活動弁士つきサイレント
映画「雄呂血(おろち)」
1925年(大正14年) 74分
阪東妻三郎プロダクション制作
<監督>
二川文太郎(映画カツベンでは池松 壮亮が演じています)
<製作総指揮>
牧野省三(映画カツベンでは山本耕史が演じています)
<キャスト>
阪東妻三郎、
関操、
環歌子、
森静子
<弁士>
澤登翠
<内容>
漢学者松澄永山の娘・奈美江(環歌子)と、その弟子で正義感の強い若侍・久利富平三郎(阪東妻三郎)はひそかに愛し合っていた。
平三郎は師の誕生祝いの夜、同門の家老の息子の浪岡の無礼を怒り、腕力沙汰に及んだことから破門を命じられる。また奈美江を中傷誹謗していた家中の若侍を懲らしめたことが逆に永山の誤解を招き、師からも破門され、石もて追われるように故郷を捨て、旅に出る平三郎。
平三郎は自分が正しいと信じてやったことが事毎に周りから曲解され、そのこころは次第に荒んでいき、無頼の浪人となり下がり、虚無の深淵に沈んでいく。
たまたまある町の料亭で働く千代を知り、女の情を求めて牢を破って訪ねたもののすでに千代は人の妻となっていた。捕吏に追われた平三郎は侠客・次郎三のもとへ飛び込むが、この侠客が喰わせ者。病に難渋する旅の夫婦を助けたは良いがその妻に言い寄り手篭めにしようとする。
しかもその妻女こそ、かつての恩師の娘、初恋の人の奈美江であった。平三郎の白刃一閃、見事次郎三を斬り捨てるがもはや脱出かなわず、十重二十重の重囲のなかに堕ち、乱闘又乱闘の大立ち回りの末、ついに力尽き捕えられ、群衆の悪罵を浴び引かれていく。その中に涙に濡れ、平三郎を伏し拝む奈美江夫婦の姿があったことを、群衆の誰一人知る者はいなかった。
(ウィッキペディアより抜粋)
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ちょっと前にもお伝えしましたが、鎌倉にある「川喜多記念映画館」にての「鞍馬天狗」活動弁士つき上映を、予約満了につき観ることができなかったために、活動弁士が語るサイレント映画を無性に観てみたく、ユーチューブでアップされていましたので早速に初鑑賞。
フィルムが良い状態で保存されていたのでしょうか?けっこう画像は奇麗でした。
いやぁ~弁士の澤登翠(さわとみどり)さんすごい!!
これぞ弁士によって映画の面白さも倍増もしくは、半減するというところを見事に感じさせてくれました、素晴らしい語りでした。
弁士なしのサイレントであったならば、面白さは見やすさは半減していたかも。
澤登翠さんの事をちょっと調べてみましたら、
東京都出身 法政大学文学部哲学科卒業。故松田春翠門下。弁士の第一人者として国内をはじめフランス、アメリカ他の海外公演を通じて、“弁士”の存在をアピールし高い評価を得ている。「伝統話芸・活弁」の継承者として“活弁”を現代のエンターテインメントとして甦らせ文化庁映画賞他数々の賞を受賞。多彩な語り口で現代劇・時代劇・洋画と様々なジャンルの無声映画の活弁を務めている。 2015年「文藝春秋」に掲載された「日本を代表する女性120人」にも選出されている。
(マツダ映画社HPより)
今や活動弁士界の重鎮のようです。
正義に反することは拙者できかねまする!
何故に何故に、拙者の心がわかってくれぬのかぁ~!!
不器用だが正義感の強い男が身を落としていく物語!!
善人と言われている物が実は「大悪人」、「ならず者」と言われている者すべてが「無頼漢」にあらず。
偽善に満ちた世界は、現代にも通じるところあり。
バンツマの真骨頂~~
サイレント映画史上
最高のチャンバラシーン
雄・呂・血!!!
この映画の見どころのひとつでもある、平三郎(阪東妻三郎)が一途な恋心を理解されず、誤解が誤解を招いて無頼漢に変貌していく姿はなかなかの見どころ。
そして圧巻のチャンバラシーンは必見。
ウィッキペディアによりますと以下の解説がありました。
ラスト三巻の大立ち回りは、二十七分間の長丁場を、同じテを二度と使わずに展開するという鬼気迫るもので、「悲壮美の極致」とまで言われた。
この立ち回りは脚本では「半鐘乱打、大立ち回り」と一行あるだけだが、十手、捕縄、六尺棒、熊手、さすまた、袖からみと、ありとあらゆる捕り物道具が動員され、瓦投げ、眼つぶしと、キャメラの長移動やパンを重ね、それまでの悠長な歌舞伎調の型を徹底的に破壊しつくした。
眼つぶしで平三郎の眼がくらむ場面では幻覚感を出すためフラッシュ・バック風に黒コマを間に繋ぎ、テクニックに工夫が凝らされた。
(ウィッキペディアより抜粋)
確かに解説の通りクライマックスのチャンバラシーンは見応えありです。
殺陣にものすごくエネルギーを感じます。
サイレント映画特有の早回しでバッタバッタと、とにかく切り倒していくシーンはすさまじい(そんなに日本刀は何十人も切れないらしいですがw)。
今ではこのような映画はまず作られないでしょうし、ニーズもないかもなぁ。
最後のチャンバラ、ロングパンはとにかくすごいですね。
この映画を観たアメリカ人のある映画監督は、何人斬られるか夢中になって数えていたらしいですよWw
そしてたぶん想像するに、当時映画館で観ていた観客は、
「バンツマ~頑張れ!捕まるな!!」
など、ヤンヤヤンヤの大喝采だったことでしょう。
やはりバンツマ(阪東妻三郎)は絵になる役者さんでした。
日本サイレント映画史上、最高のチャンバラシーンと言われているのも納得でした。
(おまけ)
この映画のタイトルは当初「無頼漢」として公開予定だったとか。
ただし検閲でひかかってしまい、相当のシンーカットもよぎなくされ、もうどうでもいいやという感じで安易にこのタイトル「雄呂血」になったようですね。
その後、今作のように当て字のタイトルが流行ったみたいです。
とにかくこの映画のフィルムが奇跡的に残っていたことに感謝です。
一度は活動弁士が語る映画を生で観たいものです!
5点満点中3.7(活弁付きで)
↓澤登翠さんの活弁付きで、すべてご覧いただけます。