映画
「東京2020オリンピック SIDE:B」
2020年 東宝 123分
<監督>
河瀨直美
<内容>
2021年に開催された東京2020オリンピックの公式ドキュメンタリー映画2部作の1作。新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックにより、近代オリンピック史上初の開催延期となった東京2020オリンピック競技会は、当初より1年遅れた2021年7月23日、いまだ収まらないコロナ禍、史上初の無観客開催、関係者の相次ぐ辞任など、さまざまな問題や課題を抱え、賛否が渦巻くなかで開幕。
17日間でオリンピック史上最多となる33競技339種目が行われた。
公式ドキュメンタリー映画は、そんな異例づくしとなった大会と、開催に至るまでの750日、5000時間に及ぶ日々をつぶさに記録し、「SIDE:A」「SIDE:B」の2部作で公開。表舞台に立つアスリートを中心とした「SIDE:A」に対する本作は、大会関係者や一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートの人々にスポットを当てた。
大会がスタートしてもなお、さまざまな課題に直面し、休むことのないバックステージの様子を映し出し、困難なミッションに取り組む人々の姿を描いていく。
カンヌ国際映画祭の常連として世界的にも知られる河瀬直美が総監督を務めた。(映画.COM)
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さぁさぁ、賛否両論というか観客動員数、閑古鳥さえ見当たらぬと思われ、ほくとが撃沈したSIDE:A。
しかしSIDE:Bも製作しているわけですから、見ずして語らずべからずということで6/25、ちょっと遠征してTOHOシネマズ川崎にて鑑賞してきました。
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劇場内でハプニング発生
作品紹介の前に、当日劇場内で起きたちょっとした出来事をお話ししましょう。
やはりこの作品ただものではなかった。
公開翌日の土曜日ですが、観客は私を含め3名。まぁ予想通り。そして上映開始5分前くらい、親子連れ2名が参戦。
ビックサイズのポップコーンとドリンクを持った、父親と小学校1~2年生くらいの女の子。
えぇ~この映画観るのか?もしかしたら、親の教育方針?とちょっと驚きでしたが、都合5名で観客増員されての上映開始。
その親子は、私の3列後方に着席したのです。
上映開始後5分くらいでしょうか、しばらくして後ろからボソボソと喋り声が・・。お父さん、マナー違反ですよ!!っと思いながら、スクリーンに集中。
その後、
「すみません」
と女の子の声が、頭のうしろから聴こえてきたのです。
えぇ~と、ちょっと驚くほくと。
「すみません。この映画はなんの映画ですか?」
と尋ねる女の子。
「えぇ~知らないで見ていたの?」
とまたまた驚くほくと。
東京2020オリンピックという作品だと伝えると、
「ありがとうございました」
と自分の座席に戻る彼女。
そしてそのあとすぐに、ビックサイズのポップコーンと飲み物を片手に、会場を去っていく親子のシルエットを見送ったほくとでした。
いやぁ~やっぱりこの映画を見に来たのではなかったのですね。どこかで安心した自分がいたのでしたwww
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さてと、作品についての感想です。
SIDE:Bを見ずして映画「東京2020オリンピック」を語るなかれと、いいたいところですが・・・。
物語は、男子400メートルリレー決勝の映像から始まる。日本チームは、前回のリオ五輪男子で銀メダルを取り、今大会も期待されている。
1走に多田、2走に山縣、3走に桐生、4走は小池の4選手で臨んだ。
1走の多田選手が好スタートを切る。見るものも、今回も期待できそうな走り。そして2走の山縣選手がバトンパスで素早く飛び出すが、その彼にバトンが届かず。
まさかやぁ!
誰も予想していなかった、日本チームのバトンミスによって早くも失格になってしまうその映像。このレースはリアルタイムで私も見ていましたが、もう唖然としてしまったレースでした。まさかバトンを落とすとかではなく、渡すことができなかったとは・・。
このレースの結果映像は、この東京オリンピックを象徴的に表していたと思います。
期待され、予想もしない結果で終わってしまったこと。
このSIDE:Bの作品は、大会関係者など非アスリートにスポットを当てた作品。
今回の東京オリンピックの特徴は、オリンピック史上初めて延期されたオリンピック、コロナ禍で開催されたオリンピック、開催か中止か議論され最後は無観客での競技実施、そしてロゴ盗作騒動、開会式演出家の交代など数え上げたらきりがないくらい問題があって開催されたオリンピック。
であるからこそ、その開催に至るまでの出来事、そして無観客開催期間の競技などが、この東京オリンピックを象徴するものであると思う。
その視点から観るとSIDE:Bは個人的には、Aよりは見応えがあった。
ただし、これが公式ドキュメンタリー映画としてなり立つのか?非アスリートにスポットを当てたとは言っているが?
など、いささか疑問に思えるのです。
そしてABと区分けしたにも限らずBでもアスリートが出てきたりして、区分けした意味が不鮮明にも思えた。
私はスポーツ観戦が好きであり、自国開催で生でオリンピック観戦ができるだろうと、当初開催を楽しみにしていました。しかし、延期になり、とどめは無観客開催。落胆しましたね。というように日本や世界の一般市民の声などももっと出してほしかったり、開催擁護派または反対派など、もう少し公平に深く掘り下げた内容を期待することろもあったりもした。
森さん、バッハさん大活躍
困難なミッションに取り組む人々の姿を描いていくとうたってはいるものの、露出のほとんどが森さんと、バッハさんが中心にも思えたのは私だけだったでしょうか?。
そしてこの映画だけ見ると、そのバッハさんがとっても良い人に見えてしまうのは、ちょっと危険でしたねw
そのひとつは、開催反対派の人が大音量のマイクで反対をアジテーションしている。
バッハさんが突然、その人と話がしたいと近寄る想定外の行動。「話をしよう」
と呼びかけるも、反対派の人はひたすら
「開催反対」
を連呼するのみ。
反対のしっかりした考えがあるのであれば、話し合いを持ち掛けてきた人に対応すべきと思うのは当然。このシーンだけを切り取ってみてしまうと、声を聞き歩み寄ろうとするバッハさんが良い感じに思えてしまうし、反対派に対しては嫌悪感だけが残ってしまうんですよね。
反対派の主要論点のひとつでもある、再開発などは一切触れていなかったりして、片手落ち。
取り方によっては非常に危険かもと思ってしまった次第。
まぁ監督次第でどの様な方向へ持っていこうと、それは勝手ですけれど。
この作品が開催する側がクローズアップされたいるのはしかたがないのでろうか、反対派(中止)は単にデモを行う人が中心であまり露出なし。
宮本亜門氏のインタビューが唯一反対派のインタビューであったかのような気がします。
ただし、そう深くは掘り下げてはいませんでした。
野村萬斎VS電通
とくに作品の中で印象的で目に焼き付いたのは、野村萬斎氏!
開会式演出担当のスタッフのひとりで、途中で担当から外されてしまう。
野村萬斎氏の、名指しの電通批判をしっかりと映像に残しているのは痛快でした。
映し出される萬斎氏のお顔は、嫌悪感がマンサイでしたw
その顔がこの映画の中で一番印象に残っています。
そしてその後の演出についても、伝統芸能のなんたるかがまったくわかっていないと一刀両断。
この辺は、オリンピック商業主義への問題を示唆している点にもなるのであろうが、やはり浅く切りつけただけにも見える。
しかしこのシーンも見方によると、とでも危険。
見る側にとっては野村萬斎氏の意見を取り入れないと駄目なのかと、彼をを擁護してしまいそうにも見えてしまう。
もしかしたら、その危うい観客の感じ方取り方も含め、観客に評価を委ねているのかもしれませんが・・。
そただその点も含め、監督の意図するところとしたら、もっとSIDE:AとBを片方は単純にわかりやすくそして、片方は謎めいた点を残すようにしても良かったのではないかと、凡人は勝手に思った次第。
というように前回も書きましたが、見る側の視点で全く変わってしまうような河瀨直美マジックなのでしょうか?
ただし、訳の分からない感じの中でもこの大会を支える関係者、縁の下のスタッフたちの姿をしっかり撮られてみることができるのは良かった。できれば、もう少し表には出てこない人たちの、露出を多くしてもらいたかったかな。
森さんとバッハさんの露出を少し押さえてでもw
しかし映画の内容とは関係ないけれど、アスリートの競技する姿に感動をもらった私としては、延期による選手の気持ちは外しての意見になりますが、延期が2年だったら、もしかしたら大勢の観客のなかで開催されていたのかも、と思うと残念でなりません。無観客のなかでも、開催できたこと自体が奇跡だったかもしれませんけれどね。もう生きている間には自国開催で見る機会なんてないだろうし・・。そして商業主義のオリンピック、本当に真剣に考えないといけないのでじゃないでしょうかね。
メッセージ性のある作品であることは間違いないであろうが、ドキュメントの記録映画としてはどうしたものでしょうか。
また観客が少ないからダメ、多いからいい作品とは思わないのですが、あまりにも観客が少なすぎるのは残念の一言。
ただし、もう一度お金を払って映画館で見ますかと問われれば、NOと答えるでしょう。
何十年後に、東京オリンピック2020を知らない人が、この映画を見た時にどんな感想をいだくのだろうか?
まさか「すみません。この映画は何の映画ですか?」とならないことを祈っています。
とにかく、あの親子が記憶に残る映画鑑賞でしたw
5点満点中3.4
(画像全てお借りしました)