観ているようでもある。

そのドタバタ劇に、体中の細胞がそのテンポの虜に!

どんどん物語の世界に引き込まれていきます。

 

 

 

なんだ~こりゃこれは??

ファンタジーなのか?

夢物語?

いや、ユーゴスラビアの解体までの史劇?

戦争批判のシリアスな映画なのか?

いや幻想的でもあり、リアルでもある。

 

否!!

これはおとぎ話だったのです。

 

 

むか~し、むか~しある所にユーゴスラビアという国があったとさ!

はじまり~はじまり~。

 

 

これじゃ、まったくもって何が何だかわからないですよね^^;

まぁ、感じてください。

 

今作品は、

ジプシーブラスの音楽が奏でる中、

シニカルな笑いを含み、

また抗することができなかった運命の悲しさを、

エミール・クリストリッツア監督が独得の感性において、

素晴らしく仕上げた物語。

 

ユーゴスラビアの歴史を知っていると、ラストの大陸が割れて流されているシーンが涙を誘うことでしょう。

この作品は改めて観ても、現代に刺さる風刺がすごいのを再度感じた次第。

監督ここ数年映画は撮っていないようなので、またぜひ作品を作って欲しいものです。

 

 

第一章戦争、第二章冷戦、第三章戦争に分かれて話しは展開していきます。

劇中に実写の記録映像が挿入され、うまく役者人がその映像に紛れ込み合成カットされています。

 

映像はナチスの爆撃、連合軍の爆撃、チトー大統領の葬儀など。

実写のチトー大統領の葬儀に各国の首脳陣が映っているのですが、ソ連のブルジネフ書記長、パレスチナのアラファト議長はすぐにわかりました。

エリザベス女王もいたような気もするのですが、どうだろうか?

その他はあまりわからなかったかな。

 

 

 

 

物語全般に流れる音楽、ジプシーブラス(チョチェク)が耳に非常に残ります。

ちなみにジプシーブラス(チョチェク)は、もとはオスマン帝国の軍隊音楽に由来していて、今はロマ(ジプシー)音楽の一種とされているようです。

そしてブラス楽器で演奏されることが多く、世界最速のブラスとも言われているとか。

 

この音楽が冒頭からいきなり炸裂して、エンディングでもかましてくれます。

個人的にはこの音楽があってこそ、170分の長丁場の物語をテンポよく見せてくれたかとも思うのですが、ただ一部の方ではそれがうっとうしく感じる人もいるようですね・・・。

 

もうこの説明も、うっとうしいですよねぇw

 

 

 

二人の男性を魅了する、ミリャナ・ヤコヴィッチさん、彼女はよかったですね。

ジプシーブラスの音楽に合わせ蝶のように舞い、時には娼婦のように♪ではないのですがエロッチックに、色々な顔を見せる演技はこの作品の中でも光っていました。

 

彼女の出演している作品は今作品しか観てはいません。ちょいと調べましたら、ベオグラード出身のセルビア人女優だとの事。

『アンダーグラウンド』『ブコバルに手紙は届かない』『ボスニア』というような作品に出演しているよう。1900年代に入ってアメリカにわたって映画出演したり、大学の演劇学部で」講師をしているようです。

 

 

ミキ・マノイロヴィッチさんはどこかでみた俳優さんだと思ったら、過去に観た映画「さぁ帰ろう ペタルをこいで」で、いい感じのおじいさん役を演じていました。

 

 

 

 

さて、この物語はユーゴスラビアの50年にわたる紛争の歴史を寓話的に描いています。

 

ラストの終わり方がとにかく秀逸。

 

監督の願い思いが描かれている感じ、そして切なくも希望へもつながって欲しいという願いも込められた明るい雰囲気の終わり方。

ただし、ドイツ相手の戦争、ソビエト相手の戦争、そして内戦、ずっと戦争続きの旧ユーゴスラビアの歴史を考えると、そのラストシーンも胸が締め付けられ目頭も熱くなる。

 

 

 

ラストでキャストの一人が語ります

「この物語には終わりがない」

 

「苦痛と悲しみと喜びなしでは、子どもたちにこう伝えられない。

『むかし、あるところに国があった』と」!!

 

そしてジプシーブラスの音楽がまたまた炸裂!!

ヤホーイ!!

しめっぽい終わりではないですよ!

 

人間、国家、愛、友達、家族、生き物、色々なことを深く考えさせてくれる、不思議な余韻の残る映画でした!

 

 

 

5点満点中4.2

 

予告編観て~~~~♪♪

 

 

 

<内容をもっと詳しく知りたいかたへ:ネタバレ注意

1941年、セルビアは首都ベオグラード。

ナチス・ドイツがユーゴ王国を侵略。策略家のマルコ(ミキ・マノイロヴィチ)は単純な電気工のブラッキー通称“クロ”(ラザル・リフトフスキー)を誘い、チトーの共産パルチザンに参加、ロビン・フッドまがいの活躍で義賊と評判になる。マルコは弟で動物園の飼育係だったイヴァン(スラヴコ・スティマッチ)やクロの妻ヴェラ(ミリャナ・カラノヴィチ)たち避難民を、自分の祖父の屋敷の地下室にかくまう。

まもなくヴェラはクロの息子を産んで死ぬ。クロは戦前から女優のナタリア(ミリャナ・ヤコヴィチ)と不倫の仲だが、彼女は独軍将校フランツ(エルンスト・ストッツナー)の愛人になった。クロは公演中のナタリアをフランツの面前でさらい、結婚式を挙げる。独軍はクロを逮捕、激しい拷問を行う。クロはマルコらに救出されたが、誤って万が一の自決用に渡された手榴弾を暴発させて瀕死の重傷を負い、地下室に匿われた。45年、終戦。

チトーを中心に共産主義のユーゴスラヴィア連邦が成立。

 

<第二部 冷戦>

61年。マルコはチトー政権の重鎮、ナタリアは彼の妻になっていた。クロはマルコによってパルチザンの英雄として死んだことにされていた。マルコは地下の人々を騙し、未だ独軍の占領下だと思わせて、武器を製造させ、外貨稼ぎのため外国に密売していたのだ。クロの息子ヨヴァン(スルジャン・トドロヴィチ)の結婚式の日、密造戦車に乗ったイヴァンの親友のチンパンジーが誤って砲撃を始め、地下は大混乱。その隙に外に出たクロとヨヴァンは何とクロ自身の映画の撮影現場に遭遇。事態が把握できないクロはフランツ役の俳優を射殺。混乱の中、ヨヴァンは井戸に落ちた花嫁を追ってドナウ河へ向かうが溺れて、川底で花嫁と再会。マルコは陰謀の崩壊を悟り、両足を打ち抜いて偽装自殺をし、邸宅を地下室ごと爆破、欧州全土の地下を走る秘密高速道路に逃げ込んだ。

 

<第三部 戦争>

マルコの失踪でチトー政権は急速に人望を失い、30年後にユーゴスラヴィアは崩壊した。92年、あの混乱で見失った親友の猿を探すうちに地下道路に迷い込んだイヴァンは、ベルリンの精神病院で兄マルコが悪名高い武器商人だと知らされる。故国に帰還するもユーゴスラヴィアの国はすでになく、そこは激しい内戦の大地と化していた。イヴァンはマルコが将校に武器を売っている所に出くわし、全ての罪の償いとして杖で兄を殴り倒すと、自らも教会で首を吊る。瀕死のマルコの元にナタリアが駆けつけるが、二人とも兵士に焼き殺される。無線で殺害の命令を下したのは、今でも息子を探しつづけながら“ファシストの糞野郎ども”と闘うクロだった。クロはかつての地下室を訪れ、井戸の中にヨヴァンの姿を見る。次の瞬間、彼は水の中で最愛の息子に再会していた。__楽園のような川辺で、ヨヴァンの結婚式が楽しそうに行われている。イヴァンがカメラに向かい「苦痛と悲しみと喜びなしには、子供たちにこう語りかけられない。昔、あるところに国があった」と語りかける。音楽がいつまでも楽しそうに鳴り響く中、宴の席はやがて大地を離れ、ドナウ河を漂っていく。

(MovieWalker)