午前十時の映画祭11
映画「真昼の決闘」
(原題: High Noon)
1952年 アメリカ 85分
<監督>
フレッド・ジンネマン
<脚本>
カール・フォアマン
<音楽>
ディミトリー・ティオムキン(アカデミー賞歌謡曲賞受賞)
<キャスト>
保安官ウィル・ケイン:ゲイリー・クーパー
(アカデミー賞主演男優賞受賞)、
保安官の妻:グレイス・ケリー、
町長:トーマス・ミチェル(スカーレットオハラの父親役)、
酒場の女主人:ケティ・フラド、
元保安官:ロン・チェイニー・ジュニア、
悪党フランクの仲間ジャック・コルビー:リー・ヴァン・クリーフ
留置場に入っている酔っ払い:ジャック・イーラム
<内容:ネタバレ注意>
1870年、西部のハドリーヴィルの町、ある日曜日の午前のことである。この町の保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、事務所でエミイ(グレイス・ケリー)と結婚式を挙げていた。
彼は結婚と同時に保安官の職を辞し、他の町へ向かうことになっていた。
突然、そこへ電報が届いた。
ウィルが5年前に逮捕して送獄した無頼漢フランク・ミラーが、保釈されて正午到着の汽車でこの町に着くという知らせだった。
停車場にはミラーの弟ベンが仲間の2人と、到着を待っていた。時計は10時40分。ウィルは再び保安官のバッジを胸につけた。エミイはウィルに責任はないと言って、共に町を去ろうと主張したが、彼は聞き入れなかった。
エミイはひとり正午の汽車で発つ決心をし、ホテルで汽車を待つ間、ウィルのもとの恋人で、今保安官補ハーヴェイ・ベル(ロイド・ブリッジス)と同棲しているメキシコ女ヘレン・ラミレス(ケティ・フラドー)と会い、彼女も同じ汽車で町を去ることを知った。
一方、ウィルは無法者たちと戦うため、助勢を求めて、酒場や教会を訪れ、最後に2人の親友に頼み込むが、みんな尻ごみして力になってくれない。
彼は1人で立ち向かう決心をして遺言状を書きつづった。
時計が12時を指すと共に汽笛がきこえた。停車場からミラーが降り立ち、入れ替わりにエミイとヘレンが乗った。エミイは一発の銃声を聞くといたたまれず汽車から降り、町へ走った。
ウィルは2人倒しし、エミイの機転であとの2人も射殺した。戦い終わって町の住民が集まって来るが、ウィルの目は厳しく皆を見まわして、やがて保安官バッジを足元に捨てると、今は唯一人心許せる少年が運んできた馬車にエミイと共に乗り、町を去って行くのだった。
(Mavie Walker、参考に一部修正)
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9月5日午前十時の映画祭11にて鑑賞。
有名なこの映画、過去にも何度も鑑賞しています。
激しいドンパチがある作品に比べると、少々アクションなど物足りないところもありますが、ただ今回観ても面白かったですね。
挿入歌も当時は大ヒットしましたが、今の時代ではいささか古臭いかも?w
さて今回はこの作品に込められている裏情報なども踏まえながら、記事を書いてみましょう。
リアルタイム映画の傑作!
ハイヌーンとは正午の事。
お昼12時きっかりに、以前逮捕した無頼漢が汽車に乗って復讐にやってくる。
そして無頼漢ミラーの部下たちは、到着約1時間30分も前にこの町に入り、駅でミラーを待っている。
時間の設定進行が重要な鍵を握っています。
上映時間85分の映画の進行と、映画の中で実際起きる出来事が同時進行していく設定になっています。
ですから観客もあと何分後に起こるであろう出来事を、映画が終わるまでの時間の経過と同時に経験するのです。
物語の中で、時々登場する時計の針が緊張感を誘います。
刻々と12時に時計の針が近づき、クライマックスへと進んでいきます。
リアルタイム映画は数少ないのですが、そのなかでも成功した作品になっていますね。
西部劇嫌いの西部劇!
この映画の内容の最大のポイントは、主人公の保安官が無敵のヒーロではないところです。
今までの西部劇の常識を、ある意味崩したといってもいいかもしれませんね。
いざ無法者が戻ってくるという知らせに、主人公そして住民は困惑します。
午前10時55分、結婚式を終えて皆の勧めもあって、他の町へ旅立とうととしながらも途中で戻ってきたウィル。
しかし、さすがに4人を相手にするにはいささか不安。
そこで町の住人に協力してもらおうと声をかけるのですが、積極的に協力してくれる人達が見当たりません。
中には、以前の無頼漢が支配していた時のほうが、景気が良かったと話す輩もいたりします。
そして戦うことを理解してくれるだろうと思っていた妻のエミイも、反対をします。
それは彼女は父と兄を殺され、もう争うごとはしたくないと暴力絶対反対のクエーカー教徒に改宗していたので、宗教上の問題も含めてでした。
午前11時30分、
応援を頼むために教会を訪れる。
彼に協力するかどうか議論はしてくれるのですが、最終的には町長の意見で彼にはこのまま町を出ていってほしいと告げられます。
この教会での出来事は、議論の内容こそ違いますが今の世の中どこでもありうるシーンで、見方を変えるとけっこう恐ろしい場面であったと思います。
保安官助手だった者は、居留守を使ったり、怪我を理由に辞退します。
最後に加勢にきた男も、協力者がゼロと聞くと手のひらを反すように急に怖気づいて去っていきます。
唯一ケインを慕う少年が、協力するといってくれるのですが、
「お前はまだ子供だ」
といって家に帰させます。
命がけで町を平和にしたという功労者に対して、大きな力が迫ってくると、市民はそっぽを向いてしまったり、気持を裏切るような人も出てくる始末。
そんな八方ふさがりになったウィルは、流石に少々弱気になり途中逃げ出そうかと迷ったりもします。
結局誰も集まらない中、
時刻は午前11時57分。
彼は保安官事務所で遺書を書きます。
午後0時ハイヌーン。
駅ではフランク・ミラーを乗せた汽車の汽笛が聞こえてきます。
保安官事務所を後に、ケインは駅へ向かいクライマックスへと進んでいくのです。
そんな弱々しい保安官の様子に、映画を観た人の中には、こんな西部劇はもってのほかだと怒り心頭の輩が出てくるのです。
それは誰かはこの後じっくり書かせていただきますが・・。
以上のように、クライマックスの戦いはほんの数分です。
そしてそのラストも、壮絶な撃ち合いと語るにはいささか弱い画になっています。
これも種明かしがありますので、もう少しお待ちくださいね。
ですからこの映画は午後0時までに間の、主人公や彼にまつわる人々の葛藤そし人間模様が中心の内容です。
ほとんどが彼がどうしましょうと、町中に協力者を求めて彷徨う映画なんですね。
そうそう少し話は飛びますが、この駅で無頼漢フランク・ミラーを待つ悪党どものシーン。
あの映画「ウエスタン(ワンス・アポン・ア・タイム・インザ・ウエスト)」でもオマージュされていますね。
過去記事になります。
その映画にでてい一人、悪党面のジャック・イーラムは、今作品では牢屋に入っている酔っ払い役で出演しています。
ウィルが遺書を書いた後に、彼を牢屋から解放します。
ちなみに出演者のテロップには名前が載っていませんので、この役者がジャック・イーラムだとわかった人はなかなかの方ですよ。
彼は独特の風貌で、数々の映画に出演していますので見たことある方も多いかと思います。
また悪党一味の一人、ジャック・コルビー演じる、リー・ヴァン・クリーフは今作が映画初出演です。
駅で待っている間にハーモニカ吹いていましたね。
彼のその後、マカロニウエスタンなどでの活躍はご存知の通りです。
サブテキスト
西部劇のようでそうでない、
裏に本質がある作品
さて、本題にに戻りますが、この映画の裏に隠れていた物事を知ってから、改めて鑑賞してみるとこの作品に対する見方が変わってくると思います。
映画が製作された時代は、アメリカではあの「赤狩りが」横行していた時代でもあります。
この映画の脚本を手掛けたカール・フォアマンは、撮影の途中から赤狩りの対象になって、完成後イギリスに亡命しています。
彼はその後「戦場にかける橋」「ナバロンの要塞など」有名作品の脚本を書いていますね。
赤狩りを簡単にに説明すると、共産党を排除する運動、反共産主義の「魔女狩り」のようなものです。
その波はハリウッドにも押し寄せて、共産党と関係のあった人間、そうでなかった者までが排除されたりしました。
なかには、自分を守るために友人の名前を暴露してしまう者、はたまた証言したり召喚を拒んだ「ハリウッドテン」と呼ばれた人たちなどもいました。
詳しくはお調べくださいね。
それで、この赤狩りをするほうの保守派の人物の中には、あの「ジョン・ウェイン」がいたんですね(ちなみにゲイリー・クーパーもそうですが)。
劇中でメキシコ女ヘレン・ラミレスが、彼女に寄り添ってくる保安官補のハーヴェイ・ベルに言います、
「肩幅が広くて、体格が良いだけじゃ男じゃない」と。
これはジョン・ウエインの事を皮肉っているようです。
この映画の有名なラストシーン。
最後に主人公ウィルが保安官バッジを投げ捨てて去って行く姿を見て、ジョン・ウエインは激怒したようです。
あんなことやそんなことがあったからかどうかはわかりませんが、アカデミー賞作品賞にノミネートされていた今作品。
ジョンウエインは受賞するのをトコトン阻止したそうです。
男らしくないですよねw
弱い者いじめを見ても、見て見ぬふりをする市民や仲間だった人達。
そして最後まで誰も助けてくれなかった・・・。
アメリカは正義と称して正義でないことを行ってきた。
実はこの作品は、赤狩りという汚点、思想的弾圧を行ったアメリカ、ハリウッドへの皮肉や思いが込められている作品だったのです。
そうやってこの作品を観ると、また新しい見方ができるのではないでしょうか。
(おまけ)
*保安官が一般市民に助けを求めるなんて、なんぞやというアンチテーゼから、ハワード・ホークス監督は、ジョン・ウエインを主役に映画「リオ・ブラボー」を制作しています。おもしろい映画ですが、反共の人達によって作られた映画だったのですね。ただ「真昼の決闘」という作品ががなかったら、製作されていなかったと思うとこれまた縁でしょうかw
*最後にゲイリー・クーパーが保安官バッジを投げ捨てて、町を去っていくシーンは映画「ダーティハリー」でもオマージュされています。
*脚本を書いたカールフォアマンの結末は映画と同じでした。撮影中に赤狩りの対象になって最後はイギリスに亡命しています。
*決闘シーンで2番目に殺されてしまう、リー・ヴァン・クリーフは、「真昼の決闘」のプロデューサーであるスタンリー・クレイマーと初めて面会した時、彼に鼻を整形する様にと言われたリーヴァン・クリーフは「黙れ」と一喝、クレイマーを激怒させたという逸話が伝わっています。
更に監督のフレッド・ジンネマンから映画の中で掛け声を出すよう指示されたときも、リーヴァン・クリーフが「演じるキャラクターに似つかわしくない」としてこれを拒否、結果的にジンネマンを納得させたとのことです。
映画初出演なのに、いやぁ~カッコいいですね。流石鷹の目!漢ですね!!
*映画「ダイ・ハード」での終盤、敵のハンス・グルーバーが主人公マクレーン(ブルース・ウィルス)の妻を人質に取り、本作に言及する。「今回はグレース・ケリーと一緒に夕日の中を歩くジョン・ウェインとはならないな」と、同様のシチュエーションでありながら自身が優位にいることを示すのですが、マクレーンに「それはゲイリー・クーパーだアホタレ」と言い返されるのです。色々な映画を観ていると、どこかでつながったりするので面白いです。
*フレッド・ジンネマン監督はオーストリアからハリウッドに渡った監督、なかなか苦労しながらの中で今作「真昼の決闘」を手がけ、大ヒットしました。その後「地上より永遠に」ではアカデミー賞作品賞や監督賞を受賞するなど、名監督の仲間入りを果たしました。ちなみに私の大好きなオードリー・ヘップバーン主演「尼僧物語」の監督でもあります。もうひとつおまけ、映画「西部戦線異状なし」ではエキスラで出演しているようです。まったくどこかはわかりまえん。
さてさてここまで読んでいた方への感謝の気持ちを込めて、特別サービスのネタです!!!
この映画の時ゲーリー・クーパーは50過ぎでけっこう落ち目にもなっていました。その原因のひとつが腰を痛めていて派手なアクションができなくなっていたようです。そして画面に映し出される姿もしわが深く、くたびれている感じのお姿。
悪人達と戦わないといけない緊張感に汗がにじみ出てているかと思いきや、そのシーンはまじで腰が痛く脂汗をかいていたようですww本当に痛かったのでしょうね。
そう考えると演技に迫力がないような、歩き方も何だかぎこちなかったようにも見えたのも納得です。なんでも決闘シーンでは早回ししているようですよ。
ただしただし~~ですよ・・・・・・・・・・・・・・・・
映画出演2作目のまだ新人同様なグレース・ケリー、この時若干22~23歳、クーパーとは年の差は30歳も離れています。
腰の痛い脂汗をかいていた彼はなんとこの撮影中に、グレース・ケリーと、
な・な・なんと
エッチしちゃっていたようですww
彼は他の映画でも共演した女優さんとやっぱりエッチしちゃって、離婚することになってしまったのに懲りない男ですw
人間の欲望は痛みも凌駕するww
またグレース・ケリーもあの姿から想像できない、恋多き女性でした。
ゲーリー・クーパや、クラーク・ゲーブル、ウイリアム・ホールデン、ビング・クロスビーその他年上の男優さんなどとけっこう噂になっていましたからね。
人間とはわかりませんね。
まぁなんやかんや言っても、面白い映画でした。
(画像すべてお借りしました)
5点満点中3.8