活動弁士付き 無声映画「瀧の白糸」 | ほくとの気ままなブログ

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新派悲劇の代表作 

古き日本のある街に、悲しくも美しい物語がありました。

 

映画「瀧の白糸」(無声映画)

 

 

1933年 入江プロ 88分

 

<監督>

溝口健二

<原作>

泉鏡花:義血侠血

<弁士>

澤登翠

 

<キャスト>

入江たか子(椿三十郎にも出演していますよ。どの役かわかるでしょうか?)、

岡田時彦

(あの岡田茉莉子さんの父親)

菅井一郎、

見明 凡太朗、

浦辺 粂子

 

<内容:ネタバレ注意

北陸地方の夏場の巡業で、評判の美貌の女水芸師滝の白糸(入江たか子)は、ふとしたことから知り合い一目ぼれした貧乏な士族青年、村越欣弥(岡田時彦)が法律の勉強を志しているが、貧困のために学問をあきらめたという身の上を知り、自分が学資の援助を申し出た。

欣弥は一旦断ったが、白糸の純真な心に動かされて好意を受けることにした。

 

 

ただ一方的に支援を受けるだけでは忍びない、代わりに白糸の願いを命を懸けて応えたいと伝える。渋る白糸にあなたの望みはと聞くと、少しためらった後に白糸は「私の希望は、お前さんに可愛がってほしいのさ」と打ち明ける。

その夜に二人は一夜を共にした。

 

男まさりの彼女も、欣弥に対して恋心を抱く乙女のよう。

 

最初は順調に仕送りもするが、そのうちに一座の経営も厳しくなってくる。秋から冬にかけて収入のない時は、日頃仲の悪い出刃打寅五郎と一座してまで、彼女は欣弥に仕送りを欠かすまいとした。

しかし、いよいよ彼への仕送りがままならぬことになってくると、窮した白糸は高利貸しに身を任せやっとの思いで仕送りのお金を工面した。

安堵の思いになっていた白糸に、その高利貸しとぐるになって敵対の一座の者から出刃包丁を突きつけられて、そのお金を強奪されてしまう

 

怒りに狂った白糸は、高利貸しのもとに戻って金を取り返そうとするが、再び高利貸しから襲われそうになり、隠し持っていた包丁で身を守るために誤って刺し殺してしまうそしてとっさに金を奪って逃亡する。

 

その後警官の追ってからなんとか逃れ彼の下宿にたどり着き、仕送りをを渡すことができた。ただ一目会いたいと思っていた彼は出張のために会えず、警察の捕縛の身になってしまう

 

この事件は世間の大きな話題となる。焦点は高利貸しを殺したのは白糸か?または、現場に落ちていた出刃包丁を使う芸を行う敵対一座の仕業か?白糸は黙して何も語らず、裁判も進まない状況。そこへ事件の担当として新人検事が着任した。

 

新しい検事代理として法廷に立ったのはなんと愛しい人、欣弥であった。彼からの訊問に、白糸はすべてを告白し罪に服することになった。

 

ただこの後に壮絶なラストが待ち受けております~~!

(MovieWalkerを参照に作成)

 

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またまた、活動弁士付き無声映画です!

 

滝の白糸、本名水島友の悲哀物語!

恋愛、

サスペンス、

義理人情に義侠心、

古き良き日本の精神が満載!!

 

驚愕のラストはまさに滂沱の涙~~

お見逃しなく!

 

このような物語は、日本独特の心情を感じさせてくれます。

水芸の女芸人、瀧の白糸は、乗合馬車で働く村越欣弥と知り合い、恋に落ちます。

 

 

その冒頭が馬丁(村越欣弥)とヒロイン(瀧の白糸)の、あのジョンフォード監督の映画「駅馬車」のスピード感(ちと大げさかもw)を感じさせるような、スリリングな展開に観客は画面にひきつけられることでしょう。

馬車のスピード感も圧倒されますが、これまた二人の会話が洒落ているのです。

 

これがあの溝口監督作品かと思わせるほどでございました(自分は溝口作品のサイレントは初めて鑑賞したので・・)。

 

サイレント映画はよく絵で見せる事が命と聞いたことがありますが、泉鏡花のこの小説の世界を、彼独自の描写で見せてくれます。

そのカット一つ一つにエネルギーが感じられましたね。

 

ただのまったりした恋愛物語ではなく、テンポよく話が展開し、そして途中からは罪を犯し逃亡する白糸、それを追う警察とのスリリングな場面もあったりして、観る者の感情を揺さぶります。

 

 

そして最後の裁判では、白糸に世話になった村越欣弥が裁きをしなければいけない・・あぁ~なんと無情の世界!

 

 

裁かれた白糸、そして裁いた村越欣弥、ともに壮絶な覚悟をしていたのであります。

 

この題材の映画は、1915年を筆頭に6回映画化されています。

また結末も時代時代で異なっておりますので、それもまた見どころかと。ちなみに、今作品はハッピーエンドではございません。

それがさらに観る者の心情に悲しみを訴えてくるのです。

 

とにかく「雨月物語」でもおなじみの溝口健二監督サイレント時代の代表作品、ということでけっこうびっくりした次第。

確かに、女性を描くことでは今作も秀でてはおりました。

 

画質は少々悪いのですが、やはり今回も活動弁士「澤登翠さん」の語りが良かったですね。

七色の声ではありませんが、本当に色々な声を出して語ります。

活弁士が語っている映画なので、ともするとサイレントとは思えないほどでした。

まだ澤登翠さんの語りしか聴いたことがないので、他の方だとまた雰囲気ががらりと変わるのでしょうね。

 

チャップリンのサイレント映画はよく観たことはあるのですが、なかなかの邦画の無声映画はそうそう機会がありませんでした(過去に小津作品のサイレント映画を何本かアップしていますが・・)。

ましては、今回のように弁士が語っている作品などを観る機会は限定されていますからね。

今回のように、ユーチューブなどで手軽に鑑賞ができることは、ありがたいですねぇ。

 

でも先日のブログでも書きましたが、やはり一度は活動弁士の方が語る映画を生で鑑賞したいものです。

今年はなんとしても実行しましょう!

 

 

(おまけ)

白糸は美人だけれど、男嫌いで男勝りの性格。

ただ欣弥だけには心を許し自分を顧みず愛し女性らしさを見せる。

その白糸が好み食べる物が、サクランボ

劇中にサクランボを食べるシーンが3回出てきますが、原作の泉鏡花の「義血侠血」には出てこないようです。

映画独自の演出で、白糸の女性らしさを象徴しているのでしょうか。

 

またこの映画の画像は少々荒いのではありますが、それは仕方ないとして、なんとラスト一部のシーンが紛失しているらしいです(白糸の自決のシーンだとか?)そこもまた観たかった次第でもありますが。

滝の白糸という言葉?名前は以前から知っておりましたが、それは水芸の芸人の名前であって、このような物語があったことは今作品を観るまで知りませんでした。

けっこう有名だったのですかね^^;

今回年末年始の休みで帰省した際に、母親にこの映画のことを話しましたら、この物語の事は知っておりました!

やっぱり有名だったのか?

 

そうそうこの作品で若い頃の浦辺粂子(お銀)さんを見ることができます。すでに他界していますが浦辺さんと言ったら、自分はお婆さんのイメージしかないですからね。あとはその昔、片岡鶴太郎さんが彼女の物まねをしていた印象があります。

 

この映画もまだこの頃は歌舞伎の影響をすくなからず受けているようで、この作品も影響を受けた現代劇になっています。

 

意外や意外けっこう面白かったし、人間心理に深く掘り下げ心情に訴える映画でした。

なかなかの作品、流石溝口健二監督!!

また機会があれば、無声映画の世界にも浸りたいと思いました。

 

5点満点中3.8

 

 

画質は少々悪いですが、フルに観れます。