映画「ビルマの竪琴」総集編 | ほくとの気ままなブログ

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ビルマの土はあかい、そして岩もあかい 

 

 

映画「ビルマの竪琴」

総集編 

 

1956年 日活 116分

 

<監督>

市川崑

<キャスト>

三國連太郎、

安井昌二、

浜村純、

西村晃、

三橋達也、

北林谷栄、

伊藤雄之助、

 

<内容>

1945年の夏、敗残の日本軍はビルマの国境を越え、タイ国へ逃れようとしていたが、その中にビルマの堅琴に似た手製の楽器に合せて、「荒城の月」を合唱する井上小隊があった。

水島上等兵(は安井昌二)竪琴の名人で、原住民に変装しては斥候の任務を果し、竪琴の音を合図に小隊を無事に進めていた。

やがて、小隊は国境の近くで終戦を知り、武器を捨てた。

彼らは遥か南のムドンに送られることになったが、水島だけは三角山を固守して抵抗を続ける日本軍に降伏の説得に向ったまま、消息を絶った。

一方、ムドンに着いた小隊は、収容所に出入りする物売り婆さん(北林谷栄)に水島を探して貰うが生死のほども判らなかった。

ある日、作業に出た小隊は青い鸚鵡を肩にのせた水島に瓜二つのビルマ僧を見掛けて声をかけるが、その僧侶は目を伏せて走り去った。水島は生きていたのである。

 

三角山の戦闘のあと、僧侶姿の彼はムドンへ急ぐ道で数知れぬ日本兵の白骨化した死骸を見て、今は亡き同胞の霊を慰めるため、この地へとどまろうと決心した

物売り婆さんからあの僧侶の肩にとまっていた鸚鵡の弟という青い鸚鵡を譲り受けた井上隊長(三國連太郎)は水島、いっしょに日本へ帰ろうという言葉を熱心に教え込んだ。

三日後に帰還ときまった日、隊長は物売り婆さんに弟鸚鵡をあの僧侶に渡してくれと頼んだ。すると、出発の前日になって水島が収容所の前に現われ、竪琴で「仰げば尊し」を弾いて姿を消した。あくる日、物売り婆さんが水島からの手紙と青い鸚鵡を持って来た。

鸚鵡は歌うような声でアア、ジブンハカへルワケニハイカナイ」と繰り返すのだった。それを聴く兵隊たちの眼には、涙が光っていた。

 

(Movie Walker)

 

 

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この作品も大昔子供の頃、TVで観たのが初めてです。

ほとんど忘れていました。

 

この映画のポイントは、音楽「埴生の宿」とオウムです。

 

象徴的なシーンで使われています。

その「埴生の宿」ですが、今の今まで知りませんでしたが、この曲はイングランド民謡で原題は「ホーム・スィート・ホーHome! Sweet Home」、なるほど!この映画で使われたこと納得です。

 

 

どうも公開当時は「第一部、第二部」とその両方を編集した「総集編」が混在して上映されていたようです。

自分の生まれる前ですからよくわかりませんw

今回観たのは総集編になります。

 

また同じ市川崑監督、中井貴一主演で1985年版があります(私は未鑑賞です)

 

さて劇中、三國連太郎が演じる井上隊長は音楽大出身なので、この部隊は良く合唱を行います。

三國さん悪役ではなく良い役を演じていますw

 

そしてまた特徴的なのはこの部隊の戦闘行為は一切描かれていない事です。

ある時に小隊が野営をしていた村落で印英軍に囲まれる、井上部隊は敵を油断させようと「埴生の宿」を合唱しながら戦いの準備をする。いざ攻撃と思ったその時、相手が英語で「埴生の宿」を歌い始める。

その結果日本軍は敗戦の事実を知らされ、武装解除をするのです。

 

このシーンを見て、第一次世界大戦の時に実際にあった話、ドイツ軍とイギリス軍が塹壕で対峙していた兵士がともにクリスマスを祝った、「クリスマス休戦」を思い出しました。

ドイツ語で歌う「きよしこの夜」そのに対してイギリス兵は英語で「きよしこの夜」をかえす。

この連鎖によって休戦が行われました。

もしかしたらこの映画の埴生の宿のシーンも、何かしら関係あるのかもしれませんね。

 

 

ともあれ一時行方不明になった水島上等兵が、現地に戦友の屍を残して帰国することに疑問を持ち僧侶になる。

そして供養するために帰国する戦友たちを別れるというお話です。

 

ストーリーを見ていると、少しファンタジーのようなおとぎ話的な感じはしますが、当事者の気持ちなどを考えると複雑に色々な気持ちが入り混じっていたのだと思います。

 

 

オウムに自分の気持ちを伝言する場面などありますが、普通に考えるとつっこみも入れたくなる内容ですが、この映画の流れのなかでは、そのようなシーンもすんなりと受け入れてしまう不思議な感じがします。口にして伝えられない事を代弁さえるツールとしては印象に残ります。

 

また水島がビルマ僧になった理由の一つには、仲間の屍を供養する目的もあったでしょうが、命の恩人のビルマ僧またビルマに対しても恩返し的なこともあったと思います。

 

 

登場人物の中に、物売りをする現地の老婆演じる女優北林谷栄さんは、この時45歳です。

まぁ本当に老け役が似合っているし、関西弁を操る現地人役この映画の中でインパクトありました。

老婆を演じたら日本一でしょうか。

ず~~と何十年も同じ年齢に見えますね。

老人役でない北村谷栄さんの演技も見てみたいものです。

 

ウィッキペディアによりますと、現地の上座部仏教では、出家者は戒律により音楽演奏は禁じられているようです。

 

静かなる中に、しっかりとしたメッセージ性を感じさせる、市川崑の演出、構成力が光る作品だと思います。

 

 

最後にまた映し出される言葉、

「ビルマの土はあかい 岩もまたあかい」、

 

この言葉が重く心に突き刺さります

ビルマの土壌の成分が赤くみせるだけでなく、戦争によって命を奪われた人々の血もまた赤く染めるのでしょう。

 

なかなかの名作であったと思います。

 

5点満点中3.8